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第九章 夏季休業
それはなんの変哲もない日々の記憶
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マリアは気づいた時には見知らぬ街に立っていた。街全体が霞がかかったように白く、マリアには周囲が奇妙にぼやけている。
(ここ、どこ……? それにさっきまで国王様とお話していたはず……)
必死に思い出そうとするが、国王と話していたところまでで記憶は途切れていた。
「マリア、どうしたの? いきなり立ち止まったりして。帰るわよ。家でお父さんが首を長くして待っているわ」
不意に自分の名前を呼ばれ振り返ると、母親が──エレナがマリアの記憶の中にあるものより幾分か若い姿で立っていた。
「なんでもにゃい。はやくかえりょう」
マリアの意志とは関係なく動く口から紡がれたのは舌足らずな言葉だった。
「そう?」
エレナは少し不思議そうに首を捻った後、マリアと手を繋いでゆっくりと家に向かって歩いていった。
「ただいま」
「お帰り」
2人を出迎えたのは20代半ば程の男性だった。顔立ちにどこかエーデル国王と似た雰囲気がある。
「少し早いけど、もう夕飯できるぞ」
「ホントっ!?」
「ああ。手を洗ってこい」
目を輝かせるマリアに男は苦笑しながら、優しい手つきでマリアの頭をなでた。
「うん! わかった!」
トテトテと小走りで手を洗いにいくマリアを、残された2人は顔を見合わせてどちらかともなく笑いあった。
「おとうしゃん、ゆうはん、きょうはにゃに?」
皆が食卓につくと、待ちきれないのかまだ何も乗っていない食卓に身を乗り出し、キラキラと輝く瞳で父親を、アランを見つめた。
「今日はな、マリアが好きな……」
「マリュアがしゅきな……?」
マリアはゴクリと唾を飲みこんだ。
「……ギロトンだ。だいぶ寒くなってきたからな」
「ホントっ!?」
アランは歓声を上げて喜ぶマリアに優しく笑いかけると、火が点きっぱなしだったオーブンからサイズの違う耐熱皿を3枚取り出した。丁度良い具合に表面に焼き色が入り、芳ばしい香りが部屋に広がる。
「わぁ~」
「熱いから、皿に直接触れないようにな」
「うん! わかってる」
マリアは小さな手を合わせると、これまた小さなフォークを手に取った。
「おいしゅいの」
口元で息を吹きかけ十分に冷ました後、一口食べた瞬間、マリアは顔をほころばせた。
「おとうしゃんはおりょうりゅがおじょうじゅなの」
「そんなことないさ。父さんだってプロの料理人には敵わないよ」
「しょんにゃことにゃいの。マリュアもおとうしゃんみちゃいに、おりょうりゅできりゅようににゃりたい」
(ここ、どこ……? それにさっきまで国王様とお話していたはず……)
必死に思い出そうとするが、国王と話していたところまでで記憶は途切れていた。
「マリア、どうしたの? いきなり立ち止まったりして。帰るわよ。家でお父さんが首を長くして待っているわ」
不意に自分の名前を呼ばれ振り返ると、母親が──エレナがマリアの記憶の中にあるものより幾分か若い姿で立っていた。
「なんでもにゃい。はやくかえりょう」
マリアの意志とは関係なく動く口から紡がれたのは舌足らずな言葉だった。
「そう?」
エレナは少し不思議そうに首を捻った後、マリアと手を繋いでゆっくりと家に向かって歩いていった。
「ただいま」
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「ああ。手を洗ってこい」
目を輝かせるマリアに男は苦笑しながら、優しい手つきでマリアの頭をなでた。
「うん! わかった!」
トテトテと小走りで手を洗いにいくマリアを、残された2人は顔を見合わせてどちらかともなく笑いあった。
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皆が食卓につくと、待ちきれないのかまだ何も乗っていない食卓に身を乗り出し、キラキラと輝く瞳で父親を、アランを見つめた。
「今日はな、マリアが好きな……」
「マリュアがしゅきな……?」
マリアはゴクリと唾を飲みこんだ。
「……ギロトンだ。だいぶ寒くなってきたからな」
「ホントっ!?」
アランは歓声を上げて喜ぶマリアに優しく笑いかけると、火が点きっぱなしだったオーブンからサイズの違う耐熱皿を3枚取り出した。丁度良い具合に表面に焼き色が入り、芳ばしい香りが部屋に広がる。
「わぁ~」
「熱いから、皿に直接触れないようにな」
「うん! わかってる」
マリアは小さな手を合わせると、これまた小さなフォークを手に取った。
「おいしゅいの」
口元で息を吹きかけ十分に冷ました後、一口食べた瞬間、マリアは顔をほころばせた。
「おとうしゃんはおりょうりゅがおじょうじゅなの」
「そんなことないさ。父さんだってプロの料理人には敵わないよ」
「しょんにゃことにゃいの。マリュアもおとうしゃんみちゃいに、おりょうりゅできりゅようににゃりたい」
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