こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(14)

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「……うわぁ~、厄介ごとの予感しかしない」
「……早急に手を打て。下手な奴なら直接手を出してくるぞ」
「……わかった。今日中に相談してくる」

 マリアの中でアルフォードに話を持っていくことが決まっていた。困ったらアルフォードに丸投げ。それがマリアだった。

「?誰か相談できる奴がいるのか?」
「うん。それなりに地位がある人が知り合いにいる」
「……その人の人柄は大丈夫なんだよな?」
「勿論だよ」

 ルアンは誰なのかとか、詳しいことは訊かなかった。

(これは絶対名前を聞いちゃいけないような人だ。聞いたら最後、平穏がなくなる気がする)

 ルアンの勘は正しかった。王都には王家諜報部が各所に配置され、王都に流れる噂話の類を収集している。ルアンに最低でも監視がつけられるのは時間の問題だっただろう。

「ん~、今適当な服持ってたかな?」
「これから行くのか?」
「んっ、ギルドに行こうと思ってたんだけど、先にこっちの問題を解決した方が良い気がしてきて」
「まぁ、ギルドは逃げないからな」
「うん。……できるだけ早くした方が良いと思うから、話はまた今度ね」
「……ああ」

 ルアンは苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、対照的にマリアは晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。

(助かった~。とりあえずルアンおじさんとの話の時間は稼いだし、城に直行決定だね)

 ベルは話している間に満足するまで食べたのか、マリアの腕をよじ登って再びフードに入った。
 マリアは手早く食事を済ませると、ルアンに適当な部屋を借りて手持ちの服の中で一番上等な服に着替えた。今回は街の中を徒歩で移動しなければならないので、できるだけ地味に茶色のワンピースを選んだ。裾には銀色の糸で細かい蔓草模様の刺繍が施され、袖口も同じように刺繍がされている。これはいつだか国王に謁見する時にアルフォードに買ってもらい、そのままアイテムボックスに入れられて忘れ去られていた品だ。その上にいつものローブを着る。実はこのローブ、素材の問題で下手な貴族が着ているものよりも立派だったりする。

「これで大丈夫だね。ベル、行くよ」

 マリアはベルに声をかけ、再びフードに入ってもらうと、ルアンに短く礼を言って、城に小走りで向かった。

「あっ」

 城門が見えるところまで来たところで、マリアは不意にそう呟いた。

「……どうやって城の中に入ろう」

 前回来た時はアルフォードが一緒だったため、あっさりと入れた。今日は1人。自力でなんとかしなければならない。

(……正面から行く?いや、でも追い返されるのが落ちだし。忍び込むのは……無理だね。捕まったら牢屋行きだし……)

 今になって城に入る方法を模索し始めるマリアだった。
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