こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(17)

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「あの、ところでそちらの方々は?」

 マリアは国王の後ろの2人に目を向けた。
 方々と言ったのはマリアには今アルフォードがどういった立ち位置でいるのか判断がつかなかったためだ。

「……そう言えばアルデヒドたちとは初対面であったな」

 どうやら訊いて正解だったようだと、マリアは内心胸を撫で下ろした。

「……アルデヒド・エルドラントです」
「エルマン・カンベールだ。宰相をしている」
「初めまして、マリアといいます。平民なので家名はありません」

 マリアは白々しいとわかってはいたが、初対面のふりをして頭を下げた。
 平民だと言われて兵士は目を瞬いた。兵士は王族と顔見知りだったマリアを、てっきりどこぞの貴族の子女だと思っていたのだ。それもかなり親が国王に気に入られている。
 この国では、貴族位にあまり関係がなく、一部の貴族たちが優遇されていることは公然の秘密だった。そしてその地位を引き継いだその家の者が、そのことをもとに好き勝手に行動すれば、たとえ過去がどうであろうと、周りと待遇が同じであることも。
 これがエルドラント王国が腐敗した貴族が多い中で、未だに国としての体制を維持している秘密だった。……それでも汚職に手を出す者は多い。国が国として立ち行かなくなる日もすぐそこまで迫っていた。後100年も持てば良い方、それが国王の見立てだった。

「第四王子様にお会いできるなんて光栄です。……体が弱いと伺ったのですが大丈夫ですか?」
「えっ?……ああ。今日は大分調子が良いので」

 アルファードはつい自分の設定を忘れそうになった。

(……知り合い相手だとなんだか調子が狂うな)

 内心で苦笑いした。勿論そんなことを考えているなど、周囲にはおくびにも感じさせない。

「僕のことはアルと呼んでください」
「……それではアル様と。……それで国王様がわざわざいらっしゃるなんて、どうかなさったんですか?」

 マリアは視線を国王に戻して首を傾げた。

「んっ?そうであったな。……すまぬが其方一度この部屋から出てもらえるか?国家の機密に関わることなのでな」

 後半はマリアではなく肩身が狭い思いをしていた兵士に向けたものだった。

「わっ、わかりました!」

 正直兵士も王族と普通に話すマリアが何者なのかなどと、疑問が山のように頭の中を駆け巡っていたが、それと同時にこの息苦しい部屋から出れると喜んでもいた。そして国家機密に関わることなど御免だった。結果、兵士は返事をするや否や足早に部屋から出ていった。
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