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14 明日への飛翔
しおりを挟む敵に勝つには、まず相手のことをよく知らなければならない。
ゆえにひたすらコソコソと観察する。
ドラゴン単体ならば問題ない。だが群れた途端に手に負えなくなる。なのに大抵が群れで行動している。ならば群れのボスを倒せば、チームワークも乱れるかもと考えたが、それは無理であった。なにせ連中の群れにはボスという存在がいないのだから。
見た目だけならば金色か赤いのが一番偉く見えるのだが、実際には違う。
恐るべきことに彼らの社会では優劣という概念が存在していない。ドラゴンは等しくドラゴンであり、仲間であり家族なのだ。そこに序列などという無粋なものはない。各々が各々に出来る事を懸命に頑張って、互いに支え合っている集団。ある意味、究極の平等社会を実現しているのが彼らなのであった。
それだけ知能が高いんだったら、フクロウ男の一匹ぐらい見逃してくれても良さそうなものなのに、やたらと縄張り意識は強いらしく、ちょっとでも彼らの領域に入ったならば途端に追いかけ回される。デカい図体のわりにみみっちい。
凄いのに狭量な生物、それがドラゴン。
これらを加味して私が下した結論は、勇気ある撤退である。
戦って勝てないとは思わない。だが連中全員を相手にしていたら、きっと日が暮れる。そもそも私の目的はドラゴン退治ではなくて、島からの脱出なのだ。だから無視することに決めた。
脱出も二回目となると多少は知恵もつく。
前回は後先を考えずに飛び出したが、さすがにアレは無謀であった。手ぶらで大海原に乗り出すなんて正気の沙汰ではない。
阿呆であったと深く反省した私はコツコツと準備を始める。
やはり水と食料は必須。でもあまり多くは運べない。
量を運ぶだけならば可能だが、動きが制限されたところを飛行タイプの巨大モンスターに襲われたらひとたまりもない。とにかく水がかさ張るので三日分が限度であろう。やりくりしてもギリギリで五日もつかといったところ。
子どもの神さまに魔改造をされたおかげで、水分は常人の半分以下でも活動を続けられる。
とはいえ進んだ先で何もなかったら、島に戻ることも考えないといけないから、片道二日半、無理をしても三日が限界……。
ああ、異世界ファンタジーの定番、アイテム収納とかいう能力がないことが恨めしい。標準装備しておいてくれたらいいものを。気の利かない神さまめ。
なお水筒はモンスターの胃袋で、背負い鞄は甲殻や皮を加工して作った。黒猫フォームの爪は細工仕事にも威力を発揮してくれたので大助かり。
食べ物は肉や果物を干したものを持って行く。足りない分は海に潜って現地調達でいいだろう。
すべての準備を整えた私は一晩ぐっすりと寝てから、朝陽とともに島を飛び出した。
チカラの出し惜しみはなし。序盤から全速力で飛ぶ。
低空飛行で飛び続けていると、何体かのモンスターらに目をつけられるも、すでにトップスピードにのっているこちらには追いつけない。
ドラゴンどもの縄張りに入ったところで、今度はマグロフォームに変身して海中を行く。
アレらが水の中を嫌っているのは実証済み。荷物を入れた鞄は二重構造にて防水処理もきちんと施してあるので安心。
じきにドラゴンどもの縄張りを抜けたところで陽が暮れる。
夜もマグロフォームにて海中を進む。これだと寝ながらでも真っ直ぐに泳ぎ続けられるので便利なのだ。
朝日とともに空中へと躍り出て、フクロウフォームで飛び距離を稼ぐ。
二日目になってもまだ何も見えない。でも巨大モンスターの姿がめっきり見られなくなったので、おそらくはモンスターアイランドの領域から脱したのであろう。
そしてついに三日目の朝を迎える。
じきに太陽が中空へと差しかかる時刻になった。
かなりの速度で飛び続けたのにも関わらず、視界に陸地らしきものは映らない。
そろそろ諦めて引き返すべきか……、そう悩んでいるところで海鳥の姿を目撃する。
確か海鳥って陸地の近くに生息していたはず、テレビの動物番組で視た記憶がある。
そんなうろ覚えの知識にすがり、もう一日だけとねばった結果。
私はついに念願の新天地を視界に捉えるのであった。
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