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第九章 夏季休業
《転移》
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「……じゃれるのも程々にしろ。あまり騒ぐと人が来るぞ」
「は~い」
ギルガルドに窘められ、渋々と頷くと改めて皆を見回す。
「用意は良いよね?んじゃ、とりあえずここから出るよ。アル、手伝って」
「……結局人頼りなんだな」
「そんなこと言わないでよ。だって私の力だけじゃどう足掻いたって不可能なんだもん」
仕方ないじゃないと頬を膨らませる。
「はいはい。言ってみただけじゃないか。そう怒るな」
「冗談には聞こえなかったんだけど」
「……人が来る前にサッサと脱出するぞ」
「ちょっと、誤魔化さないでよ」
口では文句を言いつつ、頭ではこの後の行動を考えていた。
(牢は壊さない方が良いよね。何かに気を取られてる隙に抜け出すのがベストだけど、それは無理な要求だよね。おじいちゃんは放置しても大丈夫だけど、問題はベルか。ベルに監視がなければ召喚して解決することだけど、人がいたらこっちの動きがバレかねないし……ベルには悪いけど、しばらくそのまま耐えてもらうか。たぶんだけど殺されるようなことはないだろうし。良くも悪くも希少価値高いし)
マリアはまさかベルが自力で逃げ出しているとは夢にも思っていなかった。だからこそ放置を決める。
「アル。転移系はどれぐらいの距離いける?」
そして思考を脱出方法に戻す。
「……大人1人ならその鉄格子の外に出すのが限界だな。後、魔力量的に2、3人が限界だぞ」
「……やっぱりそうだよね。私も4人が限界かな。それで魔力もほぼ空っぽ」
転移系の魔術は例え単距離でも膨大な魔力が必要になる。おまけに対象の重量によって消費魔力量も跳ね上がる。
前に同じ王都内、対象が老人と子どもといえど徒歩1時間の距離を転移させたローザですら色々とおかしい。国王に至ってはもはやおかしいという域すらも超えている。
「これぐらいで魔力切れなんて、やっぱ実際に使うにはまだまだだよね」
「そうだな。最近練習もサボっていたし、反省してちゃんと練習するか」
「だね」
それだけできれば上出来なのだが、2人とも身近に規格外な人物がいる所為か自分たちに対する基準もおかしかった。
「んじゃ、時間ももったいないし、牢の外に飛ばすね」
そう言って鉄格子ギリギリに並ぶように指示すると一番近くにいたギルガルドの背に手を置く。
「『点と点、2点を結びしは線にあらず』」
朗々と歌うような声が響く。
「『なぜならば2点は同じ点なのだから。故に結ぶことなどできはしない。後はそのことを認識させるだけである。世界よ、認めよ。2つの空間が同じであると』」
普段の詠唱とは異なり、ひどく抽象的な言葉が紡がれる。
何か問題があればすぐに介入できるよう黙って魔力の流れに目を凝らしていたアルフォードが驚いた顔をマリアに向ける。
「待て!それは……」
「『《転移》』」
慌てて止めようとするが、マリアが最後の言葉を、魔術名を唱え、発動させる方が早かった。
「は~い」
ギルガルドに窘められ、渋々と頷くと改めて皆を見回す。
「用意は良いよね?んじゃ、とりあえずここから出るよ。アル、手伝って」
「……結局人頼りなんだな」
「そんなこと言わないでよ。だって私の力だけじゃどう足掻いたって不可能なんだもん」
仕方ないじゃないと頬を膨らませる。
「はいはい。言ってみただけじゃないか。そう怒るな」
「冗談には聞こえなかったんだけど」
「……人が来る前にサッサと脱出するぞ」
「ちょっと、誤魔化さないでよ」
口では文句を言いつつ、頭ではこの後の行動を考えていた。
(牢は壊さない方が良いよね。何かに気を取られてる隙に抜け出すのがベストだけど、それは無理な要求だよね。おじいちゃんは放置しても大丈夫だけど、問題はベルか。ベルに監視がなければ召喚して解決することだけど、人がいたらこっちの動きがバレかねないし……ベルには悪いけど、しばらくそのまま耐えてもらうか。たぶんだけど殺されるようなことはないだろうし。良くも悪くも希少価値高いし)
マリアはまさかベルが自力で逃げ出しているとは夢にも思っていなかった。だからこそ放置を決める。
「アル。転移系はどれぐらいの距離いける?」
そして思考を脱出方法に戻す。
「……大人1人ならその鉄格子の外に出すのが限界だな。後、魔力量的に2、3人が限界だぞ」
「……やっぱりそうだよね。私も4人が限界かな。それで魔力もほぼ空っぽ」
転移系の魔術は例え単距離でも膨大な魔力が必要になる。おまけに対象の重量によって消費魔力量も跳ね上がる。
前に同じ王都内、対象が老人と子どもといえど徒歩1時間の距離を転移させたローザですら色々とおかしい。国王に至ってはもはやおかしいという域すらも超えている。
「これぐらいで魔力切れなんて、やっぱ実際に使うにはまだまだだよね」
「そうだな。最近練習もサボっていたし、反省してちゃんと練習するか」
「だね」
それだけできれば上出来なのだが、2人とも身近に規格外な人物がいる所為か自分たちに対する基準もおかしかった。
「んじゃ、時間ももったいないし、牢の外に飛ばすね」
そう言って鉄格子ギリギリに並ぶように指示すると一番近くにいたギルガルドの背に手を置く。
「『点と点、2点を結びしは線にあらず』」
朗々と歌うような声が響く。
「『なぜならば2点は同じ点なのだから。故に結ぶことなどできはしない。後はそのことを認識させるだけである。世界よ、認めよ。2つの空間が同じであると』」
普段の詠唱とは異なり、ひどく抽象的な言葉が紡がれる。
何か問題があればすぐに介入できるよう黙って魔力の流れに目を凝らしていたアルフォードが驚いた顔をマリアに向ける。
「待て!それは……」
「『《転移》』」
慌てて止めようとするが、マリアが最後の言葉を、魔術名を唱え、発動させる方が早かった。
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