こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(20)

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「あっ、マリアちゃん。依頼はもう終わったの?相変わらず早いわね」

 マリアがギルドに入ったところでそう声をかけられた。朝以上に微妙な時間のため、ギルド職員以外の姿はない。

「はい。偶然10体集まっているところに遭遇したので。でもやっぱり複数を一度に相手にするのはきついですね」
「無理はしちゃだめよ。危ないと思ったら逃げることも大事なんだから」
「わかっていますよ、ルーシーさん」

 マリアは苦笑いしていた。というのもルーシーがこうやってマリアに言い聞かせるのは初めてではない。通算で両手の指では数え切れないほどのことになっている。

「……あれ?服が変わってない?……まさか怪我したの!?」

 ようやくマリアの服装の変化に気がついたかと思えば、掴みかからん勢いで身を乗り出した。

「ちょっ!?落ち着いてください。怪我なんてしてませんから。途中で知り合いの家に行ったんですよ。それにはあの格好だと失礼だから着替えたんです」

 嘘は吐いていない。知り合い=王族、家=城だが。

「……本当よね?」
「本当ですってば。信じてください」

 ルーシーはジトっとした目でマリアを見た。

「……今回はそういうことにしておいてあげるわ」
「……それ、信じてませんよね?」
「……」

 ルーシーはそっと目を逸らした。
 お互いに5分ほど無言だった。マリアはジッとルーシーを見て。ルーシーはマリアと目を合わせまいとして。

「……ルーシーさん」

 根負けしたのはマリアの方だった。

「依頼達成の確認と素材の買取、お願いします」
「……わかったわ。こちらに討伐証明部位を出してもらえますか?」

 ルーシーは口調を受付嬢のものに改めた。心なしか瞳には安堵の色が浮かんでいる。

「……」

 マリアは釈然としないものを感じながらも、無言でアイテムポーチからアルラウネの頭の花を取り出した。自然に生えている花に似ているが、どれも似ているだけで微妙に違う。そして季節感もバラバラだった。

「……9、10……確かに。処理をするのでギルドカードを出してください」
「……」

 ひたすら無言で言われた通りに動く。

「……アルラウネ10体の討伐で合計金貨4枚です。それに別途依頼料金貨1枚が加算されます」
「……全部ギルドカードに入れてください」

 空気が重かった。ルーシーはただ機械的に動いた。

「他の素材は?」
「……買取でお願いします」

 そう言ってマリアはカウンターの上にアルラウネの魔石、蔓、ついでにウォータードラゴンの魔石を全て出した。

「……これ、大きさ的にAランクの魔物の魔石よね?」
「……はい」
「……それも2つ」
「……」
「……あれだけ言ったのに無茶をしたのね」
「……」

 マリアはただ無言だった。今のルーシーに何を言っても、馬鹿なことは言わないでと一蹴されることはマリアには簡単に想像がついた。
 マリアが何も言わないことがわかると、ルーシーは溜息を吐き、無言で魔石等の状態の確認をした。

「魔石が全部で金貨12枚。蔓は短いのが多いから金貨1枚になります。こちらもギルドカードに?」
「……お願いします」

 ギルドカードを受け取ると、マリアは気まずいままギルドを後にした。

☆★☆★☆

近況ボードの方にも書きましたが、次回からしばらく不定期更新とさせていただきます。
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