【R18】夫には想い人がいるので

mokumoku

文字の大きさ
27 / 50

27

しおりを挟む
フロティナは檻の前で呼び止められた時の事を思い出していた。

――――――――――

「フロティナってば」
フロティナは恐る恐る声のする方へ進む。
なぜならここには……会話でコミュニケーションをとれるモンスターなどいないはずなのだが……

「こっち、こっち」
「え……?」

声の主は……小さな鳥かごに住むフェアリーだった。
彼女は彼女の身体のサイズに合わせて作られた小さなソファに脚を組み座ると、うんざりした様子で「なかなか気づかないんだもの」と目を丸くするフロティナを軽く見上げている。

「あなた……話せたの?」
「そう、バレてないだけ」

基本的に通常フェアリーは非常に知能が高く、人間と器官の形状が似ているので言語さえ学べば会話でのコミュニケーションが可能だ。
しかし――――――

「あなたは会話が出来ないと聞いているわ。声が出ないと」フロティナは胸ポケットから情報保管機を取り出すと彼女の情報を検索した……やはり会話の項目に「不可」と表記がある。
「大変だったわ。捕獲された時――声を出さないように失声の効果がある実を飲み込んでいたんだもの」フェアリーはうえっと顔を顰めて言った。

「失声の効果のある実?」
「まあ、効果はそれだけじゃないけど……人間は知らないし知らせない。あなたたち根こそぎ取っていくもの。それに悪いことに使うかも。私たちの神はそんなことを望んでいないわ」

フェアリーの言葉にフロティナはやんわり反論しようとしたけれど……その言葉は「自分なら根こそぎはとらない」程度の言葉であって…………人によっては全て自分の物にする人間もいるだろうな、と口を噤んだ。

「…………見て?綺麗でしょ?」
フェアリーはフロティナをじっと見つめながら自身の羽をパタパタと動かした。
美しく煌めく星屑のような鱗粉が、羽を動かすたびにキラキラと舞う。
「ええ、とっても。…………でもそのせいであなたちは絶滅の危機だわ」
フロティナは眉を下げて言った。
彼女たちの美しい羽根は高価な宝石と同じくらい価値があるのだ。それに……フェアリーの伝説がその鱗粉にすら値段をつける。

はじめは言葉を交わし合える人間とフェアリーは仲良くやっていたと思う。
しかし人間が、そんな彼らを欲の為に捕まえ羽根を奪うようになった。
羽根を失ったフェアリーは死んでしまう。捕まった人間たちは口々に言った。「死ぬなんて思わなかった」と

「フロティナ、あなたのこと逃がさないってあの男が言ってた。この前」
フェアリーは柵を掴み、顔を寄せて言った。
「あの男?」
フロティナの脳裏にバルカンの姿がよぎるが……彼をフェアリーが知っているわけがない、と首を振る。フェアリーはオーナーにそっくりな特徴をフロティナに告げ「あなたがここの施設には必須だから……逃げられないように手籠めにするって」心底嫌そうに顔を歪めて言う。

「…………」
「確かにあなたが居なければこの施設は回らない。レッドゾーンのモンスターを従えることができる人間なんて……あなた以外にいないもの」フェアリーはそう言って籠のなかをゆっくり歩いた。
人間にとっては小さな空間だが……フェアリーの彼女にとってはかなり広い空間だ。それほどまでに彼女は小さい。

「……なぜその情報を私に?こんな……危険を冒して」
フロティナは自分が話せる事を告白してまで、フロティナに危険を知らせてくれたのは何か理由があるはずだと考える。
「……あなたが優しいからよ」
「ふふ、嬉しい。他には?」ツンとすました様子でそう答えるフェアリーにフロティナはニッコリ笑って先を促した。

「……私がなぜここにいるか知ってる?」
「……ケガをしたからよね?足の骨が折れていて……」フロティナはフェアリーがここに連れてこられた当時を思い出してっそう言った。彼女の骨折は酷く、骨が見えていて……あちこちに切り傷があったのだ。

「ここまで良くなってよかった」
「これも全部あの男たちがやったのよ」フェアリーはフロティナをじっと見つめて言った。
「え?」
「あいつら……うちらの仲間を乱獲して、羽根を奪ってる。私はたまたまポケットに失声の実が入っていたから…………痛めつけても悲鳴を上げない私を見て話せないと誤解して、都合がいいから研究のために生かされたのよ」フェアリーは悔しそうに顔を歪めて言った。





フロティナはあの時のことを思い出し、オーナーに甘い言葉を囁かれ背筋にゾクゾクと寒気が走る。

「……妻のことは愛していない。政略結婚なんだ。君にはなんでも好きな物を買ってやれるし家も建ててやる」
「オーナー……」フロティナはゆっくり顔を上げるとオーナーの目をじっと見つめた。

なんて美しい瞳なんだろう。

――――絶対にあの男の物になってはダメよフロティナ――――――

フェアリーの言葉を思い出す。

――――大型獣にあの男が何をしたか……私全部見ていたわ!あの男は悪魔なの!甘いマスクに騙されないで――――

オーナーは人好きのする顔をふ……と綻ばせながら「本当に愛した女と……最期は共に過ごしたいんだ」と言ったのでフロティナは「わかりました、それでは今後どうぞよろしくお願いいたします」あっさりと頭を下げた。


(おい!?フロティナ!騙されるなって言ってんだろ!)
心の中のフェアリーが悲鳴のような声を上げている。

果たしてフロティナは――――――金に目が眩んでしまったのだろうか……
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

虐げられた出戻り姫は、こじらせ騎士の執愛に甘く捕らわれる

無憂
恋愛
旧題:水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士 和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。

婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め

かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」 いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。 彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。 「私を、抱いてください」 だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。 婚約破棄から始まるハピエンの短編です。 この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

令嬢が眠る時

五蕾 明日花
恋愛
愛する婚約者と仲睦まじい元平民の男爵令嬢に嫉妬し、嫌がらせを続けた挙句に処刑された我儘で傲慢な公爵令嬢コーネリア。悪魔の力を借りて人生を繰り返していくうちに性格や言動を改め、〝完璧な令嬢〟と評されるようになっていく。しかしそうなっても婚約者は、男爵令嬢を選んでしまう運命は変えられない。濡れ衣を着せられ、結局はありもしない罪で処刑されてしまう。心が折れてしまいせめて処刑されてしまう運命だけでも変えたいコーネリアに、悪魔は〝仮死状態になり、死んだと誤解させた後でこっそり逃げ出してしまえばいい〟と提案する。 仮死状態(意識のみ有り)での性描写有り、嘔吐描写も一瞬 完結済。6話+エピローグ。♡マーク付きの話に性描写有り。 Nolaノベルにも同名義で投稿。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

処理中です...