こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第五章 エイセルの街

アーティスの場合(2)

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「ご迷惑をおかけしてすいません」
「いえ、気にしないで下さい。私は仕事が残っているのでもう戻りますね」
「はい、ありがとうございました」

 アーティスは解放してもらえると、レインに礼を言って再び歩き始めた。

 大通りをのんびりと歩いていると、後ろから一定の距離を取ってついて来る者がいることに気がついた。

「流石に人目がつくところでは何もしてこないか……」

 アーティスは何気なさを装って、路地に入っていった。

「……面倒だな」

 アーティスは深く溜息を吐いた。
 大通りからある程度離れると、尾行者は足早になり、距離を詰めてきた。

「おい!お前」
「何ですか?」

 アーティスが振り向くと、20代半ばの、まだ若いと言っても良いぐらいの男性が立っていた。

「その格好、それなりに稼いでいるんだろう?」
「えっ?ええ、まぁ」

 少し想定外な質問をされ、アーティスは一瞬戸惑ったものの頷いた。

「そんな旦那を見込んでお願いがあるんだ!」
「お願い、ですか?」
「ああ。俺は隣のベルジュラック公爵領の住人だ。いや、元と言った方が良いな」
「それで?」
「理に聡い商人なら知っているだろ?最近公爵領の税金が上がったんだ。俺はそのために家族とこの街に逃げてきたんだ」
「で?」

 なかなか本題に入らないことに、アーティスは苛立ってきた。

「無理を承知で頼む!殆ど着の身着のままで、金がもう殆どないんだ!雇ってくれ!なんでもする!お願いだ!」

 男はそう言うと地面に土下座した。

「……一つ訊いても良いか?」
「なんでも訊いてくれ!」
「なんで僕なんだ?商人なら他にもいるだろう?」
「他の商人にはもう頼んだ!だが、俺と同じようにこの街に来たばかりの奴らが色々と問題を起こしたとかで、皆信用できないと断られた。もう旦那しかいないんだ!」

 アーティスは悩む素振りを見せた。とは言っても、それは振りだけで、もうどうするかは決めていた。

「……そうだな。あなたの家族に会ってから決めても良いか?」
「勿論だ!」

 男はその言葉に顔を輝かせた。
 アーティスとってこれは半分賭けだった。男の話が全て真実かどうか。真実なら良いが、もし偽りが混ざっていた場合、この男が本当に悪なのかどうか──家族を人質に取られて無理矢理やらされている可能性もある。それを見極められるか、アーティスにはその自信がなかった。
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