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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第670話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(50階) 犯人の追跡 1
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ギルドを出て、私はこれからどうしようかと考える。
敵がまだ36人いるなら、他の階層にも同様の隠れ家があるかも知れない。
その場所は何処?
「お父さん。犯人達がまだ多く残っているみたいだけど、このまま何もせず諦めると思う?」
「いや、それはないだろう。思った以上に人数が多いから充分罠を仕掛けられる。30階の隠れ家を潰し呪具を回収しておいたのは正解だったな。相手はこちらの動きに気付いている。となると危険を顧みず一番効果的な方法を選びそうだ」
「それは戦力として高い人間を狙うという事?」
「あぁ、俺だったら迷わずそうする」
「セイさん、SS級冒険者が一番多くいる階層は50階ですか?」
「そうだと思います」
アシュカナ帝国人が、あくまでも直接冒険者と対峙せず呪具の設置を考えているのなら、被害を最小限に抑える方法がある。
呪具の効果を発揮するには、魔物が必要な事が大前提だ。
何もない道端に呪具を設置した所で意味はない。
冒険者や帝国人が知らない事実を私は知っていた。
魔物の出現は数が決まっている。
これは、階層を全滅させた経験があるから分かる事だ。
普通は1パーティーだけで、出現している魔物を全滅させるのは無理だろう。
全ての魔物を全滅させると、一定時間魔物は出現しなくなる。
要は呪具を設置されても、その中に入る魔物がいなければいい。
「お兄ちゃん。ちょっと方法を思い付いたんだけど、聞いてくれる?」
「沙良。今回、俺達は介入しないと決めただろう」
「うん、分かってる。けど何もしないで被害が出るのは嫌なの。大丈夫、危険はないから!」
そう言って、私は思い付いた方法を皆に話した。
「安全地帯のテント内から、魔物を全滅させるだけか……。それならまぁ、特に問題ないか?」
話を聞いた兄が考える素振りをみせる。
「呪具を設置しても効果がないようにするのはいい方法だな。それなら、敵も動揺しボロを出しやすい」
父は私の意見に賛成のようだ。
「なに、怪しい人物がおれば儂が捕まえてやるから安心せい」
シュウゲンさんの頼もしい発言に後押しされ、過保護な兄も承諾する。
そうと決まれば早速行動しよう。
「じゃあ、50階に移転するね!」
50階の安全地帯へ到着するなり、素早くテントを設置して中に入る。
私はマッピングで索敵した魔物を、瞬時にアイテムBOXへ収納していった。
時間が惜しいので倒さず生きたままだ。
10分後、50階層に出現する魔物はいなくなった。
呪具が設置される前か後かは不明だけど、これで魔物の被害は避けられる。
後は不審人物を発見するだけという所で3時間経過。
迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯のテントからホームへ帰り、樹おじさん達に帝国人が18人捕まった話を伝えた。
まだ36人の犯人がダンジョン内にいると知ると、樹おじさんの目付きが鋭くなる。
「それはそれは……。結花、雫と2人でも大丈夫だよな?」
「ええ、問題ないわ」
「という訳で、俺も一緒に摩天楼のダンジョンへ行くからよろしく!」
樹おじさんの笑顔が怖い。
雫ちゃん達は、Lv40になっているから2人でも大丈夫だと思うけど……。
休憩を済ませ、樹おじさんを連れ摩天楼ダンジョン50階のテント内に戻った。
私と兄と旭はテント内で待機し、それ以外のメンバーが安全地帯を出ていく。
樹おじさん以外は、Lvが高いメンバーばかりなので心配はないだろう。
でも気になるから、マッピングで様子見をした方がいいよね。
私が魔物を全て回収してしまったので、冒険者達は攻略を中止し続々と安全地帯に戻ってきている。
もし犯人がいるのなら、予想外の出来事で計画に支障が出た筈だ。
一度、対策を練るため隠れ家へ移動するのではと踏んでいる。
私は不自然な動きをしている冒険者を探すのに専念した。
安全地帯に戻らず、別方向へ移動する冒険者の姿は目立つ。
シルバー達にも、安全地帯から離れていく冒険者の後を追うようお願いしておく。
30分後、明らかに動きのおかしい2組の冒険者を発見する。
シルバーに居場所を伝え、追跡を開始してもらった。
樹おじさんは騎獣であるフォレストウサギのマリーを迷宮都市の安全地帯へ置いてきたから、現在シルバーに乗っている。
動きの変わったシルバーに気付き、メンバー達にハンドサインを送っていた。
私は犯人達を見付けたと兄達に知らせ、その後の動きをじっと見つめる。
50階は再び森のダンジョンになっていた。
犯人達は森の中を迷いなく進み、大きな木のある場所で停止する。
そして1人ずつ木の中に入っていった。
どう考えても12人が入るには無理がありそうな木だけど……。
もしかして、空間魔法で中を拡張していたりするんだろうか?
洞窟内ではなく木の中を隠れ家にしていたらしい。
こちらも目くらましの魔法が掛かっているのか、入り口は分からないようになっていた。
どう伝えようか悩んでいると、後を追っていたシルバーが木を前足で叩く仕草をする。
その瞬間、セイさんが火魔法を使い木を燃やし始めた。
黒い炎がメラメラと燃え上がる。
これは犯人達も堪らないだろう。
中に居続ければ蒸し焼きになってしまう。
這う這うの体で燃え上がる木の中から出てきた所に、仁王立ちしたシュウゲンさんと父達が立ちはだかった。
正体を知られたと気付いた犯人達が一斉に剣を抜き、祖父達へ襲い掛かる。
12人対5人。
普通に考えたら、うちのパーティーが不利な状況だけど5匹の従魔を合わせれば数に差はない。
まぁアイテムBOXに収納する簡単な方法も使えるけど、皆やる気満々だから見守ろう。
5分後に立っている犯人は1人もいなかった。
全員が武闘派だしね~。
特にシュウゲンさんとセイさんに奏伯父さんは別格だ。
樹おじさんは活躍出来ず不満そうな表情で、犯人達に縄を掛けていた。
これで残りは24人。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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敵がまだ36人いるなら、他の階層にも同様の隠れ家があるかも知れない。
その場所は何処?
「お父さん。犯人達がまだ多く残っているみたいだけど、このまま何もせず諦めると思う?」
「いや、それはないだろう。思った以上に人数が多いから充分罠を仕掛けられる。30階の隠れ家を潰し呪具を回収しておいたのは正解だったな。相手はこちらの動きに気付いている。となると危険を顧みず一番効果的な方法を選びそうだ」
「それは戦力として高い人間を狙うという事?」
「あぁ、俺だったら迷わずそうする」
「セイさん、SS級冒険者が一番多くいる階層は50階ですか?」
「そうだと思います」
アシュカナ帝国人が、あくまでも直接冒険者と対峙せず呪具の設置を考えているのなら、被害を最小限に抑える方法がある。
呪具の効果を発揮するには、魔物が必要な事が大前提だ。
何もない道端に呪具を設置した所で意味はない。
冒険者や帝国人が知らない事実を私は知っていた。
魔物の出現は数が決まっている。
これは、階層を全滅させた経験があるから分かる事だ。
普通は1パーティーだけで、出現している魔物を全滅させるのは無理だろう。
全ての魔物を全滅させると、一定時間魔物は出現しなくなる。
要は呪具を設置されても、その中に入る魔物がいなければいい。
「お兄ちゃん。ちょっと方法を思い付いたんだけど、聞いてくれる?」
「沙良。今回、俺達は介入しないと決めただろう」
「うん、分かってる。けど何もしないで被害が出るのは嫌なの。大丈夫、危険はないから!」
そう言って、私は思い付いた方法を皆に話した。
「安全地帯のテント内から、魔物を全滅させるだけか……。それならまぁ、特に問題ないか?」
話を聞いた兄が考える素振りをみせる。
「呪具を設置しても効果がないようにするのはいい方法だな。それなら、敵も動揺しボロを出しやすい」
父は私の意見に賛成のようだ。
「なに、怪しい人物がおれば儂が捕まえてやるから安心せい」
シュウゲンさんの頼もしい発言に後押しされ、過保護な兄も承諾する。
そうと決まれば早速行動しよう。
「じゃあ、50階に移転するね!」
50階の安全地帯へ到着するなり、素早くテントを設置して中に入る。
私はマッピングで索敵した魔物を、瞬時にアイテムBOXへ収納していった。
時間が惜しいので倒さず生きたままだ。
10分後、50階層に出現する魔物はいなくなった。
呪具が設置される前か後かは不明だけど、これで魔物の被害は避けられる。
後は不審人物を発見するだけという所で3時間経過。
迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯のテントからホームへ帰り、樹おじさん達に帝国人が18人捕まった話を伝えた。
まだ36人の犯人がダンジョン内にいると知ると、樹おじさんの目付きが鋭くなる。
「それはそれは……。結花、雫と2人でも大丈夫だよな?」
「ええ、問題ないわ」
「という訳で、俺も一緒に摩天楼のダンジョンへ行くからよろしく!」
樹おじさんの笑顔が怖い。
雫ちゃん達は、Lv40になっているから2人でも大丈夫だと思うけど……。
休憩を済ませ、樹おじさんを連れ摩天楼ダンジョン50階のテント内に戻った。
私と兄と旭はテント内で待機し、それ以外のメンバーが安全地帯を出ていく。
樹おじさん以外は、Lvが高いメンバーばかりなので心配はないだろう。
でも気になるから、マッピングで様子見をした方がいいよね。
私が魔物を全て回収してしまったので、冒険者達は攻略を中止し続々と安全地帯に戻ってきている。
もし犯人がいるのなら、予想外の出来事で計画に支障が出た筈だ。
一度、対策を練るため隠れ家へ移動するのではと踏んでいる。
私は不自然な動きをしている冒険者を探すのに専念した。
安全地帯に戻らず、別方向へ移動する冒険者の姿は目立つ。
シルバー達にも、安全地帯から離れていく冒険者の後を追うようお願いしておく。
30分後、明らかに動きのおかしい2組の冒険者を発見する。
シルバーに居場所を伝え、追跡を開始してもらった。
樹おじさんは騎獣であるフォレストウサギのマリーを迷宮都市の安全地帯へ置いてきたから、現在シルバーに乗っている。
動きの変わったシルバーに気付き、メンバー達にハンドサインを送っていた。
私は犯人達を見付けたと兄達に知らせ、その後の動きをじっと見つめる。
50階は再び森のダンジョンになっていた。
犯人達は森の中を迷いなく進み、大きな木のある場所で停止する。
そして1人ずつ木の中に入っていった。
どう考えても12人が入るには無理がありそうな木だけど……。
もしかして、空間魔法で中を拡張していたりするんだろうか?
洞窟内ではなく木の中を隠れ家にしていたらしい。
こちらも目くらましの魔法が掛かっているのか、入り口は分からないようになっていた。
どう伝えようか悩んでいると、後を追っていたシルバーが木を前足で叩く仕草をする。
その瞬間、セイさんが火魔法を使い木を燃やし始めた。
黒い炎がメラメラと燃え上がる。
これは犯人達も堪らないだろう。
中に居続ければ蒸し焼きになってしまう。
這う這うの体で燃え上がる木の中から出てきた所に、仁王立ちしたシュウゲンさんと父達が立ちはだかった。
正体を知られたと気付いた犯人達が一斉に剣を抜き、祖父達へ襲い掛かる。
12人対5人。
普通に考えたら、うちのパーティーが不利な状況だけど5匹の従魔を合わせれば数に差はない。
まぁアイテムBOXに収納する簡単な方法も使えるけど、皆やる気満々だから見守ろう。
5分後に立っている犯人は1人もいなかった。
全員が武闘派だしね~。
特にシュウゲンさんとセイさんに奏伯父さんは別格だ。
樹おじさんは活躍出来ず不満そうな表情で、犯人達に縄を掛けていた。
これで残りは24人。
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