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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第861話 シュウゲン 44 樹君の付与魔法&狙われた雫ちゃん
今後は奏に代わり、茜がテント内にいる沙良と行動を共にする。
摩天楼のダンジョンでは、これ以上Lvが上がらぬと言っていたので、沙良を護衛するには打って付けじゃ。
奏は快く、その役目を譲っておった。
いつか茜をS級ダンジョンに連れて行きたいの。
カルドサリ王国にS級ダンジョンはなく、儂が知っているのはドワーフの国にある場所だけだが……。
別大陸に移動するのは、飛翔出来るレパード達に騎乗しても時間が掛かり過ぎる。
ダンジョンの移転陣を使用すれば一瞬だが、特級冒険者じゃない限り、その存在は秘匿されておる。
沙良達が特級冒険者になるのは、まだ先の話だろうて。
木曜日。
お昼に戻ってきた沙良達と美佐子の料理を食べていると、雫ちゃんが興奮した様子で話し出す。
「沙良お姉ちゃん、もう本当に凄かったの。ピカって光った後、空から雷が落ちてきたんだよ!」
はて? 雫ちゃん達は、午前中に迷宮都市のダンジョンを攻略しておった筈じゃが?
ダンジョン内で雷が落ちるとは、意味が分からん。
不思議そうにしていると、セイから「樹さんがサンダーボールを付与した魔石を使ったのでしょう」と教えてもらった。
あぁ、彼には付与魔法の能力があったな。
魔物から魔法を習得出来ない娘のために、覚えていない魔法を魔石に付与したのだろう。
しかし、サンダーボールが雷のように落ちるのか??
儂のイメージと随分違う魔法のようだな。
それから沙良が、可愛い猫のキャラクターを刺繍したマジックバッグを茜に渡しておった。7匹の従魔用らしい。
黒豹にちなんでした刺繍のようだが、些かギャップがあり過ぎる気がせんでもない。
「姉さんが作っていたのは、ダイアン達の分だったのか? この刺繍のキャラクターは、少し可愛すぎるような……」
茜にも不評のようで引いている。
しかし姉の沙良から強引に渡され受け取っていた。
茜にはアイテムBOXがあるから不要だが、従魔達が狩った魔物を入れるには便利だろう。
食後、摩天楼ダンジョン51階へ移動し奏とLv上げに励んだ。
3時間後。休憩しに安全地帯のテントへ戻ると、沙良の強さがいきなり変化している。
もしや、皆に内緒で階層を移転し魔物を倒したのか?
感覚的に倍になったLvを感じて訝しむ。
どんな魔物を倒せば、これほど急激にLvが上がるのじゃ。
やれやれ、どうやら孫娘達は大人しくテント内におらんかったようだわ。
強くなる分には問題ないし、茜が居れば危険に目に遭う事もなかろうと、儂は目を瞑った。
今日の攻略を終え、ホームに戻ってくる。
美佐子に娘達の話をすると、
「あらあら、まぁまぁ。誰に似たのかしら? 二人とも、お転婆ね~」
そう言いながら笑っておった。
沙良が1人で行動していたなら、こんな反応を見せるわけない。
きっと、茜が一緒なら心配は要らないと思っておるのだろう。
響君にも言わなさそうだな。
まぁ、セイとガーグ老辺りが気付くじゃろうて。
金曜日。
早朝から畑仕事に行く美佐子を手伝い、草むしりをする。
妊娠している娘が心配なのか、従魔のボブが付いてきた。
その背中には、肥料が括り付けられている。
儂は重い荷物を運ぶのではなく、草むしり要員として連れて来られたようだ。
しかし、この雑草は何度抜いても生えてくるな……。
ちまちま草むしりをしていると、腰が痛くなってくる。
腰掛椅子が必要じゃ!
美佐子に指示された範囲の草を抜き終わる頃、ちょうど昼の時間になった。
家に戻ると、沙良達が戻ってきておる。
既にテーブルには料理が並んでいた。
美佐子が不在にしていたので、沙良が調理済みのおかずをアイテムBOXから出したのだろう。
かつ丼、豆腐とネギの味噌汁、ごぼうサラダ、きゅうりの酢の物。
これは賢也の好物だな。
なんぞ、兄に後ろめたい事でもあるのか?
勝手に階層を移動し、魔物を倒しているのに関係していそうじゃ。
そんな事を思いながら、かつ丼に口を付ける。
うむ、この甘辛い味は小夜と同じだ。沙良はいつでも嫁に行ける。
そう言えば、茜の料理を食べておらんかった。
結婚しているなら、料理の腕は沙良より上か?
いや、刑事は勤務時間が不規則だったな。
自宅に帰って寝る事も、そうそうないかも知れん。
だが結花さんよりは、ましじゃろう。
茜の料理も食べてみたいのう。
味噌汁を飲みながら呑気に考えていると、
「私を狙う冒険者が襲ってきたから、サンダーボルトで撃退したの!」
突然、雫ちゃんが口を開く。
儂は、その内容に驚き思わず咽てしまった。
儂の曾孫を誰が襲ったのだ!? 成敗してくれる!!
いや、本人が撃退したようじゃが、妙な魔法名を言っておったな。
サンダーボルトなど聞いた事もないが……。
「それでね、犯人が気絶したあと妖精さんが簀巻きにしてくれたんだよ」
うん? ガーグ老の部下達は、沙良と親しい旭家も護衛しているのか?
迷宮都市と摩天楼のダンジョンにいるなら、思ったより人数が多いのだな。
「犯人は、私がアイテムBOXに収納しています」
結花さんが、襲って来た犯人を確保していると告げる。
よく話を聞くと、昨日迷宮都市のダンジョン内で沙良の知り合いのパーティーが襲われたらしい。
ダンジョンで冒険者を相手に犯罪を冒す者がいるとは……。
同じ犯人かどうかは分からないようだが、ちとキナ臭いな。
何にせよ、雫ちゃんを狙ったそうだから年若い女性をターゲットとしているようだ。
該当するのは、結花さんと沙良と茜だな。
午後から、奏が迷宮都市へ行く事になった。
孫が狙われたと聞けば、心配にもなるだろう。
この日の攻略終了まで再度襲撃される事はなかったが、奏は暫く娘一家と行動するそうだ。
夕食は茜のリクエストで中華料理店に向かう。
丸いテーブル席に着くと、コース料理が一気に出てきた。
この赤いソースと白いソースが掛かった海老は何だ?
口に入れると赤いソースのほうは甘辛く、白いソースのほうは甘いマヨネーズの味がする。
沙良が美佐子のお腹に向かって料理の味を説明していて分かったが、エビチリとエビマヨと言う料理らしい。
それにしても、沙良は何故お腹にいる赤ちゃんに料理の味を教えているのだ?
「この子が食べられるようになるのは、まだまだ先よ? 本当に、気の早いお姉ちゃんで困るわね~」
美佐子も苦笑しておるではないか。
ほのぼのとした2人の遣り取りに、樹君が笑っている。
儂はそれを聞きながら、せっせと皿を空けた。
どうにも中華は脂っぽくて苦手じゃ。
「明日の午後はLv上げをするからね~」
雫ちゃんが狙われた事でパーティーメンバーが心配になったのか、沙良がLv上げをすると言う。
またアイテムBOXに生きたまま収納した魔物を出すのだろう。
迷宮都市のダンジョンより、摩天楼のダンジョンに居る魔物のほうがLvが高い。
摩天楼のダンジョンに行けない樹君達には、良い方法だ。
翌日、土曜日。
沙良は小夜も呼んでくれたらしく、急に美佐子の家へ来た。
儂のために鯖の味噌煮を作ってくれる。
そのほっとする味に頬が緩んだ。
沙良が連れに行った時、茜とも会ったようで嬉しそうにしていた。
「ちゃんと女の子に見えて良かったわ」
儂と同じ事を思ったのか……。
孫と会った感想を聞き、美佐子がクスクス笑っておる。
「茜の得意料理は何じゃ?」
気になった事を娘に尋ねると、
「……目玉焼きかしら」
一瞬固まったあと、目を逸らしながら答える。
そっ、そうか……儂が茜の料理を食べる日は来ないだろうな。
そして今日も、小夜の指に儂が渡した指輪はなかった。
もしかして気付いていないのか?
左手の薬指を見てしょんぼりしていると、小夜が服の中からネックレスを引き出す。
そのネックレスには、見覚えのある指輪が通してあった。
「小夜……、着けてくれたのか」
「ええ、こうしてネックスレスにしたのよ」
旦那がいる手前、指に着けるのは無理だったのだろう。
それでも、身に着けてくれた事が嬉しくて目に涙が浮かぶ。
年を取ると涙脆くなっていかんな。
「ダイヤの指輪が欲しいと言ったのを、覚えていてくれたのね。ありがとう」
「うむ、似合っておる」
本当はダイヤではないが、言わぬが花じゃ。
小夜が喜んでおるならそれで良い。
そんな儂達を見て美佐子が気を利かせ席を外す。
沙良達が来るまで、儂らは2人の時間を楽しんだ。
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お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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摩天楼のダンジョンでは、これ以上Lvが上がらぬと言っていたので、沙良を護衛するには打って付けじゃ。
奏は快く、その役目を譲っておった。
いつか茜をS級ダンジョンに連れて行きたいの。
カルドサリ王国にS級ダンジョンはなく、儂が知っているのはドワーフの国にある場所だけだが……。
別大陸に移動するのは、飛翔出来るレパード達に騎乗しても時間が掛かり過ぎる。
ダンジョンの移転陣を使用すれば一瞬だが、特級冒険者じゃない限り、その存在は秘匿されておる。
沙良達が特級冒険者になるのは、まだ先の話だろうて。
木曜日。
お昼に戻ってきた沙良達と美佐子の料理を食べていると、雫ちゃんが興奮した様子で話し出す。
「沙良お姉ちゃん、もう本当に凄かったの。ピカって光った後、空から雷が落ちてきたんだよ!」
はて? 雫ちゃん達は、午前中に迷宮都市のダンジョンを攻略しておった筈じゃが?
ダンジョン内で雷が落ちるとは、意味が分からん。
不思議そうにしていると、セイから「樹さんがサンダーボールを付与した魔石を使ったのでしょう」と教えてもらった。
あぁ、彼には付与魔法の能力があったな。
魔物から魔法を習得出来ない娘のために、覚えていない魔法を魔石に付与したのだろう。
しかし、サンダーボールが雷のように落ちるのか??
儂のイメージと随分違う魔法のようだな。
それから沙良が、可愛い猫のキャラクターを刺繍したマジックバッグを茜に渡しておった。7匹の従魔用らしい。
黒豹にちなんでした刺繍のようだが、些かギャップがあり過ぎる気がせんでもない。
「姉さんが作っていたのは、ダイアン達の分だったのか? この刺繍のキャラクターは、少し可愛すぎるような……」
茜にも不評のようで引いている。
しかし姉の沙良から強引に渡され受け取っていた。
茜にはアイテムBOXがあるから不要だが、従魔達が狩った魔物を入れるには便利だろう。
食後、摩天楼ダンジョン51階へ移動し奏とLv上げに励んだ。
3時間後。休憩しに安全地帯のテントへ戻ると、沙良の強さがいきなり変化している。
もしや、皆に内緒で階層を移転し魔物を倒したのか?
感覚的に倍になったLvを感じて訝しむ。
どんな魔物を倒せば、これほど急激にLvが上がるのじゃ。
やれやれ、どうやら孫娘達は大人しくテント内におらんかったようだわ。
強くなる分には問題ないし、茜が居れば危険に目に遭う事もなかろうと、儂は目を瞑った。
今日の攻略を終え、ホームに戻ってくる。
美佐子に娘達の話をすると、
「あらあら、まぁまぁ。誰に似たのかしら? 二人とも、お転婆ね~」
そう言いながら笑っておった。
沙良が1人で行動していたなら、こんな反応を見せるわけない。
きっと、茜が一緒なら心配は要らないと思っておるのだろう。
響君にも言わなさそうだな。
まぁ、セイとガーグ老辺りが気付くじゃろうて。
金曜日。
早朝から畑仕事に行く美佐子を手伝い、草むしりをする。
妊娠している娘が心配なのか、従魔のボブが付いてきた。
その背中には、肥料が括り付けられている。
儂は重い荷物を運ぶのではなく、草むしり要員として連れて来られたようだ。
しかし、この雑草は何度抜いても生えてくるな……。
ちまちま草むしりをしていると、腰が痛くなってくる。
腰掛椅子が必要じゃ!
美佐子に指示された範囲の草を抜き終わる頃、ちょうど昼の時間になった。
家に戻ると、沙良達が戻ってきておる。
既にテーブルには料理が並んでいた。
美佐子が不在にしていたので、沙良が調理済みのおかずをアイテムBOXから出したのだろう。
かつ丼、豆腐とネギの味噌汁、ごぼうサラダ、きゅうりの酢の物。
これは賢也の好物だな。
なんぞ、兄に後ろめたい事でもあるのか?
勝手に階層を移動し、魔物を倒しているのに関係していそうじゃ。
そんな事を思いながら、かつ丼に口を付ける。
うむ、この甘辛い味は小夜と同じだ。沙良はいつでも嫁に行ける。
そう言えば、茜の料理を食べておらんかった。
結婚しているなら、料理の腕は沙良より上か?
いや、刑事は勤務時間が不規則だったな。
自宅に帰って寝る事も、そうそうないかも知れん。
だが結花さんよりは、ましじゃろう。
茜の料理も食べてみたいのう。
味噌汁を飲みながら呑気に考えていると、
「私を狙う冒険者が襲ってきたから、サンダーボルトで撃退したの!」
突然、雫ちゃんが口を開く。
儂は、その内容に驚き思わず咽てしまった。
儂の曾孫を誰が襲ったのだ!? 成敗してくれる!!
いや、本人が撃退したようじゃが、妙な魔法名を言っておったな。
サンダーボルトなど聞いた事もないが……。
「それでね、犯人が気絶したあと妖精さんが簀巻きにしてくれたんだよ」
うん? ガーグ老の部下達は、沙良と親しい旭家も護衛しているのか?
迷宮都市と摩天楼のダンジョンにいるなら、思ったより人数が多いのだな。
「犯人は、私がアイテムBOXに収納しています」
結花さんが、襲って来た犯人を確保していると告げる。
よく話を聞くと、昨日迷宮都市のダンジョン内で沙良の知り合いのパーティーが襲われたらしい。
ダンジョンで冒険者を相手に犯罪を冒す者がいるとは……。
同じ犯人かどうかは分からないようだが、ちとキナ臭いな。
何にせよ、雫ちゃんを狙ったそうだから年若い女性をターゲットとしているようだ。
該当するのは、結花さんと沙良と茜だな。
午後から、奏が迷宮都市へ行く事になった。
孫が狙われたと聞けば、心配にもなるだろう。
この日の攻略終了まで再度襲撃される事はなかったが、奏は暫く娘一家と行動するそうだ。
夕食は茜のリクエストで中華料理店に向かう。
丸いテーブル席に着くと、コース料理が一気に出てきた。
この赤いソースと白いソースが掛かった海老は何だ?
口に入れると赤いソースのほうは甘辛く、白いソースのほうは甘いマヨネーズの味がする。
沙良が美佐子のお腹に向かって料理の味を説明していて分かったが、エビチリとエビマヨと言う料理らしい。
それにしても、沙良は何故お腹にいる赤ちゃんに料理の味を教えているのだ?
「この子が食べられるようになるのは、まだまだ先よ? 本当に、気の早いお姉ちゃんで困るわね~」
美佐子も苦笑しておるではないか。
ほのぼのとした2人の遣り取りに、樹君が笑っている。
儂はそれを聞きながら、せっせと皿を空けた。
どうにも中華は脂っぽくて苦手じゃ。
「明日の午後はLv上げをするからね~」
雫ちゃんが狙われた事でパーティーメンバーが心配になったのか、沙良がLv上げをすると言う。
またアイテムBOXに生きたまま収納した魔物を出すのだろう。
迷宮都市のダンジョンより、摩天楼のダンジョンに居る魔物のほうがLvが高い。
摩天楼のダンジョンに行けない樹君達には、良い方法だ。
翌日、土曜日。
沙良は小夜も呼んでくれたらしく、急に美佐子の家へ来た。
儂のために鯖の味噌煮を作ってくれる。
そのほっとする味に頬が緩んだ。
沙良が連れに行った時、茜とも会ったようで嬉しそうにしていた。
「ちゃんと女の子に見えて良かったわ」
儂と同じ事を思ったのか……。
孫と会った感想を聞き、美佐子がクスクス笑っておる。
「茜の得意料理は何じゃ?」
気になった事を娘に尋ねると、
「……目玉焼きかしら」
一瞬固まったあと、目を逸らしながら答える。
そっ、そうか……儂が茜の料理を食べる日は来ないだろうな。
そして今日も、小夜の指に儂が渡した指輪はなかった。
もしかして気付いていないのか?
左手の薬指を見てしょんぼりしていると、小夜が服の中からネックレスを引き出す。
そのネックレスには、見覚えのある指輪が通してあった。
「小夜……、着けてくれたのか」
「ええ、こうしてネックスレスにしたのよ」
旦那がいる手前、指に着けるのは無理だったのだろう。
それでも、身に着けてくれた事が嬉しくて目に涙が浮かぶ。
年を取ると涙脆くなっていかんな。
「ダイヤの指輪が欲しいと言ったのを、覚えていてくれたのね。ありがとう」
「うむ、似合っておる」
本当はダイヤではないが、言わぬが花じゃ。
小夜が喜んでおるならそれで良い。
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――だけど。
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「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろうでも同時連載中です◇