闇巫女様は心配性

冴條玲

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デゼル ~京奈とユリシーズに相談してみた~

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 ときどき、寂しくて不安な気持ちになってしまうの。

 いつも、サイファに好きって言うのは私なの。
 キスしてもいい? って、ねだるのも私なの。
 一緒にいてもいい? って、サイファのお部屋に行くのも私なの。

 ねぇ、サイファ、私のこと好き?
 こわくて聞けない。

 だって、好きじゃないって言われたら、好きじゃなくなったって言われたら、どうしよう。
 私、それでもサイファの傍にいたい。
 サイファ。
 サイファ。
 大好きよ。

 でも、サイファは?
 好きだよって、誰よりも愛してるって、私のお誕生日だけでもいいから言ってほしいなんて、贅沢ぜいたくかな。
 大好きなサイファの傍にいられるだけ幸せなのに、サイファにも同じように想っていて欲しいなんて、わがままなのかな。

 でも、悲しいの。
 私の片思いで、サイファは違うのかなって思うと、寂しいの。


 相談するうちに、泣いてしまった私を見た京奈が、びっくりして言ったの。

「なにそれ! ちょっと、どうしてサイファにしたのよ、だから、ガゼル公子にしておけばよかったのに」
「……」
「ネプチューン様はいつでも私に愛してるって言って下さるわよ?」

 そうよね。
 やっぱり、好きじゃないから、好きって言ってくれないのかな。
 キスも、夜も、私がねだらないとしてくれないもの。

 肩を落として京奈の部屋を出た私は、とぼとぼとユリシーズの部屋を訪ねて、同じように相談してみたの。
 そうしたら。

「ちょっと、何言ってるのよデゼル。好きだよって言うくらいタダじゃないの。そんなことにこだわるなんて、あなた、都合のいい女にされやすいタイプよ?」
「えっ……」

 京奈と違って、ユリシーズは私にあきれたの。

「いいこと、愛っていうのは、『どれだけみつげるか』ということよ! 無職のヒモ男の愛してるなんて嘘っぱちよ。大切な女性が快適に安心して美味しいものを食べて楽しく暮らせるように、懸命に働いて稼ぐのが真実の愛に決まっているじゃない。私だってネプチューン様に愛してるなんて言われないけど、ねだるのも私だけど、だからなに? そんなことで、彼の愛を疑うなんて馬鹿げているわ。見て、ネプチューン様に贈られたこの広い部屋。豪奢な調度。贅沢な宝石、装飾品、何枚もの素晴らしいドレス。毎日の食事だって最高よ。私がつくらなくても、いくらでも美味しいものが出てくるのよ? ネプチューン様はこれだけのものを貢ぐべき愛人に私を選んだ。それこそが揺るぎのない真実! 私こそが世界の誰よりも帝王に愛されている女!」

 えぇっ。
 そう言われると、そんな気もするけど、ユリシーズって心が誰よりも強いのね。
 私、別の女性を正妻に迎えたいなんて言われたら、死ぬほどショックよ。

「いいなぁ、ユリシーズ。カッコいいなぁ」
「……。ちょっと、デゼル、本気でサイファの愛を疑うの? あなたの場合は貢いでもらう必要がないから、私の場合とはちょっと違うと思うけど、ジャイロから聞いたわよ?」
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