こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

門衛士長

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「はぁ?国王が来た?」

 耳にした言葉が信じられず、思わず訊き返す。

「は、はい。先ほど門の前にいきなり現れて」
「……偽者にしろ、本物にしろ放置はできないな。わかった。すぐに行くと伝えろ」
「わかりました。エリーザ様」

 慌ただしく部屋を出ていく部下の背を見送りながらエリーザは独り言る。

「……なぜこのタイミングで」

 エリーザは現れたという国王が本物だと信じて疑っていなかった。
 気を取り直すと身支度を整え、落ち着いた足取りで部屋を後にした。

◇◆◇

「……遅い」

 国王は苛立たし気にそう呟いた。

「……珍しいですね。国王様がここまで焦られるなど」
「当たり前だろう?壊れた城門の修理に今回の件の事後処理、やることが山積みだ。おまけに普段の政務も待ってはくれん」

 宰相は言われた言葉を理解すると同時に頭を押さえた。

「……今はアル様も頼れませんからね」

 意図的に忘れていたことを思い出させられ、遠い目をして空を仰ぐ。

「そうだな」

 虚ろな目で乾いた笑い声を漏らす2人を、ギルガルドは不気味なものを見る目で見ていた。と同時にさり気なく2人から距離を取る。

(……国王様も大変なんだな)

 そして思わず同情を覚えるぐらいには2人からは生気を感じられなかった。

「……」

 このタイミングでようやくエリーザが到着した。そして国王たちを認識して固まる。

(……こ、これは声をかけて良いのか?)

 自問自答するも答えは出ない。

「……んっ?お前がここの責任者か?」

 エリーザが躊躇している間に国王の方が気づいた。

「は、はい。門衛士長をしております、エリーザ・ライトニアと申します。しがない男爵家の末席に連なる者です」

 緊張した面持ちで頭を下げたエリーザに国王は厳しい目を向けた。

「……質実剛健と名高いライトニア家の者がいながらなぜこのようなことを?」
「?何のことでしょう?仰られている意味が……」

 わからないと言うよりも先にエリーザが立っていたすぐ横の地面が抉れた。

「……知らぬとは言わせぬ。早くレリオン・シュタット前辺境伯とその連れの者を解放せよ」
「……シュタット前辺境伯様ですか?解放と言われましてもそもそもそのような者が来たという報告は受けておりません。私には本当に何のことなのかわからないのですよ。もし仮にそのような事実があるとすれば部下の独断だとしか……」

 なにぶん私を女だと舐めている者も多いですからと、エリーザは嘆息した。

「……すぐにこの場に全員を集めることはできるか?」
「……可能か不可能かと問われれば限りなく不可能に近いとしか」

 保証できるのは全体の半分ほどまでですとエリーザは苦笑した。
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