【R18】夫には想い人がいるので

mokumoku

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「…………あら?」
その時、まだ床にキラキラと道が続いていることにフロティナは気付いた。
「立ってくださいまし」フロティナは泣きながら自分に縋りつく女性をなだめると、キラキラを辿る。それは部屋の奥……扉の向こうに続いていた。

「こちらの扉開けても?」
「仰せのままに……」

女性はヒザを付いてそう言った。
フロティナがそのドアノブに手を掛ける。ゆっくりと扉を開けると、そこは掃除用具入れで正面には大きな鏡があった。

「え?」

フロティナは意味が分からず目を丸くすると、鏡の中の自分も目を丸くしている。


「おい!連絡をする約束はどうなっているのだ!!!初日から約束を破るな!図書館で本を読んだとて、何も得られなかったであろう!な?もういいのだ!今を生きろティナ!」

背後でした声にフロティナは思わず振り返ってしまった。

そこにはゼーゼーと息を荒げるバルカンが立っていて、フロティナはそんな彼を見て涙をポロポロと零す。
「おい!どうした。すまん怒ってない俺は」
バルカンは慌てて彼女に駆け寄ると手を握る。
「…………バルカン様」
「どうした?気にするな大丈夫だ。言い過ぎたすまん。連絡ができないときもあるよな?」
バルカンは眉を下げながら彼女の目元を拭うが、フロティナの口は止まらなかった。

「バルカン様……私に何か隠していることがありますね?」
「…………!」

フロティナがそう言うと、バルカンは顔を真っ青にしている。
「本当のことを教えてくださいまし……そうでないと私は自分の責務を全うすることは出来ないかもしれません。あなたの想い人は一体誰なんですか?この女性とはどんな関係なのでしょうか。場合によっては私からも伝えなければいけないことがございます」

フロティナは真っすぐバルカンを見て言う。そんな彼女の目からは、次々と涙が溢れ出た。

それを聞いた女性はなにか察したように下を見て震えている。
バルカンは観念したようにガックリと項垂れると「…………わかった」と静かに呟き口を開いた。




――――――――――――――――――





バルカンが卵から出て十数年後、人間界から生贄がやって来た。「おい、バルカンこの生贄お前が卵から出てきてからの年数と近いぞ」祖母が生贄の資料を見て言った。
いつもなら人間界の生贄にうんざりした様子なのに。資料を覗き込むと、そこには可愛らしい容姿の人間の写真が写っていた。それで…………思わず会いに行ってしまったのだ。
いつもなら、手続きを経て生贄を自由にする。
人間界に戻りたいなら人間界へ、ここに残りたいならここに残る手続きをする。
生贄は大体ここに残ることを選択するのだけれど。

人間の女の子はどんな感じなのだろう、と。
始めはただの好奇心だった。

「…………誰?」

バルカンにかけた彼女の第一声は……非常に無礼であった。言葉だけではない……彼女は不愉快そうに顔を歪めている。
「だ、誰?だと?おい!なんて無礼な女だ!」
「……あんたが私の結婚相手の竜?最悪、年下じゃん子どもじゃん」彼女はケ……ッとそっぽを向くと沈黙している。
「な、なんだと!?絶対に絶対にお前より年上だ!」
「嘘つき、チビじゃん。私結婚相手は180cm以上の高収入の年上イケメンがいいの!」バルカンが顔を真っ赤にすると冷めた視線を生贄はよこす。
「で…………でかくなる!これからだ!」

バルカンはプンプン怒りながら廊下を進んだ。


(なんだあの女は!少しかわいいからと調子に乗りよって!)


「お祖母様!」
「うわ!なんだなんだ!」

祖母はバルカンの突然の入室に驚き、心臓を抑えている。バルカンはそんな祖母の前に跪くと「あの生贄に……王妃教育を施していただきたく存じます」と言った。
祖母はポカンとバルカンを見つめると、彼の顔は見る見る赤くなっていく。

「なんだ、番を見つけたのかバルカン」
「…………そんなわけでは、ただ生贄は竜の花嫁と呼ばれるそうではありませんか」
バルカンはバツが悪そうに唇を尖らせてそう言った。
竜族には番という概念が存在していて、一生見つからない場合もあるし特に番でなくとも配偶者として問題はない。が、番と一生を共にすることは彼らのこの上ない幸せでもあるのだ。

竜は一途だ。
だから初めて濃密に接触した異性と結ばれなければならない。
その相手は対外番になるはずだった。

本来番は本能でわかる。
心が惹かれ合う。
それは唯一無二の存在だ。

バルカンはそれを認めたくなくて、そっぽを向いた。
祖母のからかい口調もなんだか気に入らない。
祖母はクククククと喉を鳴らし「そうだな、わかった。あの生贄に王妃教育を施そう。人間が竜の花嫁にと寄こしたんだ問題なかろう」といった。




「…………なに?」
「無礼な……」

バルカンが再び生贄に会いに行くと、彼女は非常に不機嫌そうに彼を迎える。バルカンはそれが非常に面白くなかった。

「……喋り方を教育されなかったのか」
「された。でもなんで変えなきゃいけないのよ……これが私なの!」
彼女は腕を組んで胡坐をベッドの上でかき、非常に不服そうな様子を見せた。

「仕方があるまい。お前は俺の花嫁だ」
「お前じゃない、名前がある」
バルカンが彼女の隣に腰を下ろすと、不機嫌そうににらみつけてくる。
「ははは、名を名乗れ」
「…………ヴェルティナ、私の名前はヴェルティナ・リベルテよ」
ヴェルティナは真っすぐな視線をバルカンに向けた。

バルカンはその瞳に吸い込まれてしまいそうな心地になる。
「ヴェルティナ……お前は俺の花嫁だ。もう決まっている」
「……初めからそのつもりで来たし、たくさん食べて大きくなってよ?まあ、顔立ちは悪くないわね。大人になったら私のタイプかも」


バルカンはこうして――――自身の番、ヴェルティナに出会った。「……生意気な女だ」バルカンはそう言うと彼女の頬にキスをした。ヴェルディナもそれを拒みはしなかった。

彼が112歳の頃だった。


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