自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第669話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(30階) 犯人の情報

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 その夜。
 竜の卵を温めてもらうためシルバーを呼び出したところ、ダンジョン攻略中はテントで従魔と寝ている兄と旭がセイさんと再び家に来た。

「沙良、竜の卵がかえるまでしばらく俺達はここで寝る」

 そう言って兄達は泊まる気らしい。
 魔力を吸収されると昏倒するから、無防備な状態で寝てしまう私が心配なんだろう。

「ホーム内は、私達以外いないから大丈夫だと思うけど……」

「いや、意識を失った状態で頭を打ったら大変だ」

 あぁ、それは自分でもどうにも出来ないか……。
 前回は兄が倒れる寸前で受け止めてくれたようだし。

「じゃあ、布団を敷いておくね」

 私は空いている部屋に、3人分の布団を用意しリビングへ戻った。
 するとシルバーが兄と旭を前足で指し、次にポシェットをくわえる仕草しぐさをする。 
 何かを伝えようとしているみたいだけど……、直訳なら兄と旭をマジックバッグに入れる?
 でも生き物は入らないから、この場合はアイテムBOXに収納するって意味かな?
 そう聞くと、頭をブンブンと横に振られた。
 違うのか……、シルバーは困ったように項垂うなだれてしまう。
 すると兄が口を開いた。

「フォレストと山吹やまぶきを呼んでほしいと言ってるんじゃないか?」

 私がそうなの? と尋ねると、シルバーは勢い良く首を上下に振った。
 兄達が従魔と一緒に寝ているのを知っているから、気を使ってくれたのね。
 私はシルバーの心遣いに感心しながら、安全地帯のテント内へ移転しフォレストと山吹やまぶきを連れてきた。
 従魔が多くなったので、そろそろテントを増やした方がいいかなぁ。
 竜の卵を取り出し手を触れると急速に意識が遠ざかる。 
 体がかしぐ寸前、兄に優しく抱き留められた記憶を最後に寝てしまった。
 
 翌日、火曜日。
 起きてリビングへ行くと、兄と旭は従魔にもたれながら寝ていた。
 寒くないよう、きっとセイさんが上に布団を掛けてくれたんだと思うけど……。
 何故なぜ、セイさんが兄の隣で一緒に寝ているんだろう?
 ちゃんと布団を敷いておいたのに、旭が見たら嫉妬しっとしないかしら……。
 私は旭を起こさないよう、2人の体を揺すって目覚めをうながした。
 兄は起きてから隣にいるセイさんに気付くと溜息を吐き、まだ目覚めない彼を放置し立ち上がるとソファーへ移動する。

 兄に驚いた様子がない。
 もしかして、今までも同じような事があったの?
 かなり気になるけど2人がいつ起きるか分からないから、この場で聞くのは躊躇ためらわれた。
 結局、私の疑問は解決しないまま朝食を食べ終わり、ダンジョン攻略へ向かう。
 迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯のテントから出て、ダンクさんとアマンダさんパーティーに挨拶し、それぞれ攻略開始。

 地下16階に移動し果物の採取を済ませたら、地下7階へ移転し槍のLv上げだ。
 今日は投擲とうてき練習をしようと、ターンラカネリの槍を取り出す。
 それを見た3人が苦笑しているけど、練習しないと上達しないでしょ!
 向かってくるミノタウロスへ充分な距離から槍を投げつける。
 槍は魔物に当たらず、そのまま後ろの壁に突き刺さった……。
 シルバーが見越したのか、アイスボールをミノタウロスの眉間に撃ち仕留めてくれた。

 槍が一瞬光り、手元に戻ってくる。
 このままだと武器の性能が活かせないな。
 動いている魔物の相手に無双出来る日はくるんだろうか……。
 3時間後、さしたる成果もなく地下15階の安全地帯に戻ってきた。
 テントからホームに帰り実家で母の作った昼食を食べる。

 午後からは、シュウゲンさんを連れ摩天楼まてんろうの冒険者ギルドへ。
 昨日の結果が早く知りたいため、攻略を中止し一番情報が集まる場所に来たのだ。
 何か通達が出ていないかと、冒険者ギルド内の壁を見る。
 すると犯人が捕まった情報が羊皮紙に書かれていた。
 ダンジョン内に呪具を設置しようとしたアシュカナ帝国人を、30階で18人捕縛したとある。
 18人だと3パーティーの冒険者が潜入していたのか。
 他にもいる可能性があるので、不審な人物を見かけたら報告してほしいと注意書きがあった。
 カルドサリ王国を攻めるなら、摩天楼のダンジョンが本命に違いない。
 
 ここにはA級冒険者以上が多くいる。
 戦力をぐ目的なら一番効率がいいのは確かだ。
 だとすれば、18人じゃ敵の数が少ないように思う。
 SS級冒険者ならもっと深層を攻略しているから、他にも拠点がありそう。
 それとも、最初からSS級冒険者は除外しているんだろうか?
 Lvが高い冒険者相手はリスクがある割に成功する可能性が低い。
 羊皮紙を見ながら考え事をしていると、目の下にくまがある受付嬢が呼びにきた。
 
「ギルマスから、お話があるそうです」
 
 昨日は寝ていないのか、顔に随分ずいぶん疲れが出ている。
 しんどそうな受付嬢に案内され部屋へ入ると、ヒューさんが険しい表情で待っていた。
 私達が部屋へ入ると直ぐに立ち上がり一礼する。

「サラさん、お待ちしていました。昨夜、犯人を30階で18人確保しましたが全員ではないようです。あれからマジックバッグの中身を精査した所、姿変えの魔道具が54個見付かりました。それを考えると、まだ36人の帝国人が摩天楼のダンジョンに潜伏しているとみて間違いないでしょう。その……サラさんは冒険者資格がないのでダンジョンを攻略しないと思いますが、摩天楼の都市にいる間は充分注意を払って下さい。引き続きギルドでは残りの犯人確保に尽力じんりょく致します」

「まだ36人も敵が残っているんですね。大変だと思いますが、頑張って下さい」

「はい。サラさんが安心して観光・・出来るよう、早急に摩天楼の都市を安全な状態に戻します」

 あぁ、そういえば私は摩天楼で観光している事になっているんだっけ。
 結構長い間、滞在してると思われているんだろうな。
 最後にヒューさんは、ちらりとセイさんの方を見て頭を下げた。
 情報が分かったところで、お礼を言い部屋から出る。
 さて、36人の帝国人は何処どこにいるのかしら?

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