こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

誤解、あるいはアルフォードの災難

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 船の最下層の一室、騒がしい声がだんだんと近づいてくるのを耳にし、レリオンたちはやっと来たかとでも言うようにある者は肩をすくめ、またある者は息を吐いた。

「あ、あのお嬢様が……」

 ただ1人、メアリーだけは感極まったか涙を流していたが。

「お、おい。どうした!?」

 そのことを誰よりも先に気づいたダスケルがギョッとしたように目を見開く。

「お嬢様が、お嬢様があんなに楽しそうに話されうなんて……」

 声が近づいてきたことではっきりと聞き取れるようになった言い争いだとしか思えないやり取りとメアリーの言葉に、どこが楽しそうなんだと首を傾げる者、王族相手に何やってるんだと顔色を変える者、反応は様々だった。

ガチャリ

 部屋のドアが開き、部屋の中を見たマリアたち3人は固まった。

「「「……えっ?」」」

 泣き腫らし目が赤くなっているメアリー、その背中を優しくさすってやっているレリオン、その傍で顔色を変えて頭を抱えているギルガルドたち4人、そして我関せずといった様子でそんな4人を不思議そうに見ているアルフォード。

「いったい何が……?」

 一言で言えばカオスな状況を理解することは不可能だった。

「……誰なの? メアリー」

 エーアリアスは体の硬直が解けるとメアリーに駆け寄った。

「えっ?」
「誰が、誰がメアリーを傷つけたの?」

 メアリーを見上げるエーアリアスの眼差しは真剣で、メアリーは思わず言葉をつまらせた。

「き、傷つけられてなど……」

 エーアリアスは静かに首を横に振った。

「わかってるの」

 そう言って微笑むとエーアリアスは身を翻し1人だけ離れた位置にいたアルフォードの方にゆっくりと歩いていく。
 メアリーは止めようと腕を伸ばすが、それは穏やかな微笑を浮かべ目を細めたレリオンに肩を引き寄せられ止められた。ギルガルドたちは周りの様子が目に入っておらず、またマリアはまだ入り口で固まっており、その歩みを止める者はいない。アルフォード自身も首を傾げるだけだ。
 両者の距離が後数メートほどになった時だった。不意にエーアリアスは床を強く蹴って駆け出した。

「この!」

 アルフォードとの距離を一気に詰めたエーアリアスは目を大きく見開くアルフォードの腹に普段運動らしい運動もしていないであろう王女とは思えないほど鋭い蹴りを放つ。
 咄嗟に避けることができるはずもなく、痛みにアルフォードは腹を押さえ膝をつく。

「アル!」

 そこでようやくマリアが我に返る。

「メアリーに何をしたの? サッサと吐くの」

 マリアが駆け寄るまでの間に、エーアリアスはアルフォードを押し倒し、腹の上に乗るとどこからか取り出した短剣を首筋に突きつけていた。
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