こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

リオナの学園生活最初の朝

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 時は少し戻りマリアが城を訪れた翌日のこと。

「……エリザおねぇちゃん!早く行こ!」

 寮の入口、そこで後ろを振り返りながらリオナは楽しみで仕方ないといった様子で弾けんばかりの満面の笑みを溢れさせた。
 今日はリオナの学園生活初日。あまり眠れていないのか目の下には薄っすらと隈があった。ただそれもよく見なければ気づかないほどだ。

「……もう。そんなに急がなくても学園は逃げたりしないわよ」

 リオナとは対照的にエリザベートは少し呆れた様子で苦笑いを浮かべた。

「わかってるけど、楽しみなんだからしょうがないじゃない」

 リオナの足取りは軽く、今にもスキップを始めそうだ。
 これは何を言っても無駄だと、エリザベートは大きく溜息を吐いた。

「はいはい。わかったから落ち着きなさい。……最終確認よ。貴族に絡まれたら?」
「一方的な言いがかりだったら黙って聞く」
「じゃあそれ以外は?」
「……えっと、近くにエリザおねぇちゃんたちがいたら助けを求める。いなかったら……あれ?どうするんだっけ?」

 エリザベートはまた大きく溜息を吐いた。

「とりあえず攻撃された場合はすべて回避。その後にその魔道具を作動させなさい。映像と音を記録してくれるから」

 リオナの首にはペンダントトップに蝶を模した紫の小さな石がはまったネックレスが下げられていた。これはマリアの師匠のローザお手製のものだったりする。

「わかった」

 リオナは少し緊張した面持ちで頷いた。

「あっ、でもうちのクラスはマリアもいるし、平民だからってバカにするような人はいないから安心して。……変人はいるけどね」

 最後に付け足された言葉は小さく、リオナの耳には届かなかった。

「うん!」

 もし耳に届いていたら顔を引きつらせていただろう。知らないことは幸せなのかもしれない。

 リオナがエリザベートの後に続いて教室に入ると騒めきが起こった。

「えっ?誰?」

 アナベルは目を白黒させた。
 すでに遅刻ぎりぎりの時間ということもあり全員揃っている。いや、マリアの姿だけがなかった。

「可愛い~」

 アグナが少し嬉しそうに声を挙げたが、リオナはその言葉に少しムッとした様子だった。だが流石にここで怒鳴り散らすわけにはいかないとわかっているのか、手をきつく握り締めただけだった。

「あ、あの、リオナです。初めまして。今日からこのクラスに入ることになりました。よろしくお願いします」

 固い声で自己紹介をし、頭を下げると左右で結ばれた髪が大きく跳ねた。

「えっ?リオナちゃん?えっと、歳はいくつ?」

 アナベルは少し驚きながらもなんとかその言葉を口にした。

「っ!?『《風壁》!』」

 次の瞬間アナベルはなぜか身の危険を感じて思わず反射的に防御魔術を発動させた。
 その判断は正しかったとすぐにわかった。目の前にはどこから取り出したのか大鎌が風の盾に受け止められていた。

「……10歳です。たとえ同性でも女性に年齢を尋ねるのはマナー違反ですよ?」

 リオナはニッコリと笑っていた。

「……ごめんなさい」

 アナベルも恐怖からか素直に謝った。
 リオナの隣ではエリザベートが大きく溜息を吐き、教室の片隅ではアルフォードとアーティスが苦笑いしていた。

ガラッ

「おはよう!……って、何だこの状況は?」

 パトリオットは教室に入ってくるなり目の前に広がる光景に固まった。

☆★☆★☆

というわけで今回から新編です。ほのぼの学園生活をお送りしたいと思います。久しぶりの学園偏ということで半分忘れ去られたであろうキャラも出ます。
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