こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(24)

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 学園の寮の自室に戻ってくると、早速マリアは買ったばっかりの生地を広げた。勿論ベルが選んだものだ。

「ん~、これだけだと寂しいからこっちも少し使うか」

 その横に並べたのは淡い水色の生地。すでにマリアの頭の中には大まかな完成図が浮かんでいた。

「……もう夏だし、袖なしで良いでしょ。……ベルはふんわりした服が似合いそうだし、ちょっと多めに布を使うか。……あっ、その前に採寸しなくちゃ」

 ベルはそんなマリアを無表情で見ていた。採寸もされるがままだった。

(マリア、少シ、怖イ)

 準備が粗方終わり、布を裁断するとマリアはかなりの速度で縫い始めた。

「……この時間だったら、寝る前までに2、3着出来そうだから楽しみにしていてね」

 そう言っている間も手は止まらない。1時間ほどで縫い上げるとベルに見せた。

「……出来たよ。着てみて」

 ベルは若干の恐怖を覚えながら、言われた通りに着替えた。

「あっ、これ仕上げね」
「……」

 マリアはハイテンションだった。ベルは何かを悟ったように無表情だった。

「……うん、やっぱ思った通り可愛いよ」

 マリアは出来栄えに満足すると、頬を弛めた。
 ベルは自分の格好を見下ろした。濃い緑のハイウエストのワンピース。そこは自分で選んだのだから、当然希望通りだ。ただ、普段マリアが着ているものよりスカート部分に布がふんだんに使われ、ふんわりと足首のあたりまで覆っていた。そこまではベルの許容範囲だった。

(……コレ、ジャマ)

 ただし、最後に仕上げと言われ、ハイウエストで結ばれたリボンは絶対に必要ないと思っていた。少し長さが長く、踏むことはないが、どこかにひっかけそうで怖かった。

「じゃあ、次のやつ作るね!」

 そんなベルの表情には気づかず、マリアは楽し気に今度は黒い布と真っ白な布を取り出した。

(次はメイド服だね♪)

 鼻歌交じりに作業をしているマリアを、ベルは複雑な表情で見ていた。
 その後マリアは上機嫌でメイド服だけを何種類も作り続けたとだけ言っておく。

 午後8時を過ぎ、アイテムポーチに入っていたもので適当に夕食を済ませたところで、マリアはようやく重大な事実に気づいた。

「……靴、どうしよう」

 ベルは最初から裸足だった。当然の如く王都と言えどもベルサイズの靴は売っていない。

(……靴職人さんに弟子入りする?いや、でもそんな時間ないし……)

 半ば本気で靴職人に弟子入りすることを考え、すぐに時間が足りないと諦める。

 後日訪れた靴屋でマリアがとある靴職人と意気投合して、ベルが疲れた顔をしたのはまた別の話。

☆★☆★☆

これで一先ず1日が終了です。次回は1回アルフォードに話を戻します。
今回、暴走しすぎた気がするので後日書き直すかもしれません。
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