こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第三章 魔術の授業

初依頼(3)

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「よし」

 マリアは3人が位置についたのを確認すると大きく深呼吸した。

「『火よ、燃え盛る炎の球となりて敵を焼き払え、《ファイアボール》』」

 マリアの手の上に炎の球が出現した。ただしその大きさは、今までとは比べ物にならない程巨大だ。
 マリアはそのまま中心に向けて放った。

「『《ウィンド》』」

 当たるよりも先に《ファイアボール》を撃ったところに寸分違わずに《ウィンド》を放つ。
 飛ぶスピードの差から《ファイアボール》と《ウィンド》が当たったのはほぼ同時だった。
 まず中心の建物に火が付き、適度な風で周囲に急速に燃え広がっていった。

「……。少しやり過ぎちゃったかな……」

 マリアは少し反省した。

「最初の火が強すぎたのか、風が余計だったのか……」

 その間にも炎は勢いを増し、すぐに集落全体に火が燃え広がった。ゴブリンたちは逃げる間もなく火に焼かれて死んでいく。
 エリザベート、アルフォード、アーティスの3人は当初の予定を無視して必死に森に火が燃え移らないように頑張っていた。
 結局火が消えたのはそれから10分以上経過してからだった。

「森の中で火を使うなんて、森に燃え移っていたら火事になっていたぞ!」

 アルフォードが珍しく声を張り上げていた。

「……ごめんなさい。まさかあそこまで燃え広がるとは思わなかったの……」

 マリアは深く反省していた。

「マリアも反省しているんだし許してあげたら?火事にはならなかったんだし」

 エリザベートの一言で一先ずアルフォードの怒りは収まった。

「討伐証明部位は右耳だけでど……」

 アーティスはチラリと丸焦げになったゴブリンの死体に視線を向けた。

「数がかなり多いけど日暮れまでに全部切り取り終わる?」

 その言葉通り証明として使えそうなのは8割ほどなのだが、それでも数が多い。

「100匹単位であるよね、これ……」

 エリザベートはげんなりとした表情を見せた。

「でも終わらないことには帰れないぞ。サッサと片付けるぞ」

 アルフォードは短剣を取り出すと近くのものから順に右耳を切り落とし始めた。他の者も慌てて作業を始める。心臓の部分の魔石も買取されるので、忘れずにそちらも回収していく。こちらは9割ほどが無事だった。
 マリアは手を動かしながら思う。

(実はこの中で一番身分が高いのはアルなのに、率先して作業を始めるって……)

 途中昼に休憩を挟んで全員黙々と作業を続けたが、結局全部作業が終わったのは日が大分傾いた頃だった。日が暮れるまで後1時間ちょっとといったところだろう。

「何とかギリギリ日暮れ前までに帰れそうだな。遅くなっちゃったし、少し急ぐよ」

 そして4人は意気揚々と、足早に来た道を帰っていった。
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