230 / 242
230 星骸二十三号VS勇者隊
しおりを挟む無数の砲塔を生やしたイガグリ状から球体へ。
灰色の球体から女型の巨人へと。
片膝をついていた星骸二十三号が、悠然と立ち上がろうとしている。
対して連合軍側は混乱していた。
陣営は炎に包まれており被害甚大、態勢の建て直しおよび鎮火、救助活動のために大勢が奔走中。
白銀のケンタウロスは倒され、列車砲も破壊され、本陣も攻撃を受けた。
飛空艇ヒノハカマとダライアスはいまだ健在だが、それ以外のダメージが大きすぎる。とてもではないが戦線を維持できない。
星骸二十三号の痛烈な反撃により戦局がひっくり返される、すっかり立場が逆転してしまった。
窮地のさなか、動いたのは勇者隊であった。
激しい戦禍の下、どこに隠れ潜んでいたのか。
気づけば星骸二十三号のすぐ背後にまで肉迫していた。
☆
いまだ混乱が続く本陣へと星骸二十三号が歩き出す。
けれどもその進路をシャボン玉が塞ぐ。
運動会で使う玉転がしほどの大きさ、いくつもの半透明な玉がゆらゆらと……
それらを邪険に手で払おうとする星骸二十三号であったが、手の甲がシャボン玉へと触れる寸前にその動きがピタリと止まった。おそらくは何かを察して、警戒したのであろう。
だから右から迂回しようとするも、そちらにもシャボン玉がある。
ならば左側から回り込もうとするも、こちらも同様であった。
いったんさがろうとするが後方もまたしかり。
ばかりか、頭上にも浮かんでおり、いつの間にか多数のシャボン玉によってすっかり囲まれていた。
シャボン玉たちは個々が気まぐれに動く。
かとおもえば、うちふたつがぶつかりパチンとはじけて消えた。
星骸二十三号の左足首あたりでのことである。
とたんに、ベチャリ……
足首にまとわりついたのは粘性の液体であった。
このシャボン玉は星のチカラにより産み出されたもの。
星骸二十二号との戦いのおり、高速回転しては暴れていたハリネズミ型の分体の動きを止めた女勇者の能力。先の戦いのときには水弾を撃ち込んでいたが、こういった使い方にて設置型の罠にも応用できるらしい。
しかもたんに相手にまとわりついては動きを阻害したり、拘束するだけではなかった。
ジャラリと音が鳴り、粘性のある液体のこびりついた左足首へと、すかさず黒い鎖がからみつく。
べつの勇者の能力にて、鎖が幾重にも巻きついて離れない。
だけでなく、グイと引っ張られたひょうしに星骸二十三号は足をとられて膝をつくことになった。
当然ながら星骸二十三号とて抵抗はしようとするも踏ん張れず。
ならば黒い鎖ごと体内にとり込んで……、と目論むもうまくいかない。
原因は体表に付着している粘性の液体だ。
いかなる仕組みかはわからないが、これが星骸二十三号の変形をさまたげており、吸収をも阻害している。
さしもの星骸二十三号も、星の勇者のチカラはたやすく無効化できないらしい。
のみならず、黒い鎖がチカラを抜き取り奪っているらしく、そのせいで星骸二十三号はあっさり膝をついたのである。
触れるのは危険!
星骸二十三号にとって、このシャボン玉は相性が最悪だ。
だというのに、そんなシロモノにすでに囲まれてしまっている。
だから星骸二十三号は、ふたたび砲塔を生やして、すべてをいっきに消し飛ばそうと試みるも、その矢先に轟っと風が唸る。
これまたただの突風ではなかった。勇者隊のメンバーによるもの。天翔ける龍のごとく自在に飛びながら、作り出したのは風の道。
風の道の先には星骸二十三号がいて、シャボン玉たちが終点へと誘導されていく。
いっきに狭まった包囲網、星骸二十三号に逃げ場なし。
パチン、パチン、パチン、パチン……
次々とシャボン玉たちがはじけていき、粘性のある液体により星骸二十三号の全身が濡れそぼる。その姿は、まるでマネキンにラバースーツを着せたかのよう。
女体特有のボディラインがくっきりと浮かんでいる。
なんとも艶めかしい。
でもそのラバースーツのせいで星骸二十三号は人型に固定されてしまい、変形や吸収ができなくなった。左足を黒い鎖にて掴まれているので動くこともままならない。
ここで星骸二十三号へと殺到したのは、勇者隊による一斉攻撃である。
地上にていくつもの星々が煌めく、地水火風光闇、いろんな属性の魔法が飛び交う。
全方位から囚われの星骸二十三号をめった撃ち。
ただし、よくよく見てみると猛攻の中に、明らかに意図が垣間見えた。
たんに攻撃をぶつけているのではない。
一点集中ではなくて、頭のてっぺんから足の先までを、まるで舐めるかのようにして、攻撃をめぐらしている。
もしやこれは触診? 弱点を探っているのか?
相手が苦手としている属性や、星骸の核にして要(かなめ)である星珠の位置などを――
あいにくと、どの属性の攻撃も効果にさして差はみられない。
けれども星珠があるであろう位置はじきに特定できた。
なぜなら勇者隊の攻撃にさらされ、防戦一方となっている星骸二十三号が両腕にて頭部を懸命にガードしていたから。
そのタイミングでヤツの斜め後方にて発生したのは、超新星のごときとても強い光。
光を放っていたのはヴァシリオスであった。
インターバルを終え、最強の勇者がふたたび必殺必勝の刃を振るう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
73
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる