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Vtuber邂逅編~その出会いは二度目の恋の始まり~

第十二話「勢いで鏖(みなごろし)にした婢(はしため)の群れがとんでもない奴らだった話」

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 お優しい読者の皆様方、毎度お世話になっております。自分、七都巳大竜ナナツミダイリュウと申します。
 より詳細に、現時点での状況も含めて説明させて頂きますと……

「で、新真玉グループだっけね。奴らが何者かっていうと……ついさっき、ダイちゃんが大暴れする寸前までこのベイレイン帝国を実質乗っ取ってたヤバいカルトな変態集団さ」
「なんと……!」

 嘗て自分を拉致し身包みを剥いだはしため集団"新真玉グループ"の実態に驚愕を隠せぬ、配信者くずれの本作主人公に御座います。

「そもそもの発端は今から四百年くらい前に遡るんだけど、当時の時代背景はなんだろう……
 潔癖症っていうか禁欲主義? みたいな風潮で、夢魔サキュバス系の種族とか性風俗産業従事者なんかの社会的な地位ってのが結構低くてね」
「ほう、今からは考えられん時代ですなァ」 
「全くだよ。当時ときたら、あたしみたいに乳のでかい女が公の場に出るだけでやれセクハラだ猥褻罪だって騒ぐバカがデカい面してたぐらいだからね。
 ……で、そんな感じで不当な扱いを受けがちだった夢魔系種族や性風俗業界の支援を目的に『マガタマ・プロジェクト』ってのが打ち立てられたんだ」

 パル殿に曰く『マガタマ・プロジェクト』は当時こそ巧みな手腕で華々しく活躍しつつも堅実に実績を積み重ねていたようですが、
 凡そ二百年ほど経った頃になると次第に不祥事や内乱が頻発するようになり、組織全体が傾き始めたのだそうです。

「それで当時『マガタマ』を率いてたデーモンのヴァネッサ・アネンリゼ代表は、
 徹底した内部調査を実施しては不正に走った構成員や組織の和を乱す反乱分子を徹底的に排除する強硬手段に打って出たんだ」
「つまり、その"排除された連中"こそが……」
「そう、まさに後の新真玉グループさ。曰く『新時代を牽引する真実の宝玉スフィア』で『新真玉グループ』、だそうだよ」
「物は言いようですなァ」

 或いは"盗人猛々しい"と言うべきでしょうか。

「奴らは裏で結託して色々と計画を進めてたみたいでね。元々悪さしてた連中だから人を騙したり法の穴を突くような真似は朝飯前……
 標的をここベイレイン帝国に定めた奴らは、あの手この手で国を追い詰めつつ中枢に取り入り、目の上のタンコブだった女帝ベイレイン55世を実質国外追放して国を乗っ取ったんだ」
「なんと……」
「それから奴らは歴代皇帝一族の官邸で国政の中心でもあったベイレイン城を取り壊して、
 そこにこの建物"大聖麗天女宮だいせいれいてんにょぐう"を建てて好き勝手やってたってワケ。しかも合法的、かつ隠蔽も完璧にこなした上でね」

 パル殿の口より語られます現ベイレイン帝国の隠されし実態は、それらの事情を一切知り得なかった自分にとって驚愕そのものに御座いました。

「奴らは巧みな手腕とコネで面倒事を全部チャラにしながら、天女宮に籠もって好き勝手遊び暮らしてた。
 物資は洗脳した他国の傀儡に貢がせて、人手が必要になったらその辺から適当に攫って来て、って感じでね。
 中でも多かったのは……大体十代から三十代ぐらいの、それこそダイちゃんみたいなイケメンくんでね?」
「ほう……?」

 パル殿がサラリと自分めを"イケメン"と褒めて下さったのはまあ、正直嬉しゅう御座いましたよ、ええ。それはもう名誉なことで……。

「"使い道"は色々だけど、あたしが調査した限りだと奴隷か玩具オモチャが殆ど、種族によっては食糧エサってパターンもあったみたい」
「では、そうして攫われた方々の行く末は……」
「あー、その辺は聞かない方がいいよ。知らぬが華ってヤツさ。あたしもあんまり言いたくないし……。ともかく、新真玉グループの手に落ちたベイレイン帝国ではそんな状態が実に六十年以上続いてたんだ」

 そこまで長持ちさせられた辺り、新真玉グループの連中も能力だけはあったのやもしれませぬ。

「でも悪事なんてのはいつかバレるもの、秘匿されてたベイレイン帝国の情報が外部へ流出したのが大体一昨年ぐらいでね。
 その時は新真玉がすぐに対処したから大っぴらにはならなかったけど、流出した情報を辛うじて持ち逃げした奴がいたんだ」

 ……と、ここで浴槽管理システムからの警告があった為入浴はお開きとなりました。 

「汗かいたし、涼しいとこで水分補給でもしよっか」
「ええ、それがいいでしょう」

 浴場を出ての脱衣所にて、浴衣――幸いデザインとサイズが幅広く、パル殿は元より自分にも違和感なく似合うものが御座いました――に着替えた我々は、程よく冷房の効いた休憩スペースにて飲料を購入……
 適当な場所に腰掛け会話を続行します

 ……因みにこの時パル殿が披露されました浴衣姿は、それはもう例えようがない程極上に素晴らしく、
 その余りの最高峰ぶりに自分は情けなくも"テント"を立て乍らお話を聞かせて頂いたのは語るに及ばぬ事実に御座います……。

「お待たせ~。任せるって言われたから、
 湯上がりだし『リヴェンジャー』の『ガーディアンズ』から
 『ジョッキー&ユニコーン』と『タイタントータス』買ってきたよ。
 どっちする?
 ダイちゃんから選んでいいよ、あたしはもう片方飲むから」
「では、『トータス』を頂きましょう」
「んじゃあたしは『ジョキユニ』ね~」

 『リヴェンジャー』とは、エニカヴァー全土で販売されている老舗エナジードリンクであり、
 中でもその亜種たる『ガーディアンズ』は"エナジードリンクとしての性質を持つスポーツドリンク"とのコンセプトで開発された銘柄に御座います。

「やー、無難に王道の『ハウンドバトラー』にしようかと思ったけど売り切れで、『マジカルキャット』に至ってはそもそも置いてなくてさぁ」
「それは許し難い……『ガーディアンズ』四種類は何れの一つを欠くことも許されぬとは業界の共通認識に御座いましょうに」
「ほんとだよ。あたしなんて『キャット』のあの柑橘味が好きなのにさ~。
 そういうとこからして新真玉の奴らはダメなんだろーなってーかね」

 因みに『ガーディアンズ』各種の詳細としましては、
 『ハウンドバトラー』が王道のスポーツドリンク風味、
 『マジカルキャット』はカフェイン控えめの柑橘類の果汁入り、
 『ジョッキー&ユニコーン』は人工香料乍らフルーツフレーバー六種のミックス、
 『タイタントータス』はキウイフルーツ味で食物繊維とタンパク質を多く含む特徴が御座います。

「で、そんな『マジカルキャット』の良さもわかんない新真玉グループが
 悪事に手を染めてる証拠を掴んだそいつは、その情報をある人物に売り渡した」
「その人物とは、よもや……」
「そう、国外追放されて尚田舎でスローライフ満喫中だった女帝ベイレイン陛下さ。
 それまで自分がハメられたって自覚すらなかった陛下はそりゃあもう怒り狂われたそうでね。
 このままじゃいつ国民に被害が及ぶかもわからない、やっぱり自分が帝位に返り咲かなきゃいけないと一念発起……
 ただそうは言っても新真玉グループは手強いし、正攻法じゃ意味がないと考えられた陛下は、
 奴らを国から追い出して城の建ってた土地を奪い返す……つまり制裁込みの"地上げ"が必要だって判断されたのさ。
 ……と、涼しいとこで冷たいもん飲んでたら予想以上に体が冷えてきちゃったね。
 あたしはもうひとっ風呂浴びて来るけど、ダイちゃんどうする?」
「無論、喜んでお供させて頂きます。自分も少々肌寒さを感じておりましたもので」

 斯くして再び風呂場へ戻った我々は、別の湯に浸かりつつ雑談に興じるので御座います。
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