6 / 18
第5話 華麗なる侯爵令息 【キャラ紹介/シェーン】
しおりを挟む
「七日ぶりだね、シルク。今日も綺麗だよ」
「シェーン」
シルクからすると、シェーンこそ『今日も綺麗』だと思う。
剣の試合をこなしてきたばかりのはずなのに、一分の乱れもなく盛装を着こなし、結い上げた金の巻き毛も、本当に試合をしたのか勘ぐってしまうほど型崩れしていない。
表情からして、第五試合ともなれば対戦相手も強いだろうに、その試合をなめた態度でこなし、憎らしくも、しっかりと勝ってしまったと見た。どのくらいなめた態度かというと、盛装で出場するくらい、だ。
これ、とんでもない話。オペラじゃないんだから、見た目に映える反面、動きづらい盛装で出場するなんて、なめきってること甚だしい。いや、勝敗を分けるかもしれなくても、シェーンに限っては、譲れないこだわりどころなのかも……?
シェーンは高貴にして華麗なるカムラの貴公子を自負する、シルクの再従兄弟だ。
シルクの幼馴染でもあるシェーンは、彼女なら首を突っ込むに決まっていると見越して、案内役を買って出るべく、迎えに来てくれたらしい。
軽く髪を引かれた気のした、すぐ後に。
「見てごらん、とても素敵だよ」
王城の廊下なので、鏡には事欠かない。立派な装飾の施された姿見に目をやると、いつの間にか、エメラルドをあしらった繊細な銀の髪飾りが、シルクの髪に飾られていた。シェーンは魔法を使えない。けれど、ある意味、本物よりも本物めいた魔法使いだ。
「き、きすはしないでねっ……」
「ふふ、先に、釘を刺されちゃったね」
いやあのほんと。油断も隙もないです……。
シェーンに贈り物をされたら、気をつけなくてはならないのだ。髪の一筋とか、額とか、場所は遠慮しても、あれよという手際で、要領よくキスしてしまう。『シルクが本命だからだよ』とのお言葉ながら、うさんくさいこと、この上ない。
「それよりシェーン、メイヴェルが倒されたって……!?」
「ああ、シグルド側のとんでもない不手際だ。負けてはいないよ。試合が決まって、退場するという時に毒針でね。至近距離から、小さな筒で吹くものだ。卑劣な武器さ」
「えっ……でも、試合が終わってからじゃ、負けは負けで、意味なくない?」
「……シルク、君、反則肯定派だね……いや、いいんだけど。言ったろう? シグルド側の不手際だと。禁止の毒針をやすやすと持ち込ませただけじゃない、今日の、メイヴェルの対戦相手、本物は遺体になっていたようだ。暗殺者と入れ替わっているのに気付かず出場させたとはね。お粗末にも程がある」
「それって、暗殺者を雇った、悪者がいるの!?」
シェーン、ちょっとがくっとする瞬間。
「……いるよ」
「やっつけてもいいの!?」
「シルク、危険なことはおよし。姫として、褒められない。メイヴェルに毒針を放った者は、メイヴェルが一刀の元に斬り捨てた。だが、処置が遅れるか、毒針が急所に入っていれば、殺されていたのはメイヴェルの方だ。――暗殺など不可能と言われた砂の国の族長を暗殺しようとする者達だ。そうでなくても君の家系は暗殺されやすいんだから、この世で最も危険な命の取り合いになど、参加して欲しくないね」
「え~……」
「そこ。文句をお言いでないよ」
「え~。え~。」
少々、シルクを冷たく見て、その後、シェーンはひどく艶やかに笑ってみせた。
「キスして黙らせるよ?」
「……ごめんなさい、悪かったです。黙ります。キスはいりません……」
ちょっと、青ざめてシルク。
「うん、いい子だ」
にこやかに微笑むシェーンに、シルクは「あっ」と、思い出したように手を打った。
「そうだ、シェーン、当たったら反則使っていい?」
「……シルク、君ね……」
沈痛な面持ちで、ちょうどいいハンデかもしれないけどねとか、つぶやいたり。シェーンって自信家。
「――まあ……来月が母上の誕生日だから……プレゼントを探すのに、付き合ってくれるならいいことにしようかな? 私より、シルクがプレゼントした方が、母上は喜ばれるからね」
シェーンの母親は、シルクの母親にご執心で、実の子よりシルク達の方が可愛いらしい――という、もっぱらの評判だ。ぐれないシェーン、えらい。
「ん、わかった。ふふ、シェーンのそういうとこ、好き」
「光栄だね。私も、君の愛らしくて、何を言い出すかわからないところが好きだよ」
「……シェーン、なんか、シルクはいちみりも褒められた気がしないです……」
「切り札の褒め言葉は、取っておかないとね。付き合ったら、囁いてあげるよ」
シェーンと話していると、妙に疲れるシルクだ。
「着いたよ」
===========
◆ 占いの館 ◆
===========
☆ シェーン … シルクのはとこで、シグルド王国の侯爵家の次男。ただし、生まれも育ちもカムラ帝国である。
【フルネーム】シェーン・アストライーゼル
☆ 気になる異性
1.シルク【A】
2.たくさん【B】
☆ 信頼する人
1.カタリーナ【A】
2.兄【A】
3.父【B】
「シェーン」
シルクからすると、シェーンこそ『今日も綺麗』だと思う。
剣の試合をこなしてきたばかりのはずなのに、一分の乱れもなく盛装を着こなし、結い上げた金の巻き毛も、本当に試合をしたのか勘ぐってしまうほど型崩れしていない。
表情からして、第五試合ともなれば対戦相手も強いだろうに、その試合をなめた態度でこなし、憎らしくも、しっかりと勝ってしまったと見た。どのくらいなめた態度かというと、盛装で出場するくらい、だ。
これ、とんでもない話。オペラじゃないんだから、見た目に映える反面、動きづらい盛装で出場するなんて、なめきってること甚だしい。いや、勝敗を分けるかもしれなくても、シェーンに限っては、譲れないこだわりどころなのかも……?
シェーンは高貴にして華麗なるカムラの貴公子を自負する、シルクの再従兄弟だ。
シルクの幼馴染でもあるシェーンは、彼女なら首を突っ込むに決まっていると見越して、案内役を買って出るべく、迎えに来てくれたらしい。
軽く髪を引かれた気のした、すぐ後に。
「見てごらん、とても素敵だよ」
王城の廊下なので、鏡には事欠かない。立派な装飾の施された姿見に目をやると、いつの間にか、エメラルドをあしらった繊細な銀の髪飾りが、シルクの髪に飾られていた。シェーンは魔法を使えない。けれど、ある意味、本物よりも本物めいた魔法使いだ。
「き、きすはしないでねっ……」
「ふふ、先に、釘を刺されちゃったね」
いやあのほんと。油断も隙もないです……。
シェーンに贈り物をされたら、気をつけなくてはならないのだ。髪の一筋とか、額とか、場所は遠慮しても、あれよという手際で、要領よくキスしてしまう。『シルクが本命だからだよ』とのお言葉ながら、うさんくさいこと、この上ない。
「それよりシェーン、メイヴェルが倒されたって……!?」
「ああ、シグルド側のとんでもない不手際だ。負けてはいないよ。試合が決まって、退場するという時に毒針でね。至近距離から、小さな筒で吹くものだ。卑劣な武器さ」
「えっ……でも、試合が終わってからじゃ、負けは負けで、意味なくない?」
「……シルク、君、反則肯定派だね……いや、いいんだけど。言ったろう? シグルド側の不手際だと。禁止の毒針をやすやすと持ち込ませただけじゃない、今日の、メイヴェルの対戦相手、本物は遺体になっていたようだ。暗殺者と入れ替わっているのに気付かず出場させたとはね。お粗末にも程がある」
「それって、暗殺者を雇った、悪者がいるの!?」
シェーン、ちょっとがくっとする瞬間。
「……いるよ」
「やっつけてもいいの!?」
「シルク、危険なことはおよし。姫として、褒められない。メイヴェルに毒針を放った者は、メイヴェルが一刀の元に斬り捨てた。だが、処置が遅れるか、毒針が急所に入っていれば、殺されていたのはメイヴェルの方だ。――暗殺など不可能と言われた砂の国の族長を暗殺しようとする者達だ。そうでなくても君の家系は暗殺されやすいんだから、この世で最も危険な命の取り合いになど、参加して欲しくないね」
「え~……」
「そこ。文句をお言いでないよ」
「え~。え~。」
少々、シルクを冷たく見て、その後、シェーンはひどく艶やかに笑ってみせた。
「キスして黙らせるよ?」
「……ごめんなさい、悪かったです。黙ります。キスはいりません……」
ちょっと、青ざめてシルク。
「うん、いい子だ」
にこやかに微笑むシェーンに、シルクは「あっ」と、思い出したように手を打った。
「そうだ、シェーン、当たったら反則使っていい?」
「……シルク、君ね……」
沈痛な面持ちで、ちょうどいいハンデかもしれないけどねとか、つぶやいたり。シェーンって自信家。
「――まあ……来月が母上の誕生日だから……プレゼントを探すのに、付き合ってくれるならいいことにしようかな? 私より、シルクがプレゼントした方が、母上は喜ばれるからね」
シェーンの母親は、シルクの母親にご執心で、実の子よりシルク達の方が可愛いらしい――という、もっぱらの評判だ。ぐれないシェーン、えらい。
「ん、わかった。ふふ、シェーンのそういうとこ、好き」
「光栄だね。私も、君の愛らしくて、何を言い出すかわからないところが好きだよ」
「……シェーン、なんか、シルクはいちみりも褒められた気がしないです……」
「切り札の褒め言葉は、取っておかないとね。付き合ったら、囁いてあげるよ」
シェーンと話していると、妙に疲れるシルクだ。
「着いたよ」
===========
◆ 占いの館 ◆
===========
☆ シェーン … シルクのはとこで、シグルド王国の侯爵家の次男。ただし、生まれも育ちもカムラ帝国である。
【フルネーム】シェーン・アストライーゼル
☆ 気になる異性
1.シルク【A】
2.たくさん【B】
☆ 信頼する人
1.カタリーナ【A】
2.兄【A】
3.父【B】
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~
イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。
ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。
兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。
(だって飛べないから)
そんなある日、気がつけば巣の外にいた。
…人間に攫われました(?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる