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第七章 それぞれの過ごす日々
グレンの尽力
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グレンは王都内を全力疾走していた。だがその姿を見咎める者はいない。
それもそのはず、グレンは道ではなく屋根の上を走っていたのだから。普段から上を見ながら歩いている者などいない。そして遠目で目にしてもその動きは人の想像の範囲を超えており、目の錯覚だと思う者ばかりだった。
「まったく人使いが荒い」
アーティスの姿はその場にはない。アーティスは別行動で西門に向かっていた。
ギルドから走ること3分。グレンは学園の寮のアーティスの部屋、その真下にいた。
「よし、大丈夫だな」
辺りに人がいないことを素早く見まわして確認すると、上を見上げた。そして軽く体に力を込めた。
するとグレンの背から龍種の羽が生えてきた。どういう仕組みになっているのか、服に破れなどはない。
グレンは慣れた様子で羽を羽ばたかせると、あっという間に部屋のテラスまで上がった。そして着地と同時に羽は幻のように空気に溶けて消えた。
「……鍵はかかっていないか」
ホッと息を吐きながら窓から中に入る。部屋の中は真っ暗で、人影はおろか気配すらもない。
「……アイテムポーチ、アイテムポーチ……あっ、あった」
そして無事2人のアイテムポーチを見つけ出すと自分のものは身につけ、アーティスのものは自分のアイテムポーチに仕舞った。
そして何事もなかったかのように再び窓から外に出ようとしたが──。
「逃がしませんよ」
誰もいないはずの室内から男の声が響いた。
「えっ?」
そしてグレンが身構えるよりも早く何かが飛来した。
グレンは咄嗟にそれを左手で払ったが、それは悪手だった。
「何っ!?」
それは弾かれるのではなく手首に巻きついてきた。そしてグレンの腕を引っ張り、僅かに体勢を崩させた。
グレンは慌てて自分の腕をよく見た。
「……鞭?」
そう、それは漆黒の、闇のように黒い鞭だった。そしてその先はいつの間にか現れた男の手元に続いていた。その男は朝アーティスを訪ねてきた者だった。
「一応念のためこの部屋で待機していて正解でした。窓からとは少々予想外でしたがね。さあ、アーティス様の居場所を吐いてもらいましょうか?」
男は不敵に笑った。
「そう簡単に教えるかよ!」
その言葉とともにグレンは無事だった右の手の平に拳大の炎を生み出した。
「……ほぉ、無詠唱ですか。ですがそんなもの、当たらなければ意味がないんですよ」
勢いよく鞭を一振り、それだけで僅かでもバランスを崩していたグレンは振り回された。
「……当たらない?それはお前に当てようとしたらの話だ!」
グレンは躊躇なく自らの右腕、鞭が巻きついている付近に押し当てた。
「なっ!?」
鞭が焼き切れるようなことはなかった。だが動揺からか、ほんの一瞬だけ拘束が緩んだ。その隙を見逃さず、拘束から抜け出す。
「……拘束が解けたからといって、私から逃げられると思ったら大間違いですよ」
そのまま逃げ出そうとしたグレンの足元に鞭が叩きつけられる。グレンの足が止まるのが一瞬でも遅ければ直撃は免れなかったであろう。
「……普通ならな。だが僕の、いや、僕たちの勝ちだ」
グレンは勝ち誇った笑みを浮かべた。
☆★☆★☆
脱出方法hint:基本設定
考えてみてください。
それもそのはず、グレンは道ではなく屋根の上を走っていたのだから。普段から上を見ながら歩いている者などいない。そして遠目で目にしてもその動きは人の想像の範囲を超えており、目の錯覚だと思う者ばかりだった。
「まったく人使いが荒い」
アーティスの姿はその場にはない。アーティスは別行動で西門に向かっていた。
ギルドから走ること3分。グレンは学園の寮のアーティスの部屋、その真下にいた。
「よし、大丈夫だな」
辺りに人がいないことを素早く見まわして確認すると、上を見上げた。そして軽く体に力を込めた。
するとグレンの背から龍種の羽が生えてきた。どういう仕組みになっているのか、服に破れなどはない。
グレンは慣れた様子で羽を羽ばたかせると、あっという間に部屋のテラスまで上がった。そして着地と同時に羽は幻のように空気に溶けて消えた。
「……鍵はかかっていないか」
ホッと息を吐きながら窓から中に入る。部屋の中は真っ暗で、人影はおろか気配すらもない。
「……アイテムポーチ、アイテムポーチ……あっ、あった」
そして無事2人のアイテムポーチを見つけ出すと自分のものは身につけ、アーティスのものは自分のアイテムポーチに仕舞った。
そして何事もなかったかのように再び窓から外に出ようとしたが──。
「逃がしませんよ」
誰もいないはずの室内から男の声が響いた。
「えっ?」
そしてグレンが身構えるよりも早く何かが飛来した。
グレンは咄嗟にそれを左手で払ったが、それは悪手だった。
「何っ!?」
それは弾かれるのではなく手首に巻きついてきた。そしてグレンの腕を引っ張り、僅かに体勢を崩させた。
グレンは慌てて自分の腕をよく見た。
「……鞭?」
そう、それは漆黒の、闇のように黒い鞭だった。そしてその先はいつの間にか現れた男の手元に続いていた。その男は朝アーティスを訪ねてきた者だった。
「一応念のためこの部屋で待機していて正解でした。窓からとは少々予想外でしたがね。さあ、アーティス様の居場所を吐いてもらいましょうか?」
男は不敵に笑った。
「そう簡単に教えるかよ!」
その言葉とともにグレンは無事だった右の手の平に拳大の炎を生み出した。
「……ほぉ、無詠唱ですか。ですがそんなもの、当たらなければ意味がないんですよ」
勢いよく鞭を一振り、それだけで僅かでもバランスを崩していたグレンは振り回された。
「……当たらない?それはお前に当てようとしたらの話だ!」
グレンは躊躇なく自らの右腕、鞭が巻きついている付近に押し当てた。
「なっ!?」
鞭が焼き切れるようなことはなかった。だが動揺からか、ほんの一瞬だけ拘束が緩んだ。その隙を見逃さず、拘束から抜け出す。
「……拘束が解けたからといって、私から逃げられると思ったら大間違いですよ」
そのまま逃げ出そうとしたグレンの足元に鞭が叩きつけられる。グレンの足が止まるのが一瞬でも遅ければ直撃は免れなかったであろう。
「……普通ならな。だが僕の、いや、僕たちの勝ちだ」
グレンは勝ち誇った笑みを浮かべた。
☆★☆★☆
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