こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(21)

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「ん~、時間も微妙だし、偶には買い物でもしようかな。ベルもそれで良い?」

 時刻はまだ昼過ぎ。依頼によっては1つぐらい余裕でこなせる時間だが、今さらギルドに戻る選択肢はマリアにはなかった。

「ウン!」

 ベルはマリアのローブのフードから顔を覗かせると、いそいそと小さな手と、どこからか出てきた蔓を器用に使ってマリアの頭をよじ登った。

「……そこが気に入ったの?」
「ウン!トオク、ミル、デキル」
「……まぁ気に入ったのなら良いけど、髪の毛は引っ張らないでよ。さっき強く引っ張ったでしょ。痛かったんだからね」
「ゴメンナサイ」

 マリアはもうベルが目立つことは気にしなかった。王族が陰で動いてくれるんだから、今さら目立ったところで関係がないと思っていた。むしろあの面倒くさいベルジュラック公爵家の人間を早く釣れて好都合だとも。裏でラーナの目から涙が零れ落ちそうになっていることなど、露ほどにも思っていなかった。

「……なんで自分から目立つことを」

 いつの世も一番苦労しているのは影の功労者たちなのかもしれない。

◇◆◇

「あれ?そう言えばベルの服ってどうなってるの?体の一部?」

 今になってマリアはベルの服に興味を示した。

「……ジブン、イト、ツクル。コレ、ワタシ、ジブン、ツクル、シタ」
「?自分で糸から作ってるの?」

 ベルのたどたどしい説明をなんとか理解しようとしたが、首を傾げることになった。

「ソウ。イト、ワタシ、ツル、ザイリョウ」
「……大本を辿れば体の一部ってことになるのかな?」
「……タブン。セツメイ、ジョウズ、デキル、ナイ。ゴメンナサイ」

 マリアには姿は見えなくても、声の調子からベルが落ち込んでいるのがよくわかった。

「……気にしないで良いよ。言葉なんて少しずつ覚えていけば良いんだから」

 励ましの言葉を必死に探したが、そんなありきたりな言葉しか出てこなかった。

「……ゴメンナサイ」
「そこはありがとうって言うところだよ」
「……アリガトウ」
「どういたしまして」

 マリアはいつの間にか微笑んでいた。

「……結局ベルの服って、ベルが作った糸から作らなきゃダメなの?」
「ソレ、タブン、ナイ、オモウ。ザイリョウ、ホカ、ナイ」
「……ってことは、私が普通の布から作っても大丈夫なのかな?」
「……タブン、ダイジョウブ」
「……じゃあ私がベルの服を作っても良い?」
「マリア、フク、ツクル、スル?ウレシイ!?」

 ベルはマリアの頭の上で飛び跳ねて喜んだ。

「ちょっ、ベル。髪の毛がぐしゃぐしゃになるからやめて」
「……ゴメンナサイ」

 そんな話をしている間に2人は商業区まで来ていた。

「じゃあまずはベルの服を作る布を買おうか?」

 マリアの頭の中にはベルに着せたい服のデザインがいくつも浮かんでいた。
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