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序章
5、マリアの母
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翌朝、朝食を済ませたマリアとウーノはマリアの家に向かっていた。ルアンは宿の仕事が忙しく来られなかった。
「お前の母さんはどんな人何だ?」
不意にウーノが訊いた。
「えっ? 普通のお母さんだと思うよ」
急に訊かれてもそれ以外に答えられない。
「……別にそんな答えを聞きたかったんじゃなかったんだがな」
ウーノの溜息混じりのセリフにマリアは首を傾げる。
「? それってどういうこと?」
「気にするな。独り言だ」
ウーノは笑って誤魔化した。
(子どもに人柄がどうだとか訊いても無駄だよなぁ)
そんな話をしている内に家に着いた。
「ここだよ」
周囲の家と大差がなくともマリアにとっては懐かしい我が家だった。だが懐かしく思うと同時に不安で胸が一杯になる。
ウーノはそんなマリアの様子に気づいたのか励ますように言った。
「お前の母さんとの話は俺がするからお前はただ聞いていれば良い」
「う、うん」
ウーノはマリアに近くに隠れているように言うとドアをノックした。すぐに返事が聞こえ、ドアが開けられた。
「どちら様ですか?」
出てきたのは30代前半の小柄な女性だった。
ウーノはその顔を見て思わず息を呑む。
整った顔立ちをしているが、綺麗というよりは可愛らしいという言葉が似合う。そしてマリアを成長させたらこうなると言われたら信じてしまいそうなぐらい2人はよく似ていた。違う点を上げるとすればマリアが蒼い目なのに対し、マリアの母は桃色の目だというぐらいか。
「マリアさんのお母様ですよね? 私は冒険者をしているウーノという者ですが、マリアさんについて少し話があるのですが……」
ウーノは普段からは想像もできないほど丁寧な口調で話し掛けた。
「確かにマリアは私の娘です。いえ、でした。もうあの子はこの家から出て行ったんです。今は一切関係はありません」
マリアの母はそう言い切った。その言葉の意味を理解すると同時にマリアは目の前の景色が歪んだような気がした。
「……もしも今戻ってきたら向かい入れる意思はあるんですか?」
マリアの胸がドクンと期待で高鳴った。その目には一琉の希望があった。いや、最後の希望にすがるような焦燥に満ちた目と言った方が正しいか。
「そんなものあるわけないでしょう。先ほども言いましたよね? 私とはもう一切関係ないって。私にとってあの子は邪魔者でしかないんだもの」
そんなマリアの思いなど知るはずもなく、マリアの母はそう吐き捨てた。
「私は私の人生を楽しみたいの。ねぇ知ってる? 世の中の男の人たちって私に幼い子どもがいるってわかると皆私を捨てるのよ。……どんなに私を愛してるって言ってくれた人もね」
そう言って自嘲気に笑った。その瞳には不穏な光が宿っている。もはや狂気的とすら言って良いかもしれない。
「……そうですか。朝から失礼しました」
ウーノは一瞬身の危険を感じ、同時にこれ以上話しても無駄だと判断した。
暇乞いをすると返事も待たずに背を向けた。その顔にはありありと失望の色が浮かんでいた。
宿への帰り道、2人は終止無言だった。
ウーノはただひたすらに無表情で何を考えているのか外からは全くわからない。
それとは対照的にマリアの表情はわかりやすかった。混乱していることが見て取れる。
通りがかった者がギョッとした顔で2人に道を譲る。
(……なんで? どうして?)
頬を伝う涙を拭うこともせず、ただそれだけを考えていた。
「お前の母さんはどんな人何だ?」
不意にウーノが訊いた。
「えっ? 普通のお母さんだと思うよ」
急に訊かれてもそれ以外に答えられない。
「……別にそんな答えを聞きたかったんじゃなかったんだがな」
ウーノの溜息混じりのセリフにマリアは首を傾げる。
「? それってどういうこと?」
「気にするな。独り言だ」
ウーノは笑って誤魔化した。
(子どもに人柄がどうだとか訊いても無駄だよなぁ)
そんな話をしている内に家に着いた。
「ここだよ」
周囲の家と大差がなくともマリアにとっては懐かしい我が家だった。だが懐かしく思うと同時に不安で胸が一杯になる。
ウーノはそんなマリアの様子に気づいたのか励ますように言った。
「お前の母さんとの話は俺がするからお前はただ聞いていれば良い」
「う、うん」
ウーノはマリアに近くに隠れているように言うとドアをノックした。すぐに返事が聞こえ、ドアが開けられた。
「どちら様ですか?」
出てきたのは30代前半の小柄な女性だった。
ウーノはその顔を見て思わず息を呑む。
整った顔立ちをしているが、綺麗というよりは可愛らしいという言葉が似合う。そしてマリアを成長させたらこうなると言われたら信じてしまいそうなぐらい2人はよく似ていた。違う点を上げるとすればマリアが蒼い目なのに対し、マリアの母は桃色の目だというぐらいか。
「マリアさんのお母様ですよね? 私は冒険者をしているウーノという者ですが、マリアさんについて少し話があるのですが……」
ウーノは普段からは想像もできないほど丁寧な口調で話し掛けた。
「確かにマリアは私の娘です。いえ、でした。もうあの子はこの家から出て行ったんです。今は一切関係はありません」
マリアの母はそう言い切った。その言葉の意味を理解すると同時にマリアは目の前の景色が歪んだような気がした。
「……もしも今戻ってきたら向かい入れる意思はあるんですか?」
マリアの胸がドクンと期待で高鳴った。その目には一琉の希望があった。いや、最後の希望にすがるような焦燥に満ちた目と言った方が正しいか。
「そんなものあるわけないでしょう。先ほども言いましたよね? 私とはもう一切関係ないって。私にとってあの子は邪魔者でしかないんだもの」
そんなマリアの思いなど知るはずもなく、マリアの母はそう吐き捨てた。
「私は私の人生を楽しみたいの。ねぇ知ってる? 世の中の男の人たちって私に幼い子どもがいるってわかると皆私を捨てるのよ。……どんなに私を愛してるって言ってくれた人もね」
そう言って自嘲気に笑った。その瞳には不穏な光が宿っている。もはや狂気的とすら言って良いかもしれない。
「……そうですか。朝から失礼しました」
ウーノは一瞬身の危険を感じ、同時にこれ以上話しても無駄だと判断した。
暇乞いをすると返事も待たずに背を向けた。その顔にはありありと失望の色が浮かんでいた。
宿への帰り道、2人は終止無言だった。
ウーノはただひたすらに無表情で何を考えているのか外からは全くわからない。
それとは対照的にマリアの表情はわかりやすかった。混乱していることが見て取れる。
通りがかった者がギョッとした顔で2人に道を譲る。
(……なんで? どうして?)
頬を伝う涙を拭うこともせず、ただそれだけを考えていた。
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