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第九章 夏季休業
それはなんの変哲もない日々の記憶(6)
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「まあ良い。嬢ちゃん、サイズを見たいから手を出してくれるか?」
小柄と言っても幼い子どもと比べれば身長はだいぶ違う。グラントはしゃがんで目線を合わせると、メジャーを片手にそう尋ねた。
「う、うん」
おずおずと差し出された手を取ると、グラントは丁寧に、それでいて手早く必要な数値を取っていく。
「この手の大きさだと、持ちやすさを限界まで追求しても持つのが大変になると思うが良いか?」
「材料を工夫してもか?」
「一応ミスリルを使うっていう手もあるが、今手持ちがねぇんだよ。どうしてもって言うなら自分で採ってきてくれ」
まさかの無茶振りにアランは目を瞬かさせる。マリアも不穏な空気を感じ取ったのか顔を曇らせた。
「ミスリルっていうとこの辺りだとどこが近い?」
「確実性を求めるならホランドだな」
アランは少し考え込むと、マリアを抱え上げながら言った。
「じゃあこれから採ってくるから、できる準備だけしておいてくれ」
「まさかこれから行くのかっ!?」
「当然だろ?」
何を言ってるんだと、アランは冷ややかな眼差しを向ける。
「……嬢ちゃんも連れていくのか?」
「流石に置いていくつもりだ「ヤッ! マリュアもいくにょ。」……危ないところに行くから連れていけないんだ」
思わぬマリアの駄々っ子に、アランは困ったように笑った。
「マリュアもいくにょ」
「あまり無茶を言うな。母さんとの約束だってあるんだ」
「おとうしゃんがね、かってにしたやくしょくなんてね、マリュアはしらないにょ」
グラントは声を出して笑いだした。
「おい、笑うことはないだろ?」
「いや、子どもに1本取られてるのが面白くてついな」
おとなしく負けを認めて連れていってやれと続ける。
「はぁ。マリア、絶対に父さんの言ったことを守れるか? 少しでも破ったら街に強制送還だからな」
「うん! おとうしゃん、ありゅがとう」
マリアは満面の笑みで父親を見上げた。
「流石に《神速》のアランも、娘には勝てないってことか」
「その名前で呼ぶのはやめてもらえるか?」
アランは軽く顔をしかめた。そして次の瞬間、顔から一切の表情が消えた。
「その名前で呼ぶことがどういう意味か、お前は知ってるよな?」
目にも何も表情をうつしておらず、グラントはゴクリと唾を飲みこんだ。
「おとうしゃん、こわいかお、しちゃヤッ! なのよ?」
胸にしがみつく弱々しい力と震える声に、瞬時に表情が戻る。
「ああ、ごめんな。怖い思いをさせちゃって」
アランは震えるグラントを軽く一瞥すると、口の動きだけで一言告げてそのまま店を出ていった。
「……『命拾いしたな』、か」
グラントは他に誰もいない店内で、ポツリと呟いた。
「それにしてもあいつの異名嫌いはどこから来てるんだろうな」
そんな疑問は誰に聞かれるわけでもなく、周囲の空気に溶けて消えた。
小柄と言っても幼い子どもと比べれば身長はだいぶ違う。グラントはしゃがんで目線を合わせると、メジャーを片手にそう尋ねた。
「う、うん」
おずおずと差し出された手を取ると、グラントは丁寧に、それでいて手早く必要な数値を取っていく。
「この手の大きさだと、持ちやすさを限界まで追求しても持つのが大変になると思うが良いか?」
「材料を工夫してもか?」
「一応ミスリルを使うっていう手もあるが、今手持ちがねぇんだよ。どうしてもって言うなら自分で採ってきてくれ」
まさかの無茶振りにアランは目を瞬かさせる。マリアも不穏な空気を感じ取ったのか顔を曇らせた。
「ミスリルっていうとこの辺りだとどこが近い?」
「確実性を求めるならホランドだな」
アランは少し考え込むと、マリアを抱え上げながら言った。
「じゃあこれから採ってくるから、できる準備だけしておいてくれ」
「まさかこれから行くのかっ!?」
「当然だろ?」
何を言ってるんだと、アランは冷ややかな眼差しを向ける。
「……嬢ちゃんも連れていくのか?」
「流石に置いていくつもりだ「ヤッ! マリュアもいくにょ。」……危ないところに行くから連れていけないんだ」
思わぬマリアの駄々っ子に、アランは困ったように笑った。
「マリュアもいくにょ」
「あまり無茶を言うな。母さんとの約束だってあるんだ」
「おとうしゃんがね、かってにしたやくしょくなんてね、マリュアはしらないにょ」
グラントは声を出して笑いだした。
「おい、笑うことはないだろ?」
「いや、子どもに1本取られてるのが面白くてついな」
おとなしく負けを認めて連れていってやれと続ける。
「はぁ。マリア、絶対に父さんの言ったことを守れるか? 少しでも破ったら街に強制送還だからな」
「うん! おとうしゃん、ありゅがとう」
マリアは満面の笑みで父親を見上げた。
「流石に《神速》のアランも、娘には勝てないってことか」
「その名前で呼ぶのはやめてもらえるか?」
アランは軽く顔をしかめた。そして次の瞬間、顔から一切の表情が消えた。
「その名前で呼ぶことがどういう意味か、お前は知ってるよな?」
目にも何も表情をうつしておらず、グラントはゴクリと唾を飲みこんだ。
「おとうしゃん、こわいかお、しちゃヤッ! なのよ?」
胸にしがみつく弱々しい力と震える声に、瞬時に表情が戻る。
「ああ、ごめんな。怖い思いをさせちゃって」
アランは震えるグラントを軽く一瞥すると、口の動きだけで一言告げてそのまま店を出ていった。
「……『命拾いしたな』、か」
グラントは他に誰もいない店内で、ポツリと呟いた。
「それにしてもあいつの異名嫌いはどこから来てるんだろうな」
そんな疑問は誰に聞かれるわけでもなく、周囲の空気に溶けて消えた。
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