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332 獣王武闘会 打ち下げ花火
しおりを挟む零号とシリウスが姉妹にてガンガンバトル。
警備隊とアニマルロボ・カブト軍団が交戦、芽衣とトラ美もこれに加わり戦闘中。
リーダーの裏切りによって分裂を起こしたチーム・侍魂たちは、キンコンカンズバッと真剣を激しくぶつけ合い、刃を閃かせての大立ち回り。
みなが争うさまを高みの見物とばかりに、後方からニヤニヤ眺めている性悪オコジョくのいちと、それに従っているキタオポッサム忍者。
ますます混迷の度合いを深める裏祭。
激戦区、中央石舞台。
ぼちぼち応援が駆けつけてくれてはいるものの、他のところでも戦闘行為が発生しているらしく、あちらこちらがてんやわんや。
そんな乱戦のさなか……。
敵首魁への奇襲に失敗したおれこと尾白四伯は、みなの奮戦を尻目にケガ人の救助作業に奔走中。
ドロンと耐摩耗・摩擦係数がやたらと低いつるつるシートに化けては、ケガを負って動けない者の下に潜り込み、これを相棒二号の怪異・白い腕が「えんやこら」とズルズル引きずり搬出するという手段にて、せっせと助ける。
なお宮本めざしに背後から二刀を突き入れられたゴリラ拳闘士・佐藤晋太郎の身柄もとっくに回収済み。心臓近くをブスリとやられていたのでどうかと心配するも、奴はギリギリ生きていた。
「ぐっ、自分は臓器の位置が左右逆転している。きっとそのおかげだろう。でなければいまごろ」
担架で運ばれるときに当人が苦しげにもらしていたが、たぶんそれだけじゃない。鍛えあげた肉体と武がとっさに彼の露命をつないだのだろう。おれはそう信じている。
そうこうしているうちに、ついに零号がシリウスをラリアットでぶっ飛ばす。
劇的なフィニッシュシーン。
目撃したおれはおもわずガッツポーズ。「よっしゃーっ!」
が、拳をぐっと握りしめてよろんだのもつかのま。
ゆらりふらりと立ち上がったシリウス。その胸元がパカンと開いて、オモチャのパラボラアンテナみたいなのをにょきっと出現させたとおもったら、何やら剣呑不穏、とっても危機的な気配がぽわわわわんと……。
よくわからないけど、ろくでもないことをしようとしていることだけはたしか!
察したみながこぞって止めようとする。
しかしアニマルロボ・カブトたちに邪魔をされてしまう。
懸命に押し合いへし合いするも、突破できない。
そしてついにシリウスが宣告する。
「エネルギー充填完了しまシタ。発射シークエンスへと移行しマス。カウントスタート。三、二……」
いまにもヤバいシロモノが解き放たれようとしている。
「っていうか、カウントダウンはやっ! ふつうはテンカウントじゃねえのかよ! せめてファイブカウントから始めろよっ!」
探偵のツッコミが冴え渡る中、シリウスのパラボラアンテナがいっとう妖しく輝いた直後。
ドォオォォォォオォォーン!!!
特大のカミナリが落ちたかのような大音量。
大気が震える。
地響きとともに、ものすごい音が響き渡った。
風炎が吹き荒れ、肌がひりつくような熱がカッと生じる。吸い込んだ空気で胸の奥までもが熱を帯びる。血が沸き立つかのような錯覚に襲われる。
目がくらむような閃光が暴れた。
赤、白、青、黄、いろんな色が入り交じってはパッと火花が咲き狂う。
もうもうと白煙が垂れ込め、石舞台の一帯に火薬のニオイが充満し、鼻の奥がツーンとくる。
「うひゃあぁぁぁ、お助け~」
びびったおれは一歩も動けず。
おっさんはその場で頭を抱えてしゃがみ込むばかり。
◇
破壊の嵐の後。
訪れた静寂。
自分が生きてピンピンしていることを確認しつつ、遅ればせながらおれは異変に気がついた。いろいろ解せぬ。
シリウスより発射されそうだったのは破壊光線ビカビカーッとか、超怪電波ビビビビ的なモノだったはず……。
なのに、どうして黒色火薬のニオイがこうもぷんぷんしていやがる?
おそるおそる顔をあげたおれは目をぱちくり。
見上げた天井にはどでかい風穴。
おそらくこれはシリウスが放った広域殲滅兵器とかいうやつの仕業であろう。マジでシャレにならんじゃないか! 喰らってたら木っ端みじんになることまちがいなし。なんてものを他人さまに向けやがる!
そんな凶悪アニマルロボ・シリウスなのだが、ネコ頭を真っ黒にしてなぜだか床に仰向けにひっくり返っていた。
広域殲滅兵器の発射直前になんらかの攻撃を喰らった模様。
おかげでおれたちはこうして命拾いをしたわけだが……。
「あっはっはっはっ、た~ま~や~、ってな。さすがは後夜祭のために用意された特製三尺玉だけのことはある。いいはじけっぷりだぜ」
観客席の上段にて。
打ち上げ花火用の大筒をかまえながらのくわえタバコの女は、全身黒づくめのスーツにサングラス姿。
ここにきてカラス女の安倍野京香が登場!
あー、そういえば不良刑事も大会の警備に駆り出されていたっけか。
なるほど、なるほど、どこかで嗅いだニオイだとおもったら花火のやつだったのか。
にしてもである。
広域殲滅兵器とやらを人に向けて放とうとするシリウスもダメだが、打ち上げ花火を人に向けて容赦なく打つカラス女もたいがいであろう。
でもって三尺玉だと、玉の大きさが約九十センチほどで、夜空にパッと大輪の華を咲かせたら直系六百五十メートルほどにも広がる。通常、五百メートル以上もずっと上空にどーんと打ち上げて楽しむモノ。
それが顔面に直撃……。
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