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第八章 ベルジュラック公爵家
ド忘れ
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「マリアっ!」
アルフォードが何度も揺すぶるとようやく目の焦点があった。
「……どうしたんだ?」
マリアは困ったように笑い、気まず気に口を開いた。
「……ちょっと予想外の名前が書いてあったから驚いただけだよ」
ちょっとという言葉で済ませられる話ではないと思ったが、アルフォードはそれ以上話を聞き出そうとはしなかった。
「そうか……。とりあえず人を呼びに行くぞ。すぐに父上たちが戻ってきてしまう」
「うん。リンリーさん?っていう人に伝えれば良いんだよね?」
心の奥深くまで踏み込んでこようとしないアルフォードの優しさに感謝しながら答える。
「ああ。ただ……」
「ただ?」
「……どうせその辺にいる気がする」
「……えっ?」
言われたことを理解するのに少し時間を要する。
「あら、相変わらず良い感をしていますね」
「っ!?」
マリアの真後ろ──先ほどまで誰もいなかったはずの空間からどこか楽しそうな声が聞こえてマリアは慌てて振り返った。
そこには中年の侍女のお仕着せに身を包んだ女性が立っていた。
「……初めましてで良いですよね?私はリンリー・エルダーと申します」
マリアがリンリーの姿を目で捉えるとリンリーは丁寧にお辞儀をした。
「……エルダー?」
その苗字に聞き覚えはあった。だがどこで聞いたのか思い出せない。
困ったように視線を彷徨わせるマリアにリンリーはクスっと笑った。
「思い出せなくても仕方がありません。おそらく1度か精々2度くらいしか聞いたことがないでしょうから」
そう前置きをしてから答えを口にする。
「……一応そこにおられるアル様の──アルフォード・エルダーの母親ということになっています」
「……あっ」
そこまで言われてようやく思い出す。
「……忘れていたのか」
アルフォードのマリアを見る目は若干の呆れを含んでいた。
「……だって苗字なんて使う機会ないし」
非難がましい物言いにマリアは口を尖らせた。
ここ最近知り合った者たちは冒険者が大半だ。そのため自己紹介の時も苗字までは名乗っていない。
「それはそうだが……」
アルフォードは頭では理解しても納得まではできないようだった。
「それに苗字なんて使う機会がない方が良いと思うよ?よく考えてみればここ数か月学園で授業を受けたのと冒険者のお仕事しかしていないんだよ?それなのに苗字が──貴族としての身分が必要な状況なんて碌な状況じゃないじゃない」
慌てたように付け足された言葉にようやくアルフォードは納得した。
「……だな」
アルフォードが何度も揺すぶるとようやく目の焦点があった。
「……どうしたんだ?」
マリアは困ったように笑い、気まず気に口を開いた。
「……ちょっと予想外の名前が書いてあったから驚いただけだよ」
ちょっとという言葉で済ませられる話ではないと思ったが、アルフォードはそれ以上話を聞き出そうとはしなかった。
「そうか……。とりあえず人を呼びに行くぞ。すぐに父上たちが戻ってきてしまう」
「うん。リンリーさん?っていう人に伝えれば良いんだよね?」
心の奥深くまで踏み込んでこようとしないアルフォードの優しさに感謝しながら答える。
「ああ。ただ……」
「ただ?」
「……どうせその辺にいる気がする」
「……えっ?」
言われたことを理解するのに少し時間を要する。
「あら、相変わらず良い感をしていますね」
「っ!?」
マリアの真後ろ──先ほどまで誰もいなかったはずの空間からどこか楽しそうな声が聞こえてマリアは慌てて振り返った。
そこには中年の侍女のお仕着せに身を包んだ女性が立っていた。
「……初めましてで良いですよね?私はリンリー・エルダーと申します」
マリアがリンリーの姿を目で捉えるとリンリーは丁寧にお辞儀をした。
「……エルダー?」
その苗字に聞き覚えはあった。だがどこで聞いたのか思い出せない。
困ったように視線を彷徨わせるマリアにリンリーはクスっと笑った。
「思い出せなくても仕方がありません。おそらく1度か精々2度くらいしか聞いたことがないでしょうから」
そう前置きをしてから答えを口にする。
「……一応そこにおられるアル様の──アルフォード・エルダーの母親ということになっています」
「……あっ」
そこまで言われてようやく思い出す。
「……忘れていたのか」
アルフォードのマリアを見る目は若干の呆れを含んでいた。
「……だって苗字なんて使う機会ないし」
非難がましい物言いにマリアは口を尖らせた。
ここ最近知り合った者たちは冒険者が大半だ。そのため自己紹介の時も苗字までは名乗っていない。
「それはそうだが……」
アルフォードは頭では理解しても納得まではできないようだった。
「それに苗字なんて使う機会がない方が良いと思うよ?よく考えてみればここ数か月学園で授業を受けたのと冒険者のお仕事しかしていないんだよ?それなのに苗字が──貴族としての身分が必要な状況なんて碌な状況じゃないじゃない」
慌てたように付け足された言葉にようやくアルフォードは納得した。
「……だな」
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