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第九章 夏季休業
死屍累々
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どこか遠くから人が慌ただしく動く音がいくつも聞こえる。
国王と宰相の2人は満ち足りたいい笑顔を浮かべた。
「……さて、それでは行くか」
「そうですね」
エリーザはその言葉と笑みに何か言い知れぬ不安を感じる。
「そのようなものを持って何を……」
エリーザがその質問を言い終わる前に2人は門の脇、兵士の詰所に向かって駆け出した。
「えっ……?」
「はっ?」
エリーザもギルガルドも、その他その場にいた者たちは予想外な2人の行動に一瞬思考が停止する。
「エルマン、骨がある者はどれほどいると思う?」
「そうですね……1人いれば良い方かと」
エリーザは我に返ると慌てて周囲に命令を降す。
「……追うぞ。いやな予感がする」
「「「「「はい」」」」」
エリーザの予感は当たっていた。
2人は兵士を見つけるや否や声を出す暇も与えずに短槍の石突、あるいは大槌で兵士たちを次から次へと昏倒させていく。
「……あんな奴らでも一応私の部下なんだがな」
言っていることとは裏腹にその声は明るい。
「そう言ってる割には嬉しそうですね」
「……それは、な。いつもがあれだとな……」
エリーザは明言を避け、言葉を濁す。
相手が誰であれ言質は取らせない。今の地位に就く前、ただの一兵士だったときに身につけた所施術だった。
「……気持ちはわかります」
今エリーザの周囲にいる者たちはエリーザに心酔している者も少なくなかった。
ただし、あくまでも上司としてであり、1人の女性としてはまったくもってモテない。悲しいことにエリーザに恋人ができたことはなかった。
「あいつらはいつもエリーザ様のありもしない事実をまるで真であるかのように語ってその名を地に落とそうとしていますし。エリーザ様が消えたところで自分たちが上に上がれるわけなどないというのに……」
なぜそのようなことがわからないのだと、1人の兵士が嘆くと周りがそれに賛同する。
「頭が特段切れるというわけでもなく、訓練を怠って碌に動けない奴が人の上に立って何になるというのでしょうね」
「……あいつらの視線は不愉快です。叶うことならば同じ空気を吸いたくもない」
視線を追わずともどこを見ているかなどすぐにわかると吐き捨てたのはエリーザと同じ数少ない女兵士だった。
そのあまりの言われように思わずエリーザは苦笑する。
「そうだな。あいつらは責任の何たるかをわかっていない」
当然のことの如く快く思っていない者たちを介抱しようなどと考える酔狂な者は存在せず、倒れている者たちは運の良い者でその場に放置、悪い者になると進行の邪魔だと蹴り飛ばされた挙句後続の者に再度蹴られる、または踏みつけられ、確実にその怪我の数を増やしていた。
ただでさえ女性でも金属製の鎧を身に着けた人間は重いのだ。それが男性ともなるともはや凶器と呼ぶことすらおこがましい。
エリーザたちが通り過ぎた後には愚かな者たちが死屍累々といった体で転がっていた。
ただ、そのような目にあっても奇跡的に死者は出なかったとだけここに明記しておく。
国王と宰相の2人は満ち足りたいい笑顔を浮かべた。
「……さて、それでは行くか」
「そうですね」
エリーザはその言葉と笑みに何か言い知れぬ不安を感じる。
「そのようなものを持って何を……」
エリーザがその質問を言い終わる前に2人は門の脇、兵士の詰所に向かって駆け出した。
「えっ……?」
「はっ?」
エリーザもギルガルドも、その他その場にいた者たちは予想外な2人の行動に一瞬思考が停止する。
「エルマン、骨がある者はどれほどいると思う?」
「そうですね……1人いれば良い方かと」
エリーザは我に返ると慌てて周囲に命令を降す。
「……追うぞ。いやな予感がする」
「「「「「はい」」」」」
エリーザの予感は当たっていた。
2人は兵士を見つけるや否や声を出す暇も与えずに短槍の石突、あるいは大槌で兵士たちを次から次へと昏倒させていく。
「……あんな奴らでも一応私の部下なんだがな」
言っていることとは裏腹にその声は明るい。
「そう言ってる割には嬉しそうですね」
「……それは、な。いつもがあれだとな……」
エリーザは明言を避け、言葉を濁す。
相手が誰であれ言質は取らせない。今の地位に就く前、ただの一兵士だったときに身につけた所施術だった。
「……気持ちはわかります」
今エリーザの周囲にいる者たちはエリーザに心酔している者も少なくなかった。
ただし、あくまでも上司としてであり、1人の女性としてはまったくもってモテない。悲しいことにエリーザに恋人ができたことはなかった。
「あいつらはいつもエリーザ様のありもしない事実をまるで真であるかのように語ってその名を地に落とそうとしていますし。エリーザ様が消えたところで自分たちが上に上がれるわけなどないというのに……」
なぜそのようなことがわからないのだと、1人の兵士が嘆くと周りがそれに賛同する。
「頭が特段切れるというわけでもなく、訓練を怠って碌に動けない奴が人の上に立って何になるというのでしょうね」
「……あいつらの視線は不愉快です。叶うことならば同じ空気を吸いたくもない」
視線を追わずともどこを見ているかなどすぐにわかると吐き捨てたのはエリーザと同じ数少ない女兵士だった。
そのあまりの言われように思わずエリーザは苦笑する。
「そうだな。あいつらは責任の何たるかをわかっていない」
当然のことの如く快く思っていない者たちを介抱しようなどと考える酔狂な者は存在せず、倒れている者たちは運の良い者でその場に放置、悪い者になると進行の邪魔だと蹴り飛ばされた挙句後続の者に再度蹴られる、または踏みつけられ、確実にその怪我の数を増やしていた。
ただでさえ女性でも金属製の鎧を身に着けた人間は重いのだ。それが男性ともなるともはや凶器と呼ぶことすらおこがましい。
エリーザたちが通り過ぎた後には愚かな者たちが死屍累々といった体で転がっていた。
ただ、そのような目にあっても奇跡的に死者は出なかったとだけここに明記しておく。
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