こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

国王と門の衛兵たち

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「……やっと階段があった」

 マリアは安堵の吐息と共にそう呟いた。その声には疲れが滲み出ている。

「……俺は悪くないからな」
「いや、お前の所為だろうが、どう考えても」

 サウリは若干の敵意の混じった視線を向けられ、味方を探して視線を彷徨わせる。

「……サウリさん。私もサウリさんの所為だと思いますよ」

 だが味方は誰もいなかった。

「いい加減自分が方向音痴だと認めてください」
「……だから別に俺は方向音痴じゃない」
「……一番最初の通路から逆を選んだのは誰だったっけな?」
「……」
「自信満々だったよな?」

 言葉の槍が次々にサウリの心に突き刺さる。

「……自分の非を認められない大人って最低だと思います」

 その言葉が止めを刺した。

「……認めれば良いんだろ!?方向音痴だってな!」

 もはや涙目だった。

「……声が大きいです。見つかったらどうするんですか」

 冷ややかな目をマリアに向けられ、サウリはさらに落ち込んだ。

「……そんなこと言っていないで行くぞ」

 アルフォードはそう言って階段を昇り始めた。
 サウリは皆にこの場に放置されそうになり、慌ててその後を追いかけた。

◇◆◇

「……さて、用意は良いな?」

 宰相が静かに頷くと、国王は呟くように詠唱を始めた。その足元には何やら大きな包みが置かれており、周囲にはユニコーンたちがひしめき合っていた。

「『……どけ給え、《空間歪曲》』」

 床が抜けるような感覚と共に体が落下する。

「うおっ!?」

 ギルガルドにとって不運だったのはこの面々の中で1人だけそうなることを知らなかったことだ。
 周りが綺麗に着地しているにも拘わらず、1人だけ無様に固い地面を転がるという醜態を晒すこととなった。

「何者だっ!」

 国王が皆を転移させたのは街の門の目の前だった。
 慌てた様子の衛兵たちが周囲を取り囲む。

「……ここで一番偉い者を呼んでくれるか?」

 槍の穂先を向けられたにも拘わらず、国王はにこやかな笑顔で能天気に告げた。

「……ふざけるな!名前も名乗っていない者を、不審者を会わせるわけがないだろうが!?」
「……ふざけてなどいないのだがな」

 国王は溜息を吐くと仕方ないと小さく口にした。

「私は国王のサンドライト・エルドラントだ。こっちは宰相のエルマン・カンベールという」

 国王が視線を宰相に向けると、宰相は小さく礼をした。

「……国王?」

 いきなり現れたことと共の者が少ないことを除けば、大貴族と言われても何の違和感もないほど立派な国王と宰相の服装を改めて見て、衛兵たちは顔色を変えた。

「……国王様はお忍びのご予定だったのですがね」

 宰相の嘆くように呟いた言葉が決め手となった。
 衛兵たちは弾かれたように向けていた槍を下ろし、一番門の近くにいた者が駆け去っていった。
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