こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(23)

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「んじゃ、市場に寄って帰ろう」

 マリアは良い買い物ができたと上機嫌だった。
 反対にベルはひどく心配そうな顔をしていた。ベルは言葉は拙いが馬鹿ではない。すでに貨幣価値をなんとなくだが理解し、マリアが支払った金額がとんでもないことを薄々察していた。それに店員の顔が驚愕に染まっていればよっぽどの馬鹿でない限り気づくことだ。

「マリア、ヌノ、カウ、シスギ」
「え~、でもあれぐらいすぐ使っちゃうよ?」
「……」

 ベルは一体何着作る気だと、思いっきり突っ込みたかった。ただ、今回もまた語彙不足で何も言えなかった。そして絶対に早く言葉をマスターしようと心に誓った。

 数分も歩けば周りはきちんとした作りの建物から、簡易的な天幕のようなものに変わる。

「えっと、今日は野菜がもうほとんどないからその補充と、お肉も少し買わないと……あっ、お魚。ちょっと高いけど買っちゃおうかな」

 そんなことを呟きながらどんどん買っていく。加えて言うのなら、最近金銭感覚が麻痺し始めているためか、高級肉の3倍はする魚を普通に買っている。

「お嬢ちゃん!珍しい南国のフルーツを仕入れたんだ。良かったらどうだい!?」
「うちの野菜はこの市場一の鮮度だよ!」
「うちは他の店よりも1割ほど安いよ!」

 店の方はマリアを良い客(鴨ともいう)だと思ったのか、次々に勧めていく。

「このフルーツ、初めて見ます。何て言うんですか?」
「セチーヘレーテっていうんだ。切ると星の形をしているんだ」
「へ~、面白いですね」
「だろ?王都広しといえど、まだ取り扱っているのはうちだけだ」
「そうなんですか?」
「おお。1個小銀貨5枚とちょっと高いが1個どうだ?」
「……じゃあ、20個ほど貰えますか?」
 
 当たり前のように取り出された金貨に店主は一瞬固まった。

「……おう。毎度あり!」

 周囲の店主たちの目がきらりと光った。

「嬢ちゃん、うちの野菜はどうだ!?」
「何言ってんだ!うちの方が鮮度が良いぞ。大目に買ってくれたら割引するぞ!」
「何言ってるとはなんだ!?」

 上客の取り合いをして言い争いを始めた店主たちにベルは怯え始めた。

「……マリア、コワイ」
「……必要最低限は買ったしもう帰ろっか?」

 買った量が必要最低限という量ではないと突っ込む者はここにはいない。
 そしてそのままマリアたちは言い争いをしている店主たちを後目に帰途についた。
 店主たちがマリアがいないことに気がついたのは、それから5分以上も後のこと。

「……あっ」
「?」
「……糸買い忘れた」
「!?」

 なお、学園が見え始めた頃、買い忘れに気づき、慌てて買いに戻ったことは余談。その際市場は避けて通った。
 そして買い忘れ以上に大事なことを忘れていることに気づくのはさらに数時間後のこと。
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