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第三章 魔術の授業

マリアの魔術

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「『水よ、球となりて敵を穿て、《ウォーターボール》』」

 マリアが次に使ったのは水属性の《ウォーターボール》。先ほどと同じように今度は水でできた球が現れた。そして先ほどの《ファイアボール》で燃えている的に当たるとその火を消して大量の水蒸気を発生させた。

「これじゃあ見えないですね」

 その様子を見てマリアは次に使う魔術を決めた。

「『風よ、撃ち払え、《ウィンド》』」

 風が水蒸気を散らし、的が姿を現した。だが、その的はもはや原型を留めていなかった。
 最初の《ファイアボール》で、ほとんど炭になっており、《ウォーターボール》での消火がなければ全て燃え尽きていたであろうことが察せられた。そして《ウィンド》で根元から吹っ飛ばされ、粉々に砕け散っていた。

「……仕方がないですね」

 マリアは諦めて他の的の前に移動した。

「ちょ、ちょっと待って!」

 それをさっきまで呆然と見ていたカーラが止めた。

「木属性は攻撃ではなく新しい的を作って」

 カーラはこれでは後いくつ的マリアにを壊されるかわからなかった。

「……わかりました」

 マリアは渋々と新しい的を作ることにした。

「『大地よ、新たな命を育め、《グロウ》』」

 さっきまで的があった辺りにニョキニョキと木が生えてきた。そしてその成長はさっきの的よりも少し大きくなった辺りで止まった。
 マリアはその様子に満足そうに頷いた。

「『闇よ、敵を切り裂け、《シャドウカッター》」」

 漆黒の刃を創り出すとそれで木を削って人の形にした。
 その様子を周りの者たちは唖然とした目で黙って見ていた。

「『光よ、傷を癒せ、《キュア》』」

 マリアは回復魔術を使うことで傷口のザラザラした部分を滑らかに整えた。

「『《強化》』」

 最後の仕上げとばかりに無属性魔術で強化を施す。

「これで大丈夫ですか?」

 マリアは心配そうにカーラに訊いた。
 その言葉でマリアは我に帰った。

「え、ええ、想像以上だわ」

 実際問題カーラの予想では木を人型にすること止まりだった。

「それに基礎魔術が全属性1つずつ使えるのはわかったから合格よ。次は初級魔術よ。……わからないことがあったら訊いてね」
「はい」

 周りの者も我に帰り、庶民なんかには負けられないと一部の者たちは闘志を燃やした。

☆★☆★☆

一応解説しておくと、マリアは基礎魔術はローザに一通り仕込まれています。その時に魔力量や属性は調べたので本人だけ驚いていなかったのです。
※魔術の呪文と名前は一部思い付かず、適当に作ったのでこの方が良いんじゃないかといった意見がございましたらお知らせください。
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