88 / 139
第三章 闇を彷徨う心を癒したい
第80話 たとえ帝国が僕を歓迎しなくても
しおりを挟む
「近衛隊長と衛兵隊長の任、謹んでお受け致します」
ガゼル様へのご挨拶を済ませて、デゼルが公国に戻らないこと、ガゼル様をお断りすることがわかった翌日。
僕はネプチューン様に目通りを願うと、ひざまずいて、拝命した。
帝国に闇主なんて公務はないから、皇帝の副官になってしまったデゼルを守るために。
十歳のデゼルがどうして皇帝の副官なのか、まだ十三歳の僕に近衛隊長と衛兵隊長を兼務なんてできるのか、滅茶苦茶な話なんだけど。
能力だけで言えば、デゼルは皇帝の副官にふさわしい神の祝福を授かっているし、皇帝の副官を任されるということはつまり、デゼルが近衛隊と衛兵隊を預かるということなんだ。
だから、デゼルの側仕えになるためには、近衛隊長なり、衛兵隊長なり、拝命しないとならない。
兼務する必要はないんだけど、僕じゃない近衛隊長や衛兵隊長がデゼルの側仕えに就くのって、何だか、いやな予感がして。
だいたい、ネプチューン様がまず、
「で? デゼルを俺の夜伽に寄越す気にはなったのか?」
「お断り致します」
こういうこと、仰るから。
帝国の近衛隊長と衛兵隊長は実力主義で、討ち取った賊の数と、隊員からの評価、皇帝からの信認で報酬が決まる。
僕達の任地は天界。
内戦でも起きない限り、討ち取るべき賊はいないはずで。
隊員からの評価は、何の功績もない今の僕が何もしなければ確実に不信認だから、どんな手を使ってでも手に入れろって。
たとえば、皇帝からの信認が欲しければデゼルを夜伽に寄越せって仰るんだ。
いらないから、断ったけど。
陛下のご要望をお断りしたら、今の僕では、無報酬になってしまう可能性が高い。
それでもいいんだ。
闇主としての報酬をこれまで通り、公家から頂いているから。
つまり、僕が手に入れないとならなかったのは、仕官の報酬ではなく、帝国での、デゼルの側仕えの地位そのもの。
デゼルの推薦があるから、僕の能力が不十分でも、罷免はない。
だからこそ、僕の能力が不十分だった場合には、隊士たちの手で私刑に処されたりするみたい。僕が自発的に逃げ出すように仕向けるんだ。
でも、僕、そこまで弱くないから。
神の武具を使いこなせているから、たぶん――
神の武具は、魔法の呪文みたいに神を讃える詞を唱えれば、何種類かの強力な魔法を発動することもできるんだ。
マルスは軍神、攻撃系の範囲魔法があるから、一般兵が僕を私刑に処すのは至難だと思う。
ユリシーズとジャイロの後ろ盾もあるし。
だって、僕よりジャイロの方が凄いんだ。帝国軍の将軍だって。
ユリシーズが陛下の愛人になってるから、皇帝の信認も獲得済み。
存在を知られていない神の武具より、僕とジャイロが心友だってことの方が、隊士たちへの牽制としては強力なくらい。
それというのも、ネプチューン様が帝位を簒奪して間もない今の帝国は、荒れに荒れていて、妖艶な美女であるユリシーズが襲われる事件があったんだ。
だけど、賊はユリシーズの恐ろしい闇魔法によってまとめて呪殺され、かろうじて呪殺を免れた者もジャイロに斬り殺されたらしくて、事件は瞬く間に、帝国の七つの怪談の一つになった。
ジャイロもだけど、ユリシーズが最恐で、誰もジャイロには逆らえないんだ。
僕、ジャイロの心友で本当によかった。
ガゼル様へのご挨拶を済ませて、デゼルが公国に戻らないこと、ガゼル様をお断りすることがわかった翌日。
僕はネプチューン様に目通りを願うと、ひざまずいて、拝命した。
帝国に闇主なんて公務はないから、皇帝の副官になってしまったデゼルを守るために。
十歳のデゼルがどうして皇帝の副官なのか、まだ十三歳の僕に近衛隊長と衛兵隊長を兼務なんてできるのか、滅茶苦茶な話なんだけど。
能力だけで言えば、デゼルは皇帝の副官にふさわしい神の祝福を授かっているし、皇帝の副官を任されるということはつまり、デゼルが近衛隊と衛兵隊を預かるということなんだ。
だから、デゼルの側仕えになるためには、近衛隊長なり、衛兵隊長なり、拝命しないとならない。
兼務する必要はないんだけど、僕じゃない近衛隊長や衛兵隊長がデゼルの側仕えに就くのって、何だか、いやな予感がして。
だいたい、ネプチューン様がまず、
「で? デゼルを俺の夜伽に寄越す気にはなったのか?」
「お断り致します」
こういうこと、仰るから。
帝国の近衛隊長と衛兵隊長は実力主義で、討ち取った賊の数と、隊員からの評価、皇帝からの信認で報酬が決まる。
僕達の任地は天界。
内戦でも起きない限り、討ち取るべき賊はいないはずで。
隊員からの評価は、何の功績もない今の僕が何もしなければ確実に不信認だから、どんな手を使ってでも手に入れろって。
たとえば、皇帝からの信認が欲しければデゼルを夜伽に寄越せって仰るんだ。
いらないから、断ったけど。
陛下のご要望をお断りしたら、今の僕では、無報酬になってしまう可能性が高い。
それでもいいんだ。
闇主としての報酬をこれまで通り、公家から頂いているから。
つまり、僕が手に入れないとならなかったのは、仕官の報酬ではなく、帝国での、デゼルの側仕えの地位そのもの。
デゼルの推薦があるから、僕の能力が不十分でも、罷免はない。
だからこそ、僕の能力が不十分だった場合には、隊士たちの手で私刑に処されたりするみたい。僕が自発的に逃げ出すように仕向けるんだ。
でも、僕、そこまで弱くないから。
神の武具を使いこなせているから、たぶん――
神の武具は、魔法の呪文みたいに神を讃える詞を唱えれば、何種類かの強力な魔法を発動することもできるんだ。
マルスは軍神、攻撃系の範囲魔法があるから、一般兵が僕を私刑に処すのは至難だと思う。
ユリシーズとジャイロの後ろ盾もあるし。
だって、僕よりジャイロの方が凄いんだ。帝国軍の将軍だって。
ユリシーズが陛下の愛人になってるから、皇帝の信認も獲得済み。
存在を知られていない神の武具より、僕とジャイロが心友だってことの方が、隊士たちへの牽制としては強力なくらい。
それというのも、ネプチューン様が帝位を簒奪して間もない今の帝国は、荒れに荒れていて、妖艶な美女であるユリシーズが襲われる事件があったんだ。
だけど、賊はユリシーズの恐ろしい闇魔法によってまとめて呪殺され、かろうじて呪殺を免れた者もジャイロに斬り殺されたらしくて、事件は瞬く間に、帝国の七つの怪談の一つになった。
ジャイロもだけど、ユリシーズが最恐で、誰もジャイロには逆らえないんだ。
僕、ジャイロの心友で本当によかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
34
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる