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始まりの章・再起してから奮起するまで
8. 任務成功 ※サムソンのその後
しおりを挟む答えが出ないまま、ミカエラの滞在日は最終日になった。
最終日当日
彼女はサムソンにかけた魅了の魔法の全てを解いて、何も言わずに姿を消した。
彼女に骨抜きになっていたサムソンは夢から醒めたように正気に戻り、純粋な恋心と失着心で彼女を探した。だがどんなに探そうとしても”マリアンヌ”の姿を思い出せない。顔も声も何も出てこなくなっていた。
「僕のマリアンヌがいない。なんで、どうして…そうだ、父上なら彼女を知っているはずだ!」
しかし、カイデン公爵は彼女の存在を最初からいなかったものとして否定した。
「嘘だ。僕のマリアンヌは確かにいたんだ。愛する僕だけの…」
「お前が何を言っているのかわからないが、古い友人の娘でマリアンヌは存在しない。」
「嘘だ、嘘だ。マリアンヌ、マリアンヌは確かにいたんだ!!彼女だけは僕をみてくれた!!」
捨てられた子犬のように、サムソンは泣きながらミカエラの面影を探したが、当然見つかるはずがなかった。
彼女は滞在中屋敷から一歩もでなかった為、友人たちに聞いてもマリアンヌはマリアンヌ王女のことだと誰もが思っていた。
屋敷の使用人たちも緘口令をしかれていて、しらばっくれる。
これまでいた恋人たちは誰もいなくなっており、彼を慰めるものはいない。
あれだけ熱烈に「マリアンヌ」への愛をこぼしていた彼の元に集まる女性もいない。
「嘘だろ…マリアンヌは夢だった…?」
誰もサムソンの言うマリアンヌを理解してくれない現実と、これまで女性関係で失敗したことのなかったサムソンは、大いに混乱し錯乱までした。
「違う、マリアンヌは確かに存在したはずなんだ…いや、僕が狂ったのか…?」
誰も彼の言葉を肯定してくれない。居もしない少女は、彼がどれだけ語っても探しても証明されない。
ぽっかり空いた心はどうやっても埋まらず、彼の心を孤独が襲う。
彼は次第に人の目が怖くなり、自分が信じられなくなって引きこもった。
「痛ましいが、息子よ。お前の為なんだ…。」
カイデン公爵は息子を哀れに思いながらも、公爵家の未来のために口を噤んだ。
彼が独りきりになり、どれくらい経っただろうか。
屋敷に引きこもり、ひたすらマリアンヌ、マリアンヌと口にする彼の元にマリアンヌ王女は現れた。
彼がこれまで送った手紙や贈り物を見せて、慈愛の笑みを浮かべて彼を抱きしめる。
「可哀そうなサムソン。貴方のマリアンヌはここにいるわ。」
「マリアンヌ?マリアンヌは存在するのか?」
その目にマリアンヌ王女は映っていない。それでも王女は嬉しそうに彼を抱きしめた。
「えぇ、そうよ。私があなたのマリアンヌよ。もう離さないから…」
「僕のマリアンヌ!!…あれ?いや、よかった。そうだマリアンヌはここに”いる”んだ。」
女ったらしの公爵の息子は、その日からマリアンヌ王女以外に誰も寄せ付けなくなってしまった。
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