自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
727 / 758
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第862話 シュウゲン 45 Lv上げ&アシュカナ帝国の狙い

しおりを挟む
 ※<外伝> 椎名賢也 『椎名 賢也 64 迷宮都市での情報収集』~『椎名 賢也 69 迷宮都市 炊き出しに現れた母親達&商業ギルドでの登録』を挿入話としてUPしています。
 更新通知から探せなかった方は、4巻の次にある<外伝> 椎名賢也の続きを確認して下さい。
 以前書いていたのですが、挿入話を入れる方法が分からずUPが遅くなりました。
  
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 まだお昼を済ませていない沙良達と食事を共にしたあと、Lv上げのために広いグランドがある場所へ移動する。
 儂は小夜さよの後方で待機し、危険がないように見守った。
 沙良はアイテムBOXから次々に魔物を出しておるが、少々ペースが早いのではないかと心配になる。
 ダンジョン内でも、これほど頻繁ひんぱんに魔物と遭遇そうぐうはせん。
 Lv上げをしている皆は大丈夫か?
 まぁ美佐子みさこそばにはひびき君が、結花ゆかさんとしずくちゃんといつき君にはかなでが付いておるから怪我をする事もないじゃろう。

 沙良は飛翔魔法の練習をすると言い、空を飛んでいた。
 が……賢也けんや尚人なおと君に両手を持たれ、更にあかねとセイが付き添っている状態だ。
 あれで練習になるのかの?
 どうやら皆、沙良が一人で飛ぶのを牽制けんせいしているようだな。
 目を離したすきに落っこちると思っているのかも知れん。
 沙良の従魔達も落ち着きがなく、そわそわした様子で上を見ておる。
 
 再び小夜に視線を戻すと、迷宮都市に出現する魔物と戦っていた。
 これまでのLv上げの成果か、大型魔物を前にしても一歩も引かず薙刀なぎなたを繰り出す。
 狙いあやまたず、首を切り落としておった。
 これなら犯罪者相手にも引けは取るまい。
 冒険者を襲うような犯罪者が都市に住む人間に手を出すとは思えんが、自衛手段はあったほうがいい。
 その後、Lv上げが終了するまで小夜は危なげなく魔物を倒し続けた。
 皆のLvが45になった報告を受け、沙良が満足そうに笑う。
 沙良から渡された手鏡で、また少し容姿が若返ったのを確認した小夜は嬉しそうだ。
 うむ、儂も彼女が長生きしてくれるのを願っておるからの。
 肌に張りが出てきたのではないか?
 家庭のある小夜が、夕食を食べる事なく帰ってしまいガッカリする。
 いや今日は思いがけず会えたのだから、これで満足しよう。

 日曜日。
 子供達の炊き出し後、皆でガーグ老の工房へ向かった。
 沙良に引退した近衛騎士から武術を習っていると聞いた茜が興味を示し、自分も付いて行くと言う。
 茜には稽古など必要なかろうが、その内の1人が姉の偽装結婚相手だと知ったからには、強さを確かめずにはおられまい。
 工房の門を開くと、2匹の白ふくろうとガルム達が樹君と沙良を目掛け飛んでくる。
 ガーグ老達はかしこまった態度で一列に整列し、儂らを出迎えた。

「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします。メンバーが1人増えたので紹介しますね。妹の茜です」

 そんな彼らへ沙良が気軽に声を掛ける。

「サラ……ちゃん、ようきたの。妹さんは美佐子殿の子供のようじゃな」
 
 賢也と茜を見比べて、容姿の相似性に気付いたガーグ老がそう述べる。

「茜です。姉の結婚相手だと聞きました。少し、その腕を確認したい。ご老人、お相手願えるか?」
 
 彼らの中で最も強いガーグ老に視線を合わせ、茜がさっそく仕合を申し込んだ。

「ほうっ、では儂が相手になって進ぜよう」

 受けて立つガーグ老は面白そうな顔をし、部下に槍を持ってこさせた。
 勝負は一瞬で着くだろう。これは儂もよく観察しておかねば。
 ガーグ老の長男ゼンが仕合開始の合図を出すと、2人はお互いに槍を構え相手を見据える。
 しばらくそのままの状態が続くかと思った瞬間、最初にガーグ老が動いた。
 ガーグ老の鋭い突きを茜がかわして薙ぎ払う。
 それをガーグ老が槍で受け止め、周囲に重く鈍い音が響き渡った。
 それだけで2人は槍を収めると、茜が一礼して仕合が唐突に終わる。
 ガーグ老の部下達は茜を感心した様子で見ていた。 
 
「姉をよろしく頼む」

 相手の技量を感じ取った茜は、一言そう伝えて戻ってきた。
 ふむガーグ老相手では、まだまだ勝てぬか……。

「儂はガーグだ。良い腕をしておるな。勧誘したいくらいだが……」
  
 王族の護衛になれるほど腕を買ってくれるのは嬉しいが、茜は儂の孫娘じゃ。
 ガーグ老の部下にはさせられん。
 それに、姉をしたっておる茜が沙良から目を離すとは思えない。
 ガーグ老の言葉を聞いた茜は、わずかに眉をピクリと動かしただけで返答をしなかった。
 返事がなかった事で、勧誘は難しいと悟ったガーグ老が家族を紹介する。
 茜は見た目年齢が逆の5人兄弟を見て首をかしげ、四男と五男の嫁に至っては一歩後退あとずさり、沙良に小声で忠告していた。

「姉さん、考え直した方がいい」

 確かにアレと親戚になるのは儂も遠慮したい。
 今日も盛大に口紅がはみ出しておるしな。
 本当に嫁なのか、大いに疑わしいところじゃ。

 稽古を終えたあと、ガーグ老達相手に将棋を指してホームへ戻る。
 沙良から話があるらしく、皆が美佐子の家へ集まる事になった。
 夕食は中華だったので和食が恋しくなる。
 樹君の前にだけ鰻の蒲焼と肝焼きがあるんだが、儂の分はないのかの?
 デザートに出された物をプリンだと思い食べたら、甘酸っぱい味がして微妙な顔になる。
 こりゃ一体何の味だ?
 沙良に尋ねると、マンゴープリンだと言われ納得した。
 南国のフルーツか……儂は饅頭のほうが好きだな。

 デザートを食べ終わる頃、沙良が話し出す。
 雫ちゃんを狙った犯人達から聞き出した話を聞き、アシュカナ帝国の王が情報操作をしていると分かった。
 カルドサリ王国の冒険者ギルドは甘いという噂を流し、他国の冒険者資格を剥奪はくだつされた者達をこの国に送っているらしい。
 しかも冒険者の少女に懸賞金をかけてさらうよう誘導している。
 その少女は間違いなく沙良の事だろう。
 こういった絡め手を使う相手は非常に厄介やっかいだ。
 直接、実力行使に出るような人物のほうが倒しやすい。
 別大陸の王となると、気軽に暗殺しに行くわけにもいかないな。
 孫に執着する相手を排除したいが……。

 沙良が樹君へ魔石にドレインの付与をお願いする。
 多分、支援している子供達を心配し持たせるためだな。
 ついでに結花さんの従魔用の巾着を、マジックバッグにして欲しいと頼んでいた。
 兎の魔物に合せて、可愛らしい兎と人参の刺繍ししゅうがしてある。
 これは、まぁ許容範囲内だろう。
 
 翌週、迷宮都市のダンジョンで冒険者を襲った28人の犯人達が捕まった。
 冒険者ギルドは、それを踏まえて新たな通達を出したようだ。
 迷宮都市でクランに加入していない冒険者が罪を犯した場合、斬首ざんしゅ刑になるのを承諾した誓約書へ署名しないと、ダンジョンへの入場許可は下りないらしい。
 鉱山送りではなく斬首刑とは、また思い切った政策じゃな。
 だが、効果は確実にありそうだ。
 少なくとも、迷宮都市のダンジョンで悪事を働こうとする者はいなくなる。
 噂を聞いて他国から来た元冒険者達は、迷宮都市を離れるだろう。
 
 土曜日。
 再びメンバーのLv上げを決行した沙良は、皆がLv50になるまで魔物を出し続けた。
 小夜もLv50になり、見た目年齢がかなり若くなった。
 78歳だと聞いていたが50代後半に見える。
 これは基礎値が高くHPが多い所為せいだろうか?
 急激に変化した事で家族から不審に思われないか心配だが、小夜は気にした様子がない。
 異世界にはLvを上げる以外で、若返りの効果がある薬でもあるのか?

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,587

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。