全てを識る指先

SF

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第13章

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そんな中、フラヴィオは珍しく父親の部屋に呼び出された。年明けにとある令嬢の誕生日を祝う夜会があり、必ず出席して令嬢に挨拶するよう言われた。
これは見合いなのだとピンと来た。婿養子に入り身分を上げようという魂胆も透けて見えた。よくもまあこんな放蕩息子を迎えようという家があったものだと、呆れを通り越して感心する。それに、今はセシリオにしか興味がない。
父親に、半ば当てつけでセシリオと寝たと言ってやった。父親は呆れて眉を下げるばかりで、そのような遊びは独身の間だけにしておけと釘を刺されるにとどまった。
夜会は新年の祝いの時期と重なり盛大に行われた。年が明けてもセシリオから便りはない。自分から会いに行ってなるものかと意地を張り、フラヴィオもカードの一つさえ送らなかった。
広間では一足先に春が来たように冬バラが至る所に飾られ、人々は明るい色の服で着飾っている。フラヴィオはその中で壁の花と化していた。豊かな金の髪は後ろで一括りにし、群青のジャケットにシャンパンイエローのベストを合わせて遊び心を加えている。本当は男娼のように刺繍の入ったジャケットを着て行ってやろうかと思ったが、従者に見つかり両親にも叱責された。
令嬢は可憐な花のような少女で、10をひとつかふたつ過ぎたばかりだが、淑女教育が行き渡っているらしく洗練された一礼を見せた。フラヴィオの秀麗な顔を見てポッと頬を染めていたところが初々しい。
まだ子どもじゃないか、こんないたいけな少女に自分のような爛れた男をあてがうなどなんと罪深いのか。苛立ちを隠しながら手に接吻をして一曲踊った後は、義理を果たしたとばかりにその場から離れワインで口を潤した。
令嬢は母親とともに客の挨拶に回るが、彼女の大きな目はちらちらとフラヴィオを追う。白桃のように小さな顔は色白で、無垢なアイスグリーンの虹彩が眩しい。髪はこの国でよく見る赤みがかった茶色だが、ブロンドの光沢があり若々しさにあふれていた。成長すればいくらでも縁談が舞い込むだろうに、とフラヴィオは不思議で仕方なかった。
と、ここでパーティーの最中だというのに、令嬢は退席してしまった。身体が弱いらしい。
婦人たちのひそひそ話に聞き耳を立てれば、成人するまで持つかどうかわからないとか、あれでは子を成すことも出来ぬのではと品のない噂話が流れてきた。相手側にそれなりの理由があったのかと得心がいった。
さっさと帰ろうと広間を抜け出す。廊下で贈り物らしき包みや箱を抱えた従者とすれ違う。その拍子に、ヒラリと一枚の封筒がフラヴィオの足元に落ちた。何気なく拾い上げると、差出人の名前に心臓が跳ねた。
セシリオ・グリエルモと書かれた文字は、張型の入った箱に書いてあった筆跡とまったく同じであった。
その瞬間、嫉妬の焔が燃え盛る。自分には何の便りも寄越さなかったくせに、あんな年端も行かぬ娘にわざわざ手紙を送るとは!その場で封筒を引き裂いてやろうかと思ったが、中身がどうしても気になり従者の後を追った。
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