【R18】夫には想い人がいるので

mokumoku

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「ハアハア……バ、バルカン様って私より随分と年上なのね」階段を全力で駆け上がったフロティナは息を切らしJM6の棚の前に倒れ込みながら本を捲る。
バルカンの出生から現在までの年表を確認してフロティナは新たな事実を手に入れていた。

バルカンはどうやら現在128歳のようだ。

「竜族は子どもの頃成長が遅いからな、100歳くらいまでは赤子のままなんだ」
フェアリーは本の上にうつぶせて頬杖をつきながら言った。
「そうなのね……随分と変わった生体をしているのね」
「そうだな、竜族の国は老化がゆるやかになるし……それで昔人間が研究目的で忍び込んでたな」
フェアリーの言葉を聞いてフロティナは少しうんざりした気分になった。

人間は自分の益のためならなりふり構わない行動をとる時がある。
それがフロティナには恥ずかしかった。

他のモンスターや種族はそれぞれ与えられたもので暮らしているのに、人間の欲は際限なく時には奪う。自分がなんだかそこに分類されているのがフロティナはとても嫌だった。

「私もモンスターに生まれたかったな」
「馬鹿言え、大変だぞ?」
フェアリーはフロティナの頭をそう言って撫でた。

「…………あら?」
フロティナはふと気づいてしまった。
バルカンの歴史書に……破られた跡がある。

(誰かが何かを隠そうとしてる――――それは?)
年表を照らし合わせると、バルカンが生まれてから今まで二度災害が人間界を襲っている。
ちょうどそれ以降の歴史が破られているのだ。


「ねえフェアリー」
「どうした?もう帰るか?」
「フェアリーの伝説、あれって本当?」

フェアリーを人間が探し求めるのは、羽根のためだけではない。
フェアリーの鱗粉には願い事を叶える力があるのだ。鱗粉を指に付け、眉間の間に線を引くように塗る。その時に願い事を唱えればその願いは必ず叶う。

「……だから人間が鱗粉を集めていたのか」

フェアリーは少し呆れたように鼻で笑うと、以前捕まった時に小瓶に鱗粉を集めていたことをフロティナに話す。
「あれじゃあ叶わない」
フェアリーは馬鹿にしたように言う。

「フェアリーの願いという商品名でよく売られていたわ。インチキだって評判だったけど」
「本物でもあれでは効果はないさ、フロティナ君は人間か?」
フェアリーはフロティナの目を覗き込む。
「残念だけど私は人間」
フロティナは眉を少し下げて言った。

フェアリーはゆっくり首を振りながら「違う、フロティナ君はどちらの味方をする?人間?それとも私たち?」と尋ねる。

フロティナは「正しい方の味方をします」と真っすぐ彼女の瞳を見て答えた。
フェアリーはその答えを聞いて満足そうに笑うと手のひらで自分の羽根を撫で、たっぷりの鱗粉をてにとるとフロティナの眉間に塗り込んだ。

するとあたりが彼女の鱗粉のようにキラキラ輝き出す。
「さあ、願いを言いなフロティナ!輝きの消えないうちに!」

「バルカン様の想い人の元まで連れて行ってくださいまし」
フロティナがそう言うと、キラキラと舞っていた鱗粉は床にキラキラと輝く道筋を作っていく――――――

「フロティナ、行こう」
フロティナはフェアリーに向けてコクリと頷くと、キラキラと輝く道へと一歩踏み出した。





「国に続いてる……やっぱり竜国にいるんだわ」
フロティナは大型獣の背中に乗って山を駆け抜けた。
キラキラと輝く道筋はフロティナが通る端から、まるでなにも無かったかのように消えていく。まさにフロティナだけの道標だ。

山道を抜けて、国への入り口でフロティナは大型獣から降りた。
流石に市街地で獣に乗って移動するわけにはいかない。
手綱を引き、ゆっくりと歩みを進めた。
キラキラとした輝きは――――街の診療所へと続いている。

「すみません」
「あ、すみません……今日もう診療は……」
女性の声がして扉が開くと――――そこには動画の中でバルカンに抱き着いていた女性が立っていた。

「キャー!お、お、お……王妃様!すみませんすみません!」
「え?静かに!静かにしてくださいまし!」
女性はフロティナを見るなり顔を真っ青にして、土下座を始めたではないか!
フロティナは慌ててそれを止めようと――したけどやめた。
「…………ご自身のしたことを理解してらっしゃいます?」
「は、はい!大変申し訳ございませんでした……私あれから生きている心地がしなくて……!」
女性は涙声でそう言った。

「ママ?」
その時、奥から子どもの声がしたのでフロティナは倒れてしまいそうになる。

「バルカン様!こ、子どもまで!」
「すみません王妃様!どうか子どもは!」

フロティナは足元に縋りつく女性をどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
女性をただただ茫然とフロティナは見下ろした。
このまま、彼女は一人子どもを育てていくんだろうか……それならばいっそ、自分が身を引いた方がいいのではないだろうか、と――――――

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