とりあえず逃げる、たまに頑張る、そんな少女のファンタジー。

月芝

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57 縁結びの神様

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 出逢いがないとメイドさんらに愚痴られた。
 魔王城って勤め人は多いのだが、職種ごとに活動範囲が区分されているので、どうしても同じ職場の方々で集まりがちで、マンネリ化が避けられないのだとか。
 なまじ広大な城内であるがゆえに、偶然が必然になる機会なんて、ほとんど無いんですって。知りませんでした……、大人なオフィスラブって、会社の中にゴロゴロしているものだとばかり思い込んでいました。でも実際は違ったんですね。

「出逢いですか……、出逢いといえば合コンらしいです。私は未経験ですが、あちらでは猫も杓子も老いも若きも、盛った男女が集って、夜の街に消えていくと聞きました」

 私がそんなことを話しますと、メイドさんらに「なに、その破廉恥パーティー」って言われてしまいました。はて? そんなつもりは毛頭なかったのですが、改めて自分が口にした言葉を吟味しますと、確かに破廉恥ですね。ですが考え方の方向性は悪くないと思うのです。そこで私は一石二鳥のアイデアを思いつきました。

「そうだ! 試食会……ゲフンゲフン。健全な男女の出会いの場を提供する、ランチパーティーを開きましょう」

 ちょうど料理長から新メニューについて、あれこれと相談されていたところ。
 毎回、試食を頼まれるのは嬉しいのですが、近頃ちょっとハイペース。このままでは市松人形が、まん丸ヌイグルミになってしまいそうです。私とて十代半ばのピッチピチの乙女、お腹回りの摘まめるお肉はノーサンキュー。そこでランチパーティーなわけですよ。私の代わりにモリモリ食べてもらい、味の感想を言ってもらって、ついでに男女の出会いの場になって、ちょっぴり参加費用を徴収してウハウハ。食事と共同作業をこなし芽生える新たな想い……、いいんじゃないでしょうか。
 健全さを前面に出してアピールしたら、メイドさんらもノリノリになりました。
 そんなワケで合コンという名の試食会を催すことになりました。

 場所は食堂の一区画を貸し切って行います。
 料理はすべて厨房に丸投げです。「より多くの方の意見にも耳を傾けるべきです」と言ったら料理長は簡単に納得してくれました。材料費は会費を当てるので問題ありません。昼間の会なのでお酒はナシ。参加費用は日替わりランチと同じにしました。チケットは私とリースさんが夜なべして拵えました、その数、百枚。
 一発目ですので、まずはこれぐらいから始めることにしましたが、女性側のチケット五十枚は即日完売しました。男性側のチケットは、何故だか宰相さまが自費にて、すべて引き取ってくれました。なんでも日頃、頑張ってくれている独身の部下たちに配るんだとか、いい上司ですね。

 合コン当日、パーティーは立食形式にて行われました。
 男性陣はスーツ姿でパリッと決めて、女性陣らは少し落ち着いた雰囲気の服装に身を包んでいます。各自、胸元にネームプレートをつけて、美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、気になる異性とお喋りに興じます。
 すこぶる健全な出会いの場、そんな桃色空間を私はテクテク駆けずり回っては、せっせと皆様方から新作料理の感想を集めていきます。
 二時間にてパーティーは終了。さすがに即席カップルの誕生とまではいかなかったようですが、どうにか次に繋がりそうな雰囲気がちらほらと。これを機会に付き合いを発展させてもらえればと願うばかりです。
 こうしてイベントは無事に終了したのですが、誤算がありました。
「次回の開催はいつ?」という突き上げが、女性陣からもの凄いのです。四方八方からバシバシ突いてきます。あと軍部からも嘆願書付きの依頼が届きました。「ムサイ野郎どもに愛の手をさしのべて下さい」って書かれてありました。段々と大ごとになってきて困っていたら、ちょうど商人さんがやって来たので相談すると、彼の商会内にて専用の部署が新設されることになり、そちらに全部丸投げしました。

 しばらくして食堂で焼肉弁当をつつきながら、新聞を開くと、そこにはデカデカと私の似顔絵が載っており、縁結びの神様という文字が躍っていました。
 どうやら合コン企画は大盛況のようです。


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