24 / 50
24
しおりを挟む
「先輩聞きました?今日の緊急放送」
ある日――――フロティナが汚れた仕事着を脱ぎながら休憩室に入ると、顔を合わせた瞬間マリエルが興奮した様子で言ってきた。
「見てないわ。今まで掃除をしていたから……どうしたの?事件?」フロティナはドロドロに汚れた顔を拭きながら給水ボトルからコップに水を注ぐ。
非常に疲れた……長期休みはワクワクするけれど、終わってから溜まっていた仕事を処理するのが大変だ。もう何日も自宅に帰っていない。レッドゾーンのモンスターのお世話はフロティナにしかできないので尚更だ。
(年をとったらどうなるんだろう……)
フロティナは今よりも確実に体力がなくなるであろう未来に思いを馳せて……若干うんざりした気分になった。
「先輩ったら!玉の輿のチャンスですよう!」
「え!?玉の輿?見せてください見せてください!」
マリエルは異常にその話題に食いついてきたフロティナに画像を見せた。
(玉の輿のチャンス……仕事を辞められるかも!)
彼女の記録装置に映し出された画像は、空中に像を形成していく。
「ああ、古いから読み込みが遅い……すみません」
「全然問題ないですよ?……あら?」
そこに映し出された人物は……バルカンだった。
バルカンはゆったりと立派な椅子に座り、少し顎を上に向ける様にこちらを見つめている。
しかし今までフロティナが接していた彼より大きく……腕に鱗が生えていた。胸がギューッと掴まれたような心地になり、フロティナは動揺する。
(バルカン様……)
「第432王のバルカン・ドラゴンイエーガーだ」
フロティナはジジ……と時折歪むバルカンを目を丸くして見つめた。
(王……?それにドラゴンイエーガーと名乗っていなかった?)
ドラゴンイエーガーはモンスターを統治する竜族の王のみが名乗ることが出来る苗字だ。
今まで……人間界にまで名前が聞こえてきたことはあまりなかったけれど……
「今年、竜族の王が結婚相手を募集するらしいのです」
マリエルは目をキラキラさせてフロティナを見た。
「歴代、今まで様々な種族と婚姻を続けてきた我が竜族だが、人間との友好の証として……今回は人間との婚姻が決まった」
竜族は非常に血が強いため、他の種族と血が混ざっても彼らの血が薄まることはない。なので歴史上彼らは様々な種族と友好の証として婚姻をしてきた。
そうして世界のバランスを保っていたのだといわれている。
(かなり前――人間と婚姻した記録もあったような気がするけど、このタイミングは……バルカン様は国で想い人に会えなかったんだわ)
フロティナはそう思った。
彼は探しているのだ。
人間の想い人を――――――
「先輩、条件としては20~30歳の人間の女性だそうですよ。それともう一つ条件が」
マリエルはそんなことは知らないので、希望に満ちた様子でまた記録装置に注目するようにそれを指差した。
「この靴に……ピッタリと足がハマる女性、それが二つ目の条件だ。この靴は我が運命の女性の足にピッタリとはまるはずだ」
バルカンは顔の前にその靴を掲げると二ヤリと笑う。
クリスタルでできた……美しい靴だ。
「結婚相手には望むもの全てを与えよう。そう……例えば家族が永久に安全に住める居住地や富……それに仕事の心配だっていらない。全て解決してみせよう」バルカンは腕を組むとそう言った。
「本人と家族さえよければ婚姻歴の有無は問わない。そう、例えばいま新婚だったとしてもよい」
バルカンはそう淡々と言って「俺の下に嫁ぎ、人間界と竜族の架け橋となってくれる女性ならば」そう言うと再びニヤリと笑い、背もたれに寄りかかる。と、ブツリと映像が途切れた。
「この条件はなんか軟派ですよね。王の好み次第ということでしょうかね、あーあ……やっぱりルッキズムなんて言っても綺麗ごとですよね~私もイケメンと結婚したいもんなあ。結婚してる人ってもうすでに選ばれてるから……美人が多いですもんね」
マリエルは少し眉を寄せながら言ったが、フロティナにだけはこの条件の意味が分かっていた。
(想い人が既婚者だった場合を考慮しているんだわ……)
「北側から順に訪問が始まるみたいですよ~!ああ、どうしよう!家に来るまでに運命の人が見つかっちゃたら~!」そう言って身をクネクネと揺らすマリエルを見て……フロティナは思っていた。
(残念ながら……これは出来レースなのよ……)と――――
「どうせ選ばれないわ、私なんて」フロティナは気まずそうに笑うとそう言って、コップを使用済みのトレイに置いた。
「え?そんなあ!先輩ワンチャンありますって!先輩はとても魅力的です!」マリエルはひな鳥のようにちょこちょことフロティナの後ろを付いて回る。
(マリエルさん!絶対ないの……私もあなたも絶対に選ばれないのよ~!)フロティナは喉まで出かかった言葉を無理やり飲み込む。
「魅力的?嬉しいわ。でも玉の輿だなんて夢があるわね」
「あー、夢が広がりますよねえ」
純粋に目をキラキラと輝かせている……そんな彼女にそんなことをいう事ができなかったのだ。
ある日――――フロティナが汚れた仕事着を脱ぎながら休憩室に入ると、顔を合わせた瞬間マリエルが興奮した様子で言ってきた。
「見てないわ。今まで掃除をしていたから……どうしたの?事件?」フロティナはドロドロに汚れた顔を拭きながら給水ボトルからコップに水を注ぐ。
非常に疲れた……長期休みはワクワクするけれど、終わってから溜まっていた仕事を処理するのが大変だ。もう何日も自宅に帰っていない。レッドゾーンのモンスターのお世話はフロティナにしかできないので尚更だ。
(年をとったらどうなるんだろう……)
フロティナは今よりも確実に体力がなくなるであろう未来に思いを馳せて……若干うんざりした気分になった。
「先輩ったら!玉の輿のチャンスですよう!」
「え!?玉の輿?見せてください見せてください!」
マリエルは異常にその話題に食いついてきたフロティナに画像を見せた。
(玉の輿のチャンス……仕事を辞められるかも!)
彼女の記録装置に映し出された画像は、空中に像を形成していく。
「ああ、古いから読み込みが遅い……すみません」
「全然問題ないですよ?……あら?」
そこに映し出された人物は……バルカンだった。
バルカンはゆったりと立派な椅子に座り、少し顎を上に向ける様にこちらを見つめている。
しかし今までフロティナが接していた彼より大きく……腕に鱗が生えていた。胸がギューッと掴まれたような心地になり、フロティナは動揺する。
(バルカン様……)
「第432王のバルカン・ドラゴンイエーガーだ」
フロティナはジジ……と時折歪むバルカンを目を丸くして見つめた。
(王……?それにドラゴンイエーガーと名乗っていなかった?)
ドラゴンイエーガーはモンスターを統治する竜族の王のみが名乗ることが出来る苗字だ。
今まで……人間界にまで名前が聞こえてきたことはあまりなかったけれど……
「今年、竜族の王が結婚相手を募集するらしいのです」
マリエルは目をキラキラさせてフロティナを見た。
「歴代、今まで様々な種族と婚姻を続けてきた我が竜族だが、人間との友好の証として……今回は人間との婚姻が決まった」
竜族は非常に血が強いため、他の種族と血が混ざっても彼らの血が薄まることはない。なので歴史上彼らは様々な種族と友好の証として婚姻をしてきた。
そうして世界のバランスを保っていたのだといわれている。
(かなり前――人間と婚姻した記録もあったような気がするけど、このタイミングは……バルカン様は国で想い人に会えなかったんだわ)
フロティナはそう思った。
彼は探しているのだ。
人間の想い人を――――――
「先輩、条件としては20~30歳の人間の女性だそうですよ。それともう一つ条件が」
マリエルはそんなことは知らないので、希望に満ちた様子でまた記録装置に注目するようにそれを指差した。
「この靴に……ピッタリと足がハマる女性、それが二つ目の条件だ。この靴は我が運命の女性の足にピッタリとはまるはずだ」
バルカンは顔の前にその靴を掲げると二ヤリと笑う。
クリスタルでできた……美しい靴だ。
「結婚相手には望むもの全てを与えよう。そう……例えば家族が永久に安全に住める居住地や富……それに仕事の心配だっていらない。全て解決してみせよう」バルカンは腕を組むとそう言った。
「本人と家族さえよければ婚姻歴の有無は問わない。そう、例えばいま新婚だったとしてもよい」
バルカンはそう淡々と言って「俺の下に嫁ぎ、人間界と竜族の架け橋となってくれる女性ならば」そう言うと再びニヤリと笑い、背もたれに寄りかかる。と、ブツリと映像が途切れた。
「この条件はなんか軟派ですよね。王の好み次第ということでしょうかね、あーあ……やっぱりルッキズムなんて言っても綺麗ごとですよね~私もイケメンと結婚したいもんなあ。結婚してる人ってもうすでに選ばれてるから……美人が多いですもんね」
マリエルは少し眉を寄せながら言ったが、フロティナにだけはこの条件の意味が分かっていた。
(想い人が既婚者だった場合を考慮しているんだわ……)
「北側から順に訪問が始まるみたいですよ~!ああ、どうしよう!家に来るまでに運命の人が見つかっちゃたら~!」そう言って身をクネクネと揺らすマリエルを見て……フロティナは思っていた。
(残念ながら……これは出来レースなのよ……)と――――
「どうせ選ばれないわ、私なんて」フロティナは気まずそうに笑うとそう言って、コップを使用済みのトレイに置いた。
「え?そんなあ!先輩ワンチャンありますって!先輩はとても魅力的です!」マリエルはひな鳥のようにちょこちょことフロティナの後ろを付いて回る。
(マリエルさん!絶対ないの……私もあなたも絶対に選ばれないのよ~!)フロティナは喉まで出かかった言葉を無理やり飲み込む。
「魅力的?嬉しいわ。でも玉の輿だなんて夢があるわね」
「あー、夢が広がりますよねえ」
純粋に目をキラキラと輝かせている……そんな彼女にそんなことをいう事ができなかったのだ。
343
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
冷酷な王の過剰な純愛
魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、
離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。
マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。
そこへ王都から使者がやってくる。
使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。
王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。
マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。
・エブリスタでも掲載中です
・18禁シーンについては「※」をつけます
・作家になろう、エブリスタで連載しております
虐げられた出戻り姫は、こじらせ騎士の執愛に甘く捕らわれる
無憂
恋愛
旧題:水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士
和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。
婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め
かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」
いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。
彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。
「私を、抱いてください」
だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。
婚約破棄から始まるハピエンの短編です。
この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
令嬢が眠る時
五蕾 明日花
恋愛
愛する婚約者と仲睦まじい元平民の男爵令嬢に嫉妬し、嫌がらせを続けた挙句に処刑された我儘で傲慢な公爵令嬢コーネリア。悪魔の力を借りて人生を繰り返していくうちに性格や言動を改め、〝完璧な令嬢〟と評されるようになっていく。しかしそうなっても婚約者は、男爵令嬢を選んでしまう運命は変えられない。濡れ衣を着せられ、結局はありもしない罪で処刑されてしまう。心が折れてしまいせめて処刑されてしまう運命だけでも変えたいコーネリアに、悪魔は〝仮死状態になり、死んだと誤解させた後でこっそり逃げ出してしまえばいい〟と提案する。
仮死状態(意識のみ有り)での性描写有り、嘔吐描写も一瞬
完結済。6話+エピローグ。♡マーク付きの話に性描写有り。
Nolaノベルにも同名義で投稿。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる