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20 魔眼

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「おいおい、マジかよ……、ドラゴンの台詞だとは思えねぇな。確かに只者じゃないとは思っていたが」

 少し凄味が増した姉御が私をじっと見つめる。
 美人さんの情熱的な眼差しに、思わずこちらの頬がぽっとしてしまいました。あぁ、誤解しないで下さい。同性異性を問わず、素敵な方に見つめられたら照れてしまう、というだけの話なので。

「こら! そんな好戦的な目で彼女を見るんじゃない。ほら、困ってるじゃないか。それに最後までちゃんと話を聞きなさい。たしかに勝てる気はしないとは言ったが、私は負けるとも言ってないぞ」

 フリージアさんの言葉に、今度は頭にハテナマークを浮かべる姉御。彼女は竹を割ったような性格なのか、喜怒哀楽が顔に出やすいので、とってもわかりやすい。

「私の魔眼で解析したところによると、花蓮さんの場合、素早さや回避能力とかが桁違いなんだよ。こんなの見たことない。きっとその気になったら彼女に、こっちの攻撃を当てることは、百年かかっても無理だと思う。でもそのわりに極端に非力なんだ。だからこちらをどうこう出来る力はない」

 フリージアさんの説明にいまいち納得できないのか、アルティナさんがうんうん唸って難しい顔をしている。リースさんは単純に感心したらしく、しきりと私の頭をナデナデしていた。

「相手の能力が視える魔眼ですか……、バレちゃったみたいですし白状しますが、私の能力はズバリ逃げ特化です」
「「「逃げ特化?」」」

 私の発言に三人の綺麗なお姉さま方が、揃ってキョトンとなりました。

「それって小動物みたいに逃げ足が速いってことかい?」アルティナさんの言葉にコクンと頷く。
「駆けっこが得意なのかしら……」リースさんの言葉にもコクンと頷く。
「ちょっと待って……、そんな単純な話じゃ済まないわよ。速く走れる、速く動けるってことは、それだけ強靭な肉体を持っていることになる。素早く動いている中で状況だって把握しないといけないから、目だって相当なハズよ。違うかしら?」フリージアさんの言葉にも黙って頷いてみせた。男装の麗人さんは頭がかなり良い。ちょっとしたヒントからみるみる私が丸裸にされていく。このままだと時間の問題かなぁと思っていたら、グゥと私のお腹が鳴った。

「あら? すっかり話し込んでしまったけれど、もう夕飯の時間じゃない。続きはまた明日にでもしましょう」

 リースさんの提案で、その場はお開きになった。
 なお夕飯に出された料理はどれも絶品でした。
 焼かれた肉は柔らかくジューシーで、香辛料もふんだんに使われていた。煮込み料理もとろっとろで、口に含むと舌の上で消えて無くなってしまう。野菜もえぐみがなくてシャキシャキと新鮮、簡素ながらドレッシングみたいなモノもかけられていた。デザートの果物の盛り合わせは、南国っぽい品が多く各々が違った甘味を提供してくれて、おおいに私の胃袋を満足させてくれる。
 こっちの世界に来てから、あまり仕事をしていないと思われた運でしたが、ここにきてその秘めたる力を爆発させたようです。
 魔族に攫われて本当によかった。
 ポンポコリンとなったお腹を抱えて、私はつくづくそう思いました。

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