【R18】夫には想い人がいるので

mokumoku

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「……バルカン様、フロティナはもう休みたいです」頬を染めたフロティナはバルカンに寄りかかるように言った。
彼の手のひらの熱にフロティナは蕩けてしまいそうだった。
「や……宿に移動するか」
バルカンの喉がゆっくりと上下するのをフロティナは見つめた。
それすらも……なんだか愛おしいような心地になる。
(…………飲みすぎだわ……馬鹿みたい)
感情が制御できないような気分にフロティナは自身が情けなくて心の中で悪態をつく。
今まで見ないようにしていた自分の嫌な部分を隠すことが出来ないことに戸惑う。
一人でも平気だと思っているのに――――――――
フロティナは自分の中にメソメソと泣く小さな自分を見た。
今まで見ないように通り過ぎていた弱弱しい自分。

彼女はいつだって無くしたものを嘆きながら悲しい、寂しいとメソメソ泣いている。
そんな様子が大っ嫌いだったフロティナは見えないフリをする。
泣いて何になるというのだ。
誰かに縋って何になるというのだ。
結局自分は一人なのだ。
どんなに信じて寄り添ったとしても、他人の心は操ることなどできない。

フロティナは大人になってから、いつも男性が自分の事を――妙な目で見ているのに気づいていた。
(淫乱……)だからショックを受けつつも……内心バルカンの幼馴染が言った言葉に納得していもした。
――――――だから彼らはあんな視線を自分に向けていたのだ、と――――

バルカンも、今自分にその目を向けているような気がして……なぜだかフロティナは彼の顔を見ることが出来なかった。男性たちのあの視線は、自分に対しての性欲だったのだ。

妙に甘い声を出すバルカンもきっと自分にその視線を送っていることだろう。
だって自分は「淫乱フロティナ」なのだから
フロティナはバルカンの幼馴染を思い出して笑う。
純情そうな……男性が結婚相手として好んで選びそうな、大人しい感じの女性だった。
フロティナは自分と正反対の彼女を思い出し、なんとなく…………ざまあみろと思う。
自分もこれから大切な何かを無くすけれど……彼女からも見えない何かを奪ってやるのだと勝ち誇った気分になった。
小さなフロティナは寂しい寂しいと泣いている。
小さなフロティナは人の大切なものをとってはいけないよと泣いている。

「じゃあ奪われてばかりで……そうやってメソメソしているのがいいの?」
フロティナはポツリと彼女にそう言った。フロティナだって……婚約の話が来た時はそれはもう嬉しかったのだ。
もう一人じゃないのだ、と嬉しかった。
でもそれは自分が思っているだけで――変わらず独りぼっちだったのだけれど。


フロティナはドロドロした自分の感情に飲み込まれながらバルカンの腕に絡みつき「バルカン様……」と甘い声を出した。

バルカンがそれに応えるようにそっとフロティナに身を寄せる。
フロティナは想い人が居ようと、人は欲に弱いものだとおかしくなって笑った。
小さいフロティナがフロティナの裾を引っ張る。
いけないよと――もしかしたら貴方を心から愛してくれる人が現れて、あなたは今の行いを後悔する時がくるかもしれないよ。と――
フロティナは自嘲気味に笑う。
そんなはずはないのだ。

「私の事を知って――私の身体以外が目的の男の人なんて来るわけがなかったのよ」――――――あれ?なぜそんな風に思うのかしら?…………まあ、いいわ。

バルカンは全て知って自分を望んでくれたと思っていたけれどそうではなかった。
彼は自分の事を知らないどころか、本来ならば愛する人が別にいるのだから――――

「バカみたい」

フロティナは我を忘れて感情に振り回される自分も、あの時喜んだ自分も、バルカンも、バルカンの想い人の幼馴染も……みんなみんな「バカみたい」だと思った。
宿に着くと、バルカンがフロティナの服を脱がせていく。
彼もかなり酔っているのか手つきがぎこちない。
フロティナはそれを助けながらスルスルと服を脱いだ。

宿は照明が少なくて、もしかするとここは元々逢引などをするための宿なのかもしれないとフロティナは思う。「風呂に入るか」暗闇に溶けてシルエットだけになったバルカンが言う。痣がその暗闇の中でもやけにハッキリと見える。
フロティナは見た目なんて夜は関係なくなるのだ、となんとなく思う。
だから男性は色々な女性と交わりたがるのかもしれないと。大事なのは感触なのだ。

「……一緒に入りますか?」
フロティナはバルカンの添えられた手に指を絡めながら甘い声を出した。
ゴク……と喉が鳴る音がする。
「その方がいいか……」落ち着いたような声をバルカンは出したけれど、手のひらがじっとりと湿っている。フロティナがその手の甲に頬をつけるとバルカンはもう片方の手に自分の手を添える。
暗闇の中、バスルームのドアをバルカンが開けた。
二人寄り添ってドアをくぐると、バスタブにはすでに湯が張っていたようでホカホカと室内も温かい。「……滑るぞ」バルカンはフロティナの身体に掛け湯をすると、彼女の身体を支えるように湯船に浸からせる。後ろから抱きすくめるようにフロティナを膝に乗せたバルカンの股間はすでに硬くなっている。
フロティナは(想い人ね……)となんだかおかしくなって彼を振り返った。
暗闇の中シルエットが溶け込んだ彼は本当にバルカンなのだろうか。

顔を合わせた二人は当然のように唇を合わせると、お互いの口を舌で割る。
ぬる……と粘膜が擦り合わされてフロティナは腰がくだけてしまいそうな快感に襲われた。バルカンもそれは同じだったようで彼女の腰に当たる陰茎がビクンと跳ねた。
湯気の中……フロティナは火照る身体と湯船の熱さに汗をポツリと垂らす。(熱い……)
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