わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
161 / 298

161 炎の魔神と氷の魔神

しおりを挟む
 
 ダロブリンの王都へと向かう道すがら。
 目に入るのは荒れた土地と痩せこけ精気の失せた住人ばかり。集落なんてほとんどが廃村と見まがうようなあり様。どこまでも陰気で灰色な景色が続く。
 意気軒高だったのは、賊たちとその辺に転がる死肉をはふはふ漁るケモノばかり。
 呆れたことに、一度なんて貴族のボンボンが賊の真似事をしている場面にも遭遇。
 もちろんきっちりお仕置きをしておいた。反省はあの世でしろ。
 で、ようやく見えてきました王都。
 城壁は、まぁ、ご立派。
 ムダに高く、ムダにぶ厚く、ムダに堅牢そう。
 いろいろと後ろ暗い自覚があるヤツほど、自己保身には余念がないからねえ。塀を高くしてテッペンにトゲトゲとかつけたがるもの。
 さて、これからどうしようか。
 この分だと、きっと門番も腐っているだろうから、そんなところに人形を抱いた若いピチピチギャルがのこのこ出かけていったら、絶対に騒ぎになるだろうし。
 なんてことを考えながら、しばし遠目に眺めていたら、いきなりドンっと来た!
 爆発音に続いて黒煙がもくもく。城壁の向こう側にてメーラメラと火災発生。どんより風にのって、焦げたニオイがこちらの鼻先にまで届く。

「なんだろう? 火事かな」
「……にしては、ちょっとおかしいですね」

 わたしとルーシーが様子を伺っていると、ドドンがドンドン! なおも景気よく続く爆発音。天へとのびる煙の筋も一本が二本、二本が四本と倍々に増えていき、火勢も盛大に強まっているらしく、王都の空がほんのり紅く染まる。
 風にのってキナ臭いニオイだけでなく「わー、きゃぁ」と悲鳴のような声まで聞こえてきた。

「事件? それとも事故?」

 首をひねるわたしにルーシーさんは「……というよりも、ひょっとしてコレは内乱の類ではないかと」
 ケンカを売りにきた相手宅が、すでに火の海。
 なんてこったい! わざわざ出向いてきたというのに、こちらとしては振りあげた拳の落としどころに困っちゃう。

「あー、なまじ壁を丈夫に造ってあるものだから。あの調子だとすぐに内部はえらいことになりますよ。逃げ場のない熱気で、おそらく地獄の釜状態」

 青い目をしたお人形さんの推測通りに、瞬く間に拡大の一途を辿る火災。ここのところ雨もなかったのか周辺の土や空気がとっても乾燥しており、それが被害を加速させていく。
 ついには炎の竜巻みたいなのまで発生。
 まるで生き物みたいにウネウネと動き回っては、王都を蹂躙しちゃってるよ。

「火事って、やっぱおっかねー」

 ビビるわたし。
 一方で隣にいるルーシーは首をかしげている。

「あれは火災旋風……に見えますが、ちがいますね。動きが明らかにおかしいです。どうやらこの事態は何者かの魔法攻撃のよるものかと」

 状況を冷静に分析するルーシー。
 それにしたって、その何者かは相当にイカレていやがるね。ふつう、あんな人口密集地帯のど真ん中で凶悪な炎を放つか? あれじゃあ、何もかもが燃え尽きて灰になってしまうじゃないか。
 なってもったいないことを!
 木材がまとめて質の悪い炭になってしまう。布や革製品もぜんぶパァ。高価な食器とかも割れちゃうだろうし。ドロドロに溶けた貴金属とか、回収がとってもたいへんなんだぞ。土ごと掘り出して、いちいち精製しなくちゃならないんだから。
 あと、同じ炎でもラグマタイトのジャニス女王のとは全然ちがうや。
 ジャニス女王の炎には、見る者を魅了する力強さと気高さがあった。ぶっちゃけ何時間でもぼーっと眺めていても飽きないぐらいにキレイ。
 でもこちらのソレには禍々しさしか感じない。まるで憎悪の感情を塗り固めたかのような毒々しい赤。なんて醜い火なんだろう。
 とかおもっていたら、さらに炎の巨人っぽいのがのそりと立ち上がり、天に向かって「ガオーッ」と雄叫びをあげた。
 これにはわたしとルーシーもお口をあんぐり。

「今度は炎の魔神かよっ! それにしてもでけえな!」とわたし。
「あの規格外なむちゃくちゃ具合からして、どうやら勇者のギフトっぽいですね」とはルーシーさん。

 どっかの誰かさんってば、もうやりたい放題。
 こりゃあ完全に終わったな王都。南無南無。
 心中にてひそかに手を合わせていたら、さらにさらに事態が悪化。
 今度はなんと! 炎の魔神に対抗するかのようにして氷の魔神が出現。
 周囲の迷惑もかえりみずに、殴り合いの取っ組みあいをはじめちゃったよ。
 炎が瞬時に凍る。氷の塊が一瞬で炎に焼かれて蒸発。
 熱い、寒い、熱い、寒いと、とにかく騒がしい。

「ねえ、ルーシー。うろ覚えで申し訳ないんだけど。たしか、高温なモノと水気なんかをいっしょくたんにするのは、あんまりよくないって話を聞いたことがあったような……」

 熱々のフライパンに水滴を垂らしたら、パチパチはじけ飛んじゃうでしょう?
 ろくすっぽ料理とかしたことないくせに、家庭科の調理実習の授業で、料理人を気取ってフライパンの熱せられ具合をたしかめようとして、腕とか顔に跳ねて「アッチー!」とかなっちゃうやつ。

「そうですね。特に閉鎖空間で混ぜるのは、あまりオススメしません」

 水が熱せられて水蒸気になると体積が約千七百倍にも膨れあがる。大量の水が超高温の熱と接すると、体積が爆発的に増える。
 ようはパチパチがドッカンになるとルーシーさん。

「……とりあえず、もう少し離れとこうか」
「賢明なご判断かと」

 主従にて意見がまとまったところで、すみやかにシュタタタと退避。
 こりゃあ、もうダメだ。
 さらばダロブリンの王都。キミのことはとっとと忘れて、わたしはヌクヌク生きていくよ。

「滅びゆく都に敬礼」

 わたしとルーシーがけっこう離れたところから、ビシッとお別れの挨拶をしていたら、ついに臨界点を迎えた王都がドカンと逝った。
 すかさず念のためにと掘っておいた塹壕内へ、ぴょんと飛び込む主従。
 一瞬の後にわたしたちの頭上を激しい暴風が「ゴー」と駆け抜けていった。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...