こうして少女は最強となった

第六章 王都への帰路

ヨルの森（４）

「さてと、話は変わるけど、リオナはどれぐらいできるようになった？」
「ま、まだ腕1本だけ……」

　リオナは消え入りそうな声で答えた。

「えっ、もうそこまででできるようになったの？」
「凄いわね。私なんかそれぐらいできるまで1週間かかったわよ」
「エリザベート、それはかかりすぎだ。でも普通なら3日はかかるんだぞ」
「えっ？そうなの？」

　リオナは驚きで目を瞬いた。

「ああ。それぐらいできるようになったんだったら、大分コツも掴んだだろうし、もしかしたら今日中に《強化》を使えるようになるかもしれないぞ」
「本当!?がんばる！」

　リオナがさらにやる気になったところで、全員が食べ終わった。

「それじゃあ出発……と言いたいところだが、その前にあれを片さないとな」
「うわぁ、あれ何匹いる？かなり時間がかかりそうだね」
「しかも増え続けているし……」
「《守護結界》が消える前に移動しないと危険だし、急ぎましょう。あっ、グレンは待機よ」

　4人は山となったウルフの死体を前に、うんざりした顔をした。それでも嘆いていては終わるものも終わらないと、気分を切り替えて解体を始めた。

「……えっと、私も手伝おうか？」
｢｢｢｢お願い｣｣｣｣

　リオナも見かねて手伝い始めた。4人ほどは速くはないが、綺麗に毛皮を剥ぎ取っていく。その様子をグレンは羨ましそうに見ていた。
　ウルフの数はだんだんと減っていったが、減るのとほとんど同じくらいのペースで山が増えるので、精神的にかなり辛かった。
　結局作業が終わったのは日が暮れた頃だった。マリアが多めに魔力を使っていたため、なんとかもったが、最後の1頭を解体し終わったところで光を放ちながら消えていった。

「終わった～」
「……もう夕方だね。今日はこれ以上動くのは止めておいた方が良いかな？」
「そうだな。悪いが広めにもう一度《守護結界》を頼めるか？」
「わかった。『光と闇よ、我らに危害を及ぼさんとする者が近づくことがなきよう守りたまえ、《守護結界》』」
「よし、マリアとアーティスはテントが張れるように邪魔な木をどかしてくれ。グレンとエリザベートは近寄ってくる魔物を間引いてくれ」

　アルフォードが役割を振っていく。

「うん」
「わかった」
「ええ」
「ああ」
「私は？」
「リオナは僕と魔術の練習をする。テントが張れる頃には《強化》が使えるのがベストだな」
「わかった」

　皆自分たちの仕事を始めた。

「あっ、魔物はそのまま回収、気もそのままアイテムポーチに入れておいてくれ」

　返事はなかったが、アルフォードは皆を信用していた。

「それじゃあ始めるか」