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第六章 王都への帰路

ヨルの森(2)

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「あっ、これかな」

 リオナは声を弾ませた。

「見つかった?」
「うん……たぶん」

 リオナは自信がなさそうに頷いた。

「じゃあそれを今度は……そうだな、指先に纏うようにイメージしてみて。最初は1本からね。慣れてきたら指の本数を増やして、最後は体全体を覆うように」
「うん、わかった」

 マリアたちを狙ってシルバーウルフが集まってきた。

「もう!しつこいな!」

 マリアは苛立たし気に叫ぶと、短剣を両手に握り、群れに飛び込んでいった。その後姿を、リオナ以外の者たちは黙って見ていた。

「なんで!倒しても!倒しても!すぐに!出て!来るのよ!」

 マリアは叫びながら短剣を振るい、瞬く間に6頭のシルバーウルフを倒した。

「いい加減!ちょっとは!数が!減りなさい!よ!」

 大分ストレスが溜まっていたようで、反撃する間も与えず、全てのシルバーウルフを倒した。どれも傷は首の1つだけで、高く買い取ってもらえるだろうと、ほくほく顔で解体を始めた。
 エリザベート、アルフォード、アーティスもそれを手伝い始め、グレンも辺りの警戒をした。

「さっきから全然進めないんだけど……。歩いている時間が魔物の解体をしている時間の半分もないって、どういうことよ」

 文句を言いつつも手は止めないところは流石だった。

「全くだ。前来た時はこんなに出なかったぞ」
「本当よね。このままじゃ私たち、冒険者というよりは解体屋って言った方が良いような気がしてきたわ。……魔物は全部マリアが倒してしまうし……」
「それは僕も同感だな」

 3人も溜息を吐きながら手は止めない。その腕はそこら辺の冒険者よりも遥かに上だった。
 グレンはその様子を羨ましそうに見ていた。
 別に意地悪をしているわけではない。マリアたちも一度グレンに解体をさせたことがあるのだが、結果は酷いものだった。毛皮は傷だらけのボロボロ、魔石もこれまた傷だらけ。4人は満場一致でグレンに魔物の解体の禁止を言い渡した。グレンだけの時は魔物を倒してきた場合は、9割はそのままアイテムポーチに、1割はグレンの練習用になることが決まっている。ある程度上手になったら、その量もだんだん増やす約束だ。
 10分ほどで解体を終わらせると、また歩き出した。1頭5分もかかっていない早業だった。
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