こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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序章

4、マリアの答え

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「本当に良かったのか?」

 マリアはローザの家から宿に帰る途中ウーノにそう訊かれた。

「うん」

 マリアの脳裏にはさっきまでの記憶が甦っていた。

◇◆◇

「わ、私はそういう覚悟とかはよくわからない。だけど学園には行きたい。大変なこともあるかもしれないけど……だけど後で絶対自分のためになると思うから。……ダメかな?」

 マリアの返答にローザは満足気に笑うと言った。

「……おまえの歳できちっとした答えが返ってくるとは最初から思っておらん。見たところおまえはまだ10歳にもなっておらんだろう?9歳ぐらいか?」
「う、うん。8歳。後1月で9歳になるけど……」

 そうマリアが答えるとローザはウーノたちの方を見やりながら言った。

「その馬鹿どもは知らなかったようだが、学園に入学できるのは10歳からだ。それまで私が魔術の基礎を詰め込んでやることはできるがどうする? 最低限の礼儀作法もな。貴族の阿呆どもへの武器にはなると思うが」

 マリアは新事実に頭が真っ白になっていた。後半の言葉は耳に入っていない。

「えっ? 学園って10歳からしか入れないの?」
「ああ、そうじゃ」

 マリアの目に涙が溜まってきた。

「ど、どうしたのだ。泣くのではない!」

 ローザに言われてマリアは初めて自分が泣いていることに気づいた。
 必死に答えようとするが言葉が出てこない。

「それがなぁ。マリアは母親に家を追い出されたらしい。聞いた感じだとおそらく家には帰れないと思う。今は住むところもない」

 さっきから黙っていたルアンがマリアの代わりに答えた。

「父親はどうしたんだい?」
「お、お父さんは5年前に死んだって言ってた。戦争がどうとか言ってたけど……私はよく覚えてない」
「5年前っていうと帝国との戦争か。……あの時の死者の数は場所によって凄まじかったからなぁ」

 ローザは一つ頷くと言った。

「状況は理解した。それなら私が面倒をみよう。さっき言った知識の詰込みと合わせてな」
「良いのか!」
「ああ。私の教えはちと厳しいぞ。途中で音を上げるんじゃないよ。泣き言を言った時点で叩き出すからね」
「っ!? うん! ありがとう!」

 こうしてマリアの当面の問題は解決した。
 だがこの時、マリアは自分がどれだけ大変なことに足を突っ込んだかわかっていなかった。ローザに教えを受けるとはどういうことかを。

「一応明日マリアの家には行ってみるつもりだ」
「わかった」

◇◆◇

「いや、俺が言いたいことはわかってないと思うぞ」

 マリアはウーノに声をかけられ我に返った。

「言いたいことって?」

 マリアは不思議そうにウーノを見上げる。

「ローザ婆さんは近所でも有名な変わり者だ。大変だと思うけどいいのか?」

 マリアは満面の笑みで答えた。

「勿論!」

 その弾けんばかりの笑顔にルアンは嘆息する。これは絶対意味がわかっていないだろうと。
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