自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第789話 エンハルト王国 アマンダさんからの依頼 7 魔族への尋問

 依頼を受けたのが2週間前なら、巫女が青龍の声を聞けなくなった時期と異なる。
 青龍に関しては、また別の要因がありそうだ。
 少なくともアマンダさんが冒険者活動を始めた時期には、もう聞こえなくなっていたはず

「依頼したのはアシュカナ帝国の人間か?」

「……外見的特徴を見た限り間違いない」

 まぁ、依頼者も態々わざわざ出身国を言わないだろう。
 帝国人は特徴的な姿をしているから、分かりやすいけど……。

「お前の任務内容は?」

「……青龍の守護をなくす事だ」

「どうやって?」

「……巫女に成り代わった俺が、青龍との契約を破棄すればいい」

「巫女の資格を、お前が持っているとは思えないな。青龍は簡単にだまされないぞ?」 

「……契約の破棄は、青龍を殺せば成り立つ」

 不穏な内容に、聞いていた女王が殺気立った。
 
「いや無理だろ。こいつは弱すぎる。依頼者は、巫女と成り代わるのに重点を置いていたんじゃないか? 青龍と契約の破棄は出来ないと分かってて、口封じを兼ねていたかもな」

 いつきおじさんが、依頼内容をそう推測すいそくする。
 確かに目の前の魔族が青龍を殺せるとは思えない。
 
あかねちゃんは、聞き出すのが上手いなぁ。少し、俺も試してみよう」

 魔法を使用したと気付いたのか、樹おじさんが魅惑みわく魔法を試すと言う。
 
「お前の位は?」

「くそっ……言いたくないのに……。貴女が欲しい。好きでたまらない!」

 ……。
 質問とは違う答えが返ってきた。
 魔族の青年は、頬を高揚させ目をうるませている。
 何が起きているの?

「いや、そうじゃねぇ。位を聞いてるだろうが!」

「今直ぐ貴女を抱きたい!」

 そう言いながら青年が、樹おじさんの手をつかみ抱き寄せキスしようとした寸前、ガーグ老が割って入る。

「姫様。ヒビキ殿に、魅惑魔法は使用せんよう言われておらんかったかの」

「あ~そうなんだけど、やっぱり駄目か……」

「姫様は魅惑と誘惑を混同されているようだわ」

 ガーグ老が、やれやれといったように首を振り魔族の意識を失わせた。
 欲しい情報は茜が聞き出したので、問題ないだろう。
 
「王女様、敵の正体をあばいて下さりありがとうございます。我が国も対策する必要がありそうですね。少し休憩に致しましょう。客室へ、ご案内します」

 女王が事前に用意した部屋へ向かい、1時間の休憩となった。
 護衛達と女官長達の部屋は別に用意されているらしく、樹おじさんと私の部屋へ兄・茜・セイさんが集まる。
 一旦いったん、ホームに帰ろう。
 樹おじさんがガーグ老へ扉の外で待つようお願いしてくれたから、その間に皆がトイレを済ませた。
 
「魔族が巫女に成り代わってるなんて予想外だよ。しかもアシュカナ帝国が関係してるなんて……」

「青龍の巫女はさらわれてるしな。思ったより、エンハルト王国の内情は悪いみたいだ」
 
 私の言葉に兄が続く。

「アシュカナ帝国は教会だけじゃなく、魔族ともつながっているのかな?」

「多分、依頼をしただけでしょう。魔族は悪魔に近い存在なので、確実に願いを叶えるためには打って付けの存在です」

 疑問を口にすると、セイさんが答えてくれた。

「悪魔? 願い事と引き換えに魂を差し出すの?」

「この場合、対価となるのは魔力ですね。ステータス値の魔力を奪われるので、普通は魔族に依頼しないんですが……」

「それは一晩経っても回復しないという意味?」

「MP100の人がMP60を契約に使用すれば、その人のステータス値はMP40に変化します」

 それは、非常にリスクを伴う依頼方法だ。
 一度減ったMP値はLvを上げる事でしか増えない。

「魔族への依頼は、誰にでも出来るの?」

「召喚陣がなければ呼び出せません。知っている者は少ないでしょう」

 セイさんは、異世界生活が長いから知っているんだろうか?
 MPを対価に望みを叶えるなら、国と繋がっている訳じゃなさそう。
 契約者が誰であっても魔族は取引しそうだし……。

「樹おじさんが確認しようとしていたって何?」

「魔族にも階級があり、位の高さで強さも変わります。貴族と同じように、爵位を持っているんですよ。魔王が一番強いと思えば間違いありません。今回の魔族は子爵か男爵位ですね」

 いるんだ……魔王。
 勇者はどこに?

「あっ、樹おじさん。ヒルダさんのフリを忘れてるよ? 王女様らしく話さないと!」

「あぁヤバいっ! 女官長にしかられる……」

 演技が上手く出来なくても、怒られたりはしないと思うけど……。
 ただ王女が男性のように話すのは駄目だろう。
 もう散々聞かれてしまったから、女王とヴィクターさんは文献の情報が正しいと確信してるかも?
 10分ほどでホームから客室へ戻り、ガーグ老達と女官長達を部屋に入れる。
 用意された客室は貴賓きひん室なのか30畳くらいの広さがあった。
 2部屋の寝室と大きなリビングの造りになっている。

 待っている間、女官長が香り高い紅茶をれてくれた。
 私と樹おじさんだけは、高そうな茶器で出される。
 異世界では、かなり品質の良い紅茶なんだろう。
 甘い物が食べたかったけど、ここでケーキを出すのはまずいだろうなぁ。
 ロイヤルミルクティーが飲みたかったと思いつつ、ストレートティーを飲み干した。

「イツキ殿。少々、言葉遣いが乱れていましたよ。お気を付け下さい」

 飲み終わると同時に、おじさんが女官長から注意されていた。

「すみません。今後は気を付けます」

 樹おじさんは、殊勝しゅしょうな態度で女官長の言葉を受け止める。
 今更のような気がしなくもないけど、王女らしくした方がいいよね。
 
「青龍の声が聞こえなくなった件と魔族は関係なさそうだけど、何があったと思う?」

「巫女から話を聞きたかったが、いないと原因を探るのが難しいかもな」

 兄は、そう言って考え込む。

「巫女が資格を失ったと考えたら辻褄つじつまが合うんじゃないか?」

「巫女なのに、資格を失うような行為をするかしら? もし自覚があるなら、代替わりしてそうなものだけど……」

「本人に記憶がなければ、資格を失ったと気付かないかも知れない」

 兄の飛躍した予想に樹おじさんが小さく呟く。

「かなり痛いのに、覚えてないなんてあるのか?」

 まるで体験したかのような台詞だ。
 まぁ、初体験を忘れる女性はいないだろうな。
 しかし、それが作為的なものなら意識がないままというのも考えられる。
 国から守護を奪い、弱体化させようと以前から画策していたならどうだろう?
 ダンジョンに呪具を設置し、噂を流して犯罪者を送り込むような手を使う相手だ。
 しないとも言い切れない。
 その場合、巫女の資格を失った彼女を攫ったのに矛盾が生じるけど……。

「単純に青竜王が寝ているだけかもしれませんよ?」

 兄との会話を聞き、セイさんが苦笑しながら言った言葉に茜が笑う。
 
「それなら一発で起きる方法を考えよう!」

 そんな単純な話じゃないと思うよ!
 なのに、樹おじさんまで青龍が目を覚ます方法を考え出した。

めす竜を連れてくるか?」

「発情期じゃなければ意味がないと思います」

 セイさんが真面目に答えている。
 発情期って……。
 役に立ちそうのない会話を続けていると、女王から呼び出しがあった。
 1時間の休憩が終ったらしい。
 私達は再び女王の私室を訪れた。

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