こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
263 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々

グレンの尽力

しおりを挟む
 グレンは王都内を全力疾走していた。だがその姿を見咎める者はいない。
 それもそのはず、グレンは道ではなく屋根の上を走っていたのだから。普段から上を見ながら歩いている者などいない。そして遠目で目にしてもその動きは人の想像の範囲を超えており、目の錯覚だと思う者ばかりだった。

「まったく人使いが荒い」

 アーティスの姿はその場にはない。アーティスは別行動で西門に向かっていた。

 ギルドから走ること3分。グレンは学園の寮のアーティスの部屋、その真下にいた。

「よし、大丈夫だな」

 辺りに人がいないことを素早く見まわして確認すると、上を見上げた。そして軽く体に力を込めた。
 するとグレンの背から龍種の羽が生えてきた。どういう仕組みになっているのか、服に破れなどはない。
 グレンは慣れた様子で羽を羽ばたかせると、あっという間に部屋のテラスまで上がった。そして着地と同時に羽は幻のように空気に溶けて消えた。

「……鍵はかかっていないか」

 ホッと息を吐きながら窓から中に入る。部屋の中は真っ暗で、人影はおろか気配すらもない。

「……アイテムポーチ、アイテムポーチ……あっ、あった」

 そして無事2人のアイテムポーチを見つけ出すと自分のものは身につけ、アーティスのものは自分のアイテムポーチに仕舞った。
 そして何事もなかったかのように再び窓から外に出ようとしたが──。

「逃がしませんよ」

 誰もいないはずの室内から男の声が響いた。

「えっ?」

 そしてグレンが身構えるよりも早く何かが飛来した。
 グレンは咄嗟にそれを左手で払ったが、それは悪手だった。

「何っ!?」

 それは弾かれるのではなく手首に巻きついてきた。そしてグレンの腕を引っ張り、僅かに体勢を崩させた。
 グレンは慌てて自分の腕をよく見た。

「……鞭?」

 そう、それは漆黒の、闇のように黒い鞭だった。そしてその先はいつの間にか現れた男の手元に続いていた。その男は朝アーティスを訪ねてきた者だった。

「一応念のためこの部屋で待機していて正解でした。窓からとは少々予想外でしたがね。さあ、アーティス様の居場所を吐いてもらいましょうか?」

 男は不敵に笑った。

「そう簡単に教えるかよ!」

 その言葉とともにグレンは無事だった右の手の平に拳大の炎を生み出した。

「……ほぉ、無詠唱ですか。ですがそんなもの、当たらなければ意味がないんですよ」

 勢いよく鞭を一振り、それだけで僅かでもバランスを崩していたグレンは振り回された。

「……当たらない?それはお前に当てようとしたらの話だ!」

 グレンは躊躇なく自らの右腕、鞭が巻きついている付近に押し当てた。

「なっ!?」

 鞭が焼き切れるようなことはなかった。だが動揺からか、ほんの一瞬だけ拘束が緩んだ。その隙を見逃さず、拘束から抜け出す。

「……拘束が解けたからといって、私から逃げられると思ったら大間違いですよ」

 そのまま逃げ出そうとしたグレンの足元に鞭が叩きつけられる。グレンの足が止まるのが一瞬でも遅ければ直撃は免れなかったであろう。

「……普通ならな。だが僕の、いや、僕たちの勝ちだ」

 グレンは勝ち誇った笑みを浮かべた。

☆★☆★☆

脱出方法hint:基本設定
考えてみてください。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...