星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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156 ブリッジ

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 強い懸念を覚えた枝垂はジャニスに断りを入れ、一華が表紙を飾る雑誌を確保させてもらった。
 本棚には他にもいろんな書籍や雑誌があった。
 中身を精査しないとなんとも言えないが、きっと「地球言語学」の分野の研究に役立つ資料となるだろう。
 ちなみに「地球言語学」とは、地球側とギガラニカ側との間に横たわる、文化的、社会的、意識的などの差の理解を深めるべく誕生した学問である。

 ギガラニカの言語は単一にて。
 獣人、類人、蟲人らや国ごとの成り立ちの違いはあれども、こと文字と言葉のやり取りに関しては共通しているので、意思や認識を共有するのに手間がかからない。
 しかし地球上には七千以上もの言語が存在している。
 広く使われている言語だけでも二十を越える。国をまたげばがらりと様変わりして、ちんぷんかんぷん。下手をすると同じ国の中でも、言葉がろくに通じないなんて冗談みたいな話もある。
 だからこそ誤解やすれ違いが生じやすい。
 本来であれば他者とつながるための便利なツールのはずなのに……
 その豊かな多様性ゆえに、地球人類は言葉と文字に踊らされ、紛争が絶えないというのだから皮肉な話だ。

 でもって、そんなややこしい地球から召喚された星の勇者たちは、時代や出身国などがバラバラの寄せ集めだ。
 みんな特典チートで自動翻訳能力を貰っているとはいえ、そのときどきの流行や身に染みついた俗語などを持ち込む。
 そのせいでうまく翻訳されずに意思伝達の齟齬やら、ギガラニカ側が「?」と首を傾げ困惑することが、ときおり起こる。
 このズレを解消すべく、新たに産まれたのが「地球言語学」であった。
 地球への理解を深めて、交流をよりスムーズにすることを目標に掲げている。

 だが研究対象が限られており、身につけたとて活躍する場面はあまりなく、資料もろくに手に入らず、もっぱら聞き取り調査がメインにて。
 肝心の星の勇者たちも、あれでけっこう忙しかったりもする。
 おかげでなかなか付き合ってもらえずに、研究は遅々として進まず。
 そんなマイナージャンルの「地球言語学」に携わる学者や研究者たちからすれば、この本棚やタンカーはお宝の山みたいなものであろう。

  ☆

 娯楽室を出た調査隊は四階をくまなく探る。
 しかし、他には目ぼしい場所はなかった。
 ただ、ここでもあの謎のヌメヌメを何カ所かで発見した。
 じつは娯楽室のビリヤード台の下でも見つけた。
 残された痕跡から、ヌメっとした何かが、床をにゅるにゅる這うように動いているのが伺える。

「おそらくは長いヒモのような生き物だろう。ワームに酷似した姿だとおもわれるが」

 とはジャニスの見解だ。
 海の生き物の中には、陸に揚げられたとたんにトロリとした粘液を出しては、敵から身を守るものもいるという。
 もしかしたら何らかのはずみで、船内に入り込んだのかもしれない。

 廊下の奥にて上階へと続く階段を見つけたので、一行は先を目指すべく四階をあとにする。
 やや段差のある階段をおっちらのぼる。
 途中、踊り場で壁面に目をやれば、数字が二になっていた。
 上にあがっていたはずなのに、いつのまにやら下りている。
 空間内部が歪んで迷宮化している影響だ。
 異世界ならではとはいえ、枝垂はちゃんと戻れるのか少々不安になってきた。
 これは……いざともなれば飛梅さんに壁をぶち破ってもらうことも、考えておいたほうがいいだろう。もっともそれでも外に出られるとは限らないのだが……

 二階は主に居住区にて、タンカーの乗務員らにあてがわれたとおぼしき部屋が多かった。
 けれども私物の類はほとんどなし。
 不自然なほどに物がない。備え付けのロッカーや机の引き出しの中も、空が目立つ。
 というか、小綺麗にはされているが、使用感がない部屋が多い。
 もしかしたら、このタンカーは巨大な見た目に反して、乗務員の数があまり多くなかったのかもしれない。

 じつは枝垂のこの予想は当たっていた。
 とあるタンカーの場合、甲板部で十名、機関部で九名、司厨部三名に船長を加えた、たったの二十三名で動かしている。
 たいていのタンカーは少数にて運航されているのだが、さしもの枝垂も知る由もなかった。

 またまた階段へと到達したので、これをのぼる。
 するとついにブリッジのある七階へと到着した。
 ブリッジは船長や航海士が操船指揮をとるところ。前面と両側面がガラスばりにて周囲を一望できる造りになっており、操船する上で重要な航海計器やその他重要な機器類・警報類が集中配置されている。
 モニターにボタンやレバー、メーターなどがたくさんある。もちろん操舵のハンドルも。
 そんなメカメカしいブリッジ内部の様子に「エレン姫さまがお喜びになりそうだ」とジャニスは言った。

 エレン姫は魔導具いじりが趣味の才媛にて、この手の機械には目がない。
 きっと報告を受けたら、すぐにでもタンカーに乗り込もうとするだろう。

 さてと、ようやくブリッジまで辿りつけた。
 とはいえ、当然のことながら枝垂にタンカーの操船なんぞはできない。
 かといって適当にポチっとするのは、いくらなんでもダメだろう。
 だから「まずはマニュアルを探してください」と隊員らに頼む。
 いざという時のために常備してあるはず……たぶん。そういうのを大型客船が沈没するパニック映画で、観たような気がする。
 う~ん、あったらいいな。


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