こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
299 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々

触れてはいけない話題

しおりを挟む
「……これはどういった状況なのかしら?」

 水浸しの地面と泥だらけの肩で息をしているアーティスの服を見比べてカーラは小首を傾げた。

「……何でもないです。ねぇ、アーティス?」
「あ、ああ」

 エリザベートは目を細めて微笑みかけたが、アーティスは頬を引きつらせた。目が笑っていなかった。

「……そういうことにしておくわ。その服は……マリア、綺麗にできる?」
「任せてください」

 マリアはアーティスのすぐそばまで近寄ると手をかざした。

「もう面倒くさいから丸洗いしちゃうね。息止めておいて」
「えっ?丸洗いって?」

 それには口では答えず行動に移した。

「『《ウォーターボール》』」

 通常のものに比べサイズが比べ物にならない水球が生成され、アーティスの体全体を包み込み──。

「アブッ」

 アーティスは溺れた。傍から見るとわからないが、中で水が螺旋状に動いているらしく、金色の髪が踊っている。
 皆の目がどこか生温かい、かわいそうなものを見る目に変わった。
 5秒ほどで水球は形を失い水が重力に従って落ちた。マリアを含め近くにいた者が慌てて濡れないように距離をとった。

「んで、乾燥だね。『《ドライ》』」

 どこか楽しそうにマリアが唱えると乾いた温風が生み出され、髪と服をあっという間に乾かしてしまった。

「これで大丈夫ですよね?」
「ええ。時間がなくなってしまうし、行きましょうか」

 カーラはその出来栄えに満足したようで大きく頷くと先に立って歩き始めた。その後を5人も続く。

「マリア、今日はそれにしたんだな」
「えっ?うん、着ないのももったいないしね」

 アルフォードに話を振られ、マリアはそう答えてその場で一回転して見せた。

「ただね、靴が丁度良いのがなくて」

 鮮やかなブルーの半袖ワンピース、それも袖は同色のオーガンジーの生地で作られており向こう側が透けていてどこか涼し気だ。スカート部分も同じ布を幾重にも重ねて作られており、一番上のものだけ流水と花びらの模様が白い糸で刺繍されている。
 そんな可愛らしい服とは裏腹に、靴はいつもの無骨なブーツ。どこかアンバランスな印象があった。

「……急な話だったししょうがないんじゃないか?」
「そうだね。……今度靴屋さんに行こうかな?暑くなってきたからサンダルが欲しいし」

 少し遅れてしまい少し小走りになる。

「あ~、夏場はブーツだと蒸れるからな。去年までのはどうしたんだ?」
「……アル、私の歳を忘れてない?靴のサイズなんて毎年変わるんだよ?小さすぎて履けないよ」

 マリアは苦笑していた。

「ねぇ?リオ」

 そしてリオナに話を振ったが──。

「私、去年のくつが普通にはけるんだけど……」
「……あっ」

 触れてはいけないことに触れてしまっていた。

「だ、大丈夫だよ。リオだって成長はしてるでしょ?」

 マリアはフォローになっているのか微妙な慰めの言葉を口にしてしまい、リオナはさらに落ち込んだ。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...