闇巫女様は心配性

冴條玲

文字の大きさ
3 / 6

デゼル ~仔猫?~

しおりを挟む
「ジャイロじゃあるまいし、話し合いでの解決を優先するサイファが、どうして新兵たちをまとめてめるなんて真似ができるほど強くなったか、考えたことがある? あなたを愛してなければできっこないわよ」

 サイファもジャイロも、地道な戦闘訓練を重ねて、約八年かかってカンストしたの。
 闇の十二使徒であるゲイルが就任するはずだった帝国軍の元帥の座には、ジャイロが就いた。
 オプスキュリテ公国が滅ばなかったから、ゲイルとネプチューンがつながらなかったの。ゲイルは公国軍の将校のままよ。
 帝国軍をジャイロがまとめる一方、近衛隊や衛兵隊はネプチューンの副官である私がまとめることになっているんだけど、実質的にまとめているのはサイファなの。

「そう、かな。だけど、サイファは誰にでも優しいもの。みんなのためかもしれないと思うの。私が我慢してネプチューンに仕えてるみたいに、サイファも我慢して私に仕えてるのかもしれない」

 ああ、私、それがずっと不安だったのね。
 言葉にしたら、涙がこぼれて、そうしたら、少し顔を強張らせたように見えたユリシーズが、すぐに優しい、慈愛に満ちた様子で励ましてくれたの。

「大丈夫、サイファはあなたを愛してる。絶対よ。あの子、奥手だもの。愛してるなんて、照れちゃって言えないだけよ。私から、それとなくサイファにデゼルのことをどう思ってるのか、聞いてあげるから。ね?」


  **――*――**


 その夜、ユリシーズと話したサイファが、気を悪くしてしまっていないか、私はすごく心配で、こそっと、扉の影から半顔でサイファの様子をうかがったの。
 そうしたら、サイファがおかしそうに笑って、おいでって手招きしてくれて、私、すごくほっとした。

「デゼル、ごめんね。僕、自分のことしか考えていなくて」
「え……?」
「だって僕、デゼルに好きって言ってもらえたら嬉しいし、すごく幸せな気持ちになるのに、同じ言葉を、デゼルにあまり返してあげなかった」

 だっこしてくれるサイファの顔を見上げて、涙が零れそうになりながら、聞いたの。

「サイファ様、私がいつも傍にいても、いい……? 邪魔じゃ、ない……?」
「あのね、デゼル。邪魔したっていいんだよ? だって、デゼルは仔猫に邪魔されたら、追い出したいと思う?」
「ううん……可愛い……」

 ふふっと、サイファが笑ってくれた。

「デゼルが何してても、そういう風に見えてるから、心配しないで。ほんとに、それでデゼルが泣くなんて、思いもよらなかったんだ」
「……」

 仔猫?

 私はこそっとサイファの手を取って、その甲にキスしてみたの。
 上目遣いにサイファをうかがったら、サイファ、驚いたみたいに、目を丸くしてた。
 叱られなかったから、してもいいのかなと思って、少し身を乗り出して、サイファの耳を甘噛みしてみた。

「デゼ……」

 真っ赤になって口許を覆ったサイファが、驚いて身を引こうとした私の腕をつかんだ。

「あの、サイファ様、ごめんなさ……」

 えっ!? えっ!?

 寝台に押し倒されて、手首をつかまれたまま、逃げられない私にサイファがキスしてきて、サイファのあいた右手が私のネグリジェの紐を解いたの。

「あっ…!」
「デゼル、ちょっと――そんなことされたら、さすがに、容赦してあげられないんだけど」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

処理中です...