こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
431 / 464
第九章 夏季休業

謁見(2)

しおりを挟む
 国王はマリアの疑問には答えず、何かを懐かしむように目を細めた。

「マリア、そなたの父君は──アランは息災か?」
「っ!?」

 国王の口から出るはずのない言葉、その上、会ったことがあるような口振りにマリアは息を飲む。

「なぜ……なぜ、私とお父さんの名前を知っているのかお訊きしても良いですか?」

 その言葉は僅かに震えていた。

「……そなたの父とは昔、親しき仲であった。一度だけだが、年端もいかぬそなたを伴ってきたことがあった」

 そなたは覚えておらぬようだがと、国王は笑う。

「もう何年も会っておらぬのだが、息災か?」

 その言葉で既視感の正体がわかり、マリアはハッと目を見開いた。
 細められた国王の眼差しは優しく、まるでマリアを通してかつての思い出を思い出しているようだった。

「お、お父さんは6年ほど前に亡くなりました」

 極力震えないようにと、限界まで努力した声は、酷く重い響きを持っていた。

「……そうか」

 国王は目を伏せ、短くそう呟いただけだった。

「陛下、火急の用についてお話させていただいてもよろしいでしょうか?」

 重い空気を打ち破るように、そうエーアリアスが口を開くと、国王は僅かな逡巡の後頷いた。

(リア、普通に話せたんだ)

 マリアは変なところに感心していた。

「お話、というのはまさにそのマリアの父君に関することです」
「ほう」

 エーアリアスは目でマリアに問題のネックレスを出すように言った。

「……それは?」

 マリアはエーアリアスの手にネックレスが渡った瞬間、国王の表情が僅かに強張ったのを見逃さなかった。

「お父さんの遺品です」
「これが我が国の、エーデルの王族の持ち物であることは私が確認しております。そして現在消息が不明な王族は叔父様、アラニウス・フィン・エーデル王弟殿下のみです。私はこれが叔父様のものではないかと思っております」

 だって、他のものは持ち主の死とともに、同じ墓に収められているはずですからと、エーアリアスは言葉を続けた。
 はっきりとした言葉に国王は目をそっと閉じる。

「そなたの申す通り、それはアラニウスのもので間違いない」

 国王は静かにそう肯定する。

「それではこれは叔父様からなんらかの理由で奪われたものだと?」
「それも違う」
「えっ? それはどういう……」

 国王は答えず、マリアだけを残して全員に退出するように言った。当然のごとく、警護の騎士たちはそれに渋る態度を見せた。身元もはっきりしない者と2人っきりにするわけにはいかないと。

「それでは、これから話すことを墓場まで持っていく覚悟がある者は残っても良い。それで良いだろう?」

 国王は溜息を吐きながら妥協案を出した。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...