こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

アーティスの受難(3)

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 時は戻り、デリーとひとまず別れた直後のこと。

「……荷物は持ってこないとまずいよね?」
「……そうだな。ちょっとひとっ走り行ってくる」
「ちょっと待って、待ち伏せされている可能性がある」
「じゃあどうするんだよ?」

 グレンは不満気だった。

「考えはある。ちょっと耳を貸せ」
「……なんだ?」

 最初は不思議そうだったグレンも、話が進むにつれ目を輝かせた。

「よし、それで行くぞ。で、何分ぐらいかかる?」
「う~ん、僕の足で6、いや5分だな。グレンは行くだけなら5分もあればお釣りがくる」
「じゃあ問題ないね」

 互いに頷きあうと、2人はギルドから出た。そしてグレンは学園へ、アーティスは西門に向かって駆け出した。
 流石にアーティスは屋根の上を走るなどという芸当はできず、普通に地上を走った。だがそれでもそれなりの速さで人混みを掻き分けていく。
 そして言葉通り、丁度5分で西門に到着する。

「えっと、あそこが良いか」

 人の気配がない適当な路地裏に入ると、改めて周囲に人がいないことを確認する。

「よし、『来たれ、わが盟友よ、《召喚サモン》』」

 短いその呪文は、召喚契約しているものを呼び出すものだった。
 魔術自体は問題なく発動し、グレンのすぐ目の前にグレンが現れた。

「おお、タイミングピッタリだ」

 アーティスはグレンの左腕が少し煤けているのが気になったが、特に触れなかった。

「……じゃあ見つからないうちに行くぞ。後は……デリーさんたちが早く来ることを祈るだけだな」
「……どう考えても1時間後集合なんて、僕たちに配慮してだもんね」

 そんな話をしながらアーティスはグレンからアイテムポーチを受け取ると、中からいつものローブを取り出し、身に着けた。そして不審にならない程度にフードを被った。

 西門ではすでにデリーのパーティー、《白き牙》のメンバー3人が揃っていた。

「……早かったな。てっきりもっとかかるものだと思ったぜ」
「ハハハ、大した準備もありませんでしたから。そちらも大丈夫なら、遅くならないうちに行きましょう」
「……そうだな」

 デリーは内心で思いっきり突っ込んでいた。

(おい、どうやれば10分かそこらで準備が整うんだよ!?ここまでの移動時間もあるし、おかしいだろうが)

 それは他の2人も一緒だった。だが3人ともそれを表には出さなかった。下手な詮索はしない。それが冒険者の暗黙の了解だった。

 アーティスは門で止められることも考えていたが、問題なく通過できた。

(なんでだ?)

 アーティスのグランファルト子爵家の方ではすでに全ての門で網を張っていた。だがその対象は貴族の者と低ランク冒険者のみだった。すでにCランクと、低ランクとは言えなかったアーティスはその網に引っかからなかった。デリーたちと一緒で5人だったことも大きい。グランファルト子爵家の者が貴族の戦闘能力と、冒険者たちの戦闘能力の差、およびランクアップの方法について詳しくは知らなかった故の勝利と言えた。
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